「塩タン3、カルビ1、ハラミ1、あとキムチにナムル、特大ライス入りました!」

スタッフの元気な声が響く。

と思ったら、まだ入って一月経つか経たぬかのS君は、

「ユッケと生レバーです!」

と平気な顔をして言う。

「……、刺身は無くなったって」

もう、何度も伝えたことをまた教える。



店の忙しさがピークに達すると、そこは戦場だ。

皆焦るし、感情も昂ぶっている。

誰かがミスをしたら、それはすぐさま全体に及ぶ。

でも決して頭ごなしには叱れない。

誰も皆、失敗もし、ホロ―もされてきたのだから。


「おーい、兄ちゃん!サラダはまだか!?」

いらつくのは店側よりお客様の方である。

「どうも、すみません。順番通りに作っておりますので、

もう少しお待ち下さい!」

──順番通り?

少しでも速く提供しようとする調理担当の私にとって、

それ位難しいことは無い。

注文順にカルビータン―ホルモンーサラダ―ホルモンーカルビータン、

とは作れないのだ。

どうするか?

当たり前だが、サラダータンーカルビ―ホルモンとまとめて作る。

結果的に全体に速くお出し出来るからだ。


もちろん、その中に別に優先すべき料理も種々の理由により発生する。

お客様の出入具合、お食事の進行速度、子供様優先など、

ありとあらゆる複雑な要素が絡み合い、頭がパニックになりそうになる。


そこに料理を違うテーブルに運ぶミス、あるいは伝票に付けたテーブル番号が、

間違っていたら……。

ご想像頂けるだろう。

──まさに戦場なのだ。



それは、1、2時間の集約された仕事で、お客様が退かれたら、

祭りのあとのような寂しささえ漂う静寂が戻るのだが、

最後に反省だけは残る。

どんなミスもすべて責任者である私にあるわけで、だから、ミスしたスタッフを、

私はほとんど叱ったことが無い。

そう思う横から上さんが、スタッフにきつめのアドバイスをする。

上さんに言わせると、私はずるく、いつも自分が代わりに嫌われ役になっていると愚痴る。

──その通りだと思う。

結局は皆に好かれる店長でいたいのだ。

反省しているだろうと、高を括ったスタッフの為では無い。



この間、ある人のブログに、部下を叱ることの必要性が書かれていた。

それによると、部下を叱ることによって、自分もいい加減なことが出来なくなり、

懸命に働くことによって、共に成長していけるとあった。

当然その分、人任せでいられずに自分の仕事が増える。

それが嫌でもあった。

結局相手に対しての慈愛がないばかりか、なまくらなのだ。

しかし、店を成長させ、お客様に喜んでもらえるには、ここが急所である。



子育ては自己育てと言うが、人を育てることにも同じことが言える。

そしてそれがそのまま店の品格となる。

やっぱり自分は、まだまだだなあ、と思う今日この頃である。

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