何を隠そう、2年と10ヶ月程前にお酒を止めてから、大の甘党になってしまった。
今日もあるところに娘を迎えに行った帰り、コンビニに缶コーヒーと牛乳を買いに寄ると、隣接するケーキ屋さんに口が、いや眼が動いた。

迂回して車を回し、店の駐車場に下りると、顔見知りのイセトウの社長さんが桜の木の下の土に、何やら設置されていた。
実は、この社長さん、私より少し先輩なのだが、お互いに若い頃、とっくの昔に潰れてしまったが、近くにあったショッピングセンター内のそれぞれ違う店舗で働いていたのだ。
社長はもちろん、ケーキ屋さん。
ご自分の店であったかどうかは未だに知らないが、まだ二十代で、若々しく颯爽と働いておられた。
業種の違う魚屋で売り子のバイトをしていた16歳の私に、センター内で顔を合わす度に、励ましの言葉を掛けてくれ、いつも明るく笑顔の素敵な優しいお兄ちゃんだった。

「こんにちは!娘と珈琲タイムにケーキが食べたくなって」
と私が声を掛けると、振り向いた社長はしゃがんだまま手を止め見上げると、はにかんだ私を確かめ、おもむろに笑みを浮かべるや否や、満面でにっこりと笑って下さった。
あの頃と同じ優しい眼を、より細くして。

店内に入り、ショーケースの芸術的な様々な宝石に眼を奪われていると、後ろの自動ドアが開き、社長が入ってこられ、にこにこしながら真っ直ぐ私に近付いた。
「今日はお店、休み?」
「はい。娘とうろうろしてました。それにしても、ほんとにきれいなケーキが並んでいますね。焼肉と違って、奧が深く、芸術的や」
と、決してお世辞ではない正直な感想と、自分の仕事を少し謙遜していうと、
「何言ってるねん。そんなことないやろ」
とまた笑った。
変わっておられないなとその時、私は思った。
八日市駅前のアピアや、確か近江八幡など、あちこちに店を構えるほどの繁栄ぶりなのに、人間性が語り口やしぐさ、一番素直な目線に表れ、昔の若く優しいお兄ちゃんが戻ってきた。
一年に数回しか顔を合わさず、少年時代の私のことを知っていることへの照れも働き、二言、三言、言葉を交わすくらいしか出来なかったが、旧交を確かめられた。


photo:01

奧がチーズ何たらケーキ、手前の真ん中はイチゴタルトになっているのだが、名前は違った。

その両脇は見た目で選び、名前など見もしなかった。


とにかく、自宅に戻り、珈琲ではなく、大人の私は買ったばかりの牛乳で星形の金粉が散りばめられた名無しケーキを口に入れた。

いちご味のババロアがほんのり苦みを帯び、まさに大人の味がした。

満面の笑みを浮かべ、大好物のイチゴタルトもどきを頬張った娘は、今にも卒倒しそうなくらいに喜び、感動していた。

時計を見ると、丁度、世間一般のティタイムの時間。

カミさんは用事、下の娘は会社に出掛けていて、家の中が静かな昼下がり、ケーキの甘い香りとたわいのない親子の会話だけが部屋中に漂い、テーブルの娘との間に凝縮した。

2度寝で始まり、短くなって何も出来そうにないと諦めていた休日に、ささやかな幸福を噛み締める充実したひとときが流れた。


イセトウさんの店舗は、八日市ICを下りて信号を右折し国道を1,2分も走ると、左側、滋賀病院の真ん前、桜の木に見守られるようにして佇んでいる。

店内にはイートインも併用され、お洒落で静かな空間で、眼にも口にも美味しい宝石をじっくりと選んだ後、すぐその場でご賞味頂ける。

超おすすめのケーキ屋さんである。




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