孤高だがこれも至極の愛なのか?大映東京「清作の妻」若尾文子/田村高廣・増村保造監督 | 東映バカの部屋

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皆様、こんにちは。

 

 

9/1(火)の職場復帰迄残り12日となりました(この記事を打ち込み中に復帰当日に関する連絡が入っています)。今回の休業は致し方無い指示かつ給与保証付きですので四の五の言えませんが、人間休みが続くと前半は「あと20日も有る!」後半は「もう10日しか無い!」となってしまうもの…現在の俺もそう云う心情です。「危機管理の基本は準備は悲観的に、行動は楽観的に」と云う言葉を残したのは佐々淳行ですが「前半は楽観的に、後半は悲観的に」と言い換えてしまいそうにもなります。そう考えると人間と云うのは本当に甘い生き物なのだなぁと改めて実感させられていますし、復帰時は相当に気を引き締めて臨まないとしっぺ返しが来ると覚悟をして業務に当たらねばと思っています。

 

 

 

さて本日は此方の作品です。

 

 

 

「清作の妻」昭和40年6月25日公開・吉田紋次郎原作・新藤兼人脚本・増村保造監督・大映東京制作。

 

 

 

DVD化作品でAmazonプライムビデオ(シネマセレクション by KADOKAWA対象作品)に於いて有料動画配信が行われてます。尚、KINENOTEを調べてみると、詳細は不明ながら同じ原作を元にした同名の作品が大正13年に日活で制作されていました。

 

 

「五寸釘を手にして凶気を極限に持って行っているかの様な冷酷非情そのもの若尾文子」をDVDの表紙に使用していますが「若尾さんの美貌以上に当作品の趣旨・内容はこの写真のみでも十分に解る優れた選択」とも感じます。

 

 

 

 

 

両親の為に望まぬ妾家業をしていた若尾文子…しかし頼りの旦那・殿山泰司と実父がほぼ同時に急逝し、殿山さんが残した遺産千円を手にした若尾さんは実母・清川玉枝が逃げる様にして離村した山村に気は進まなかったものの一緒に戻ります。

 

 

「自宅は襤褸でも着物は綺麗」「朝から晩迄自由で気儘な生活」の若尾さんは周囲の目を引く存在でしたがそれは村八分そのもの…そんな時、山村一番の模範青年であった田村高廣が除隊で帰村し、その模範振りは村内の堕落をほぼ律してしまった程でしたが若尾さん親子は相変わらず。ところが「急病に倒れた清川さんを助けようとした上に、無念の逝去後は葬式の手伝いをした事」で若尾さん・田村さんは急接近し、周囲の敵視の中で婚姻し(しかし、田村さんの家族が若尾さんが持っている大金に興味を惹かれる描写が存在しています)田村さんは生家を離れ若尾さんの自宅で生活をします(尚、ここ迄の間に清川さんの懇願により若尾さんは隣村で生活していた近親者かつ聾唖者の小沢昭一を同居させています)。

 

 

田村さんの模範振りは若尾さんとの婚姻後も変わらず、一緒になった事で若尾さんも畑作業に精を出し過去の自由気儘な生活振りも影を潜めましたが「田村さんに対する日露戦争への招集命令及び負傷による一時送還」が若尾さんの心情に激震を引き起こし…

 

 

「我国の全国各地に残っている村八分と云う悪い慣習を逆手に取り「孤高だが至極の愛を貫いた若尾さん・その心情を五体満足を失って気付かされた田村さん」に結び付けた事」は原作が優れていた点も大きいのでしょうが「女優開眼と周囲から評価された切欠が悪女であった若尾さんのライフワークとも言える役柄に嵌った事」「好色家を演じても決して品を失わない「素の生真面目さ」が存分に生きた田村さん」「このお二方の一番の持ち味を持て余す事無くフィルムに焼き付けた増村監督の手腕」が見事に融合した傑作!「周囲の理解すら拒絶し、田村さんの為だけに精を出す若尾さんと、だだ黙ってその気配を感じ取っているだけの田村さんの姿は、結実した強固な愛そのもの」ですし「地獄に行く迄初心と愛を貫き周囲に見せ付けて生き抜く覚悟は、死で愛を結実させている作品群を遥かに上回る場面描写・心理描写」と感じます。

 

 

「自らのみに注がれる愛が無ければ心のスイッチが入らず、それを阻害する出来事が起きると一緒にショートしてしまうブレーカーの様な若尾さん」は後半戦で狂乱し刑に服す迄墜ちてしまい、被害者の田村さんも事の直後は若尾さんに対する恨み言を発しましたが「大騒動を引き起こした若尾さんは満期出所後考えられぬ行動を起こし、五体不満足となった田村さんは時間の経過と共に「或る結論」に至り、孤高ながらも至極の愛を手にしたお二方の姿を映し出して幕引き」の展開も現代の視点に慣れた方々には新鮮かつ奥深く映るのではないかと…同時に「模範と虚飾は紙一重かつ、模範が周囲の担ぎ上げた神輿に乗った時点で自身の心情に悪影響を与えてしまう危険性」を、結末直前の田村さんの台詞が教えてくれます。

 

 

この「模範と虚飾は紙一重」は俺を含めた現代人は知るべきです。そして「いい事は周囲に然程広まらない上に妬みを含みながら湾曲して伝わって行き、悪い事はそのままであっという間に広まる」「何処かで誰かが見ていてくれるの言い伝えも、いい事よりも悪い事を見られている場合が殆ど」これも残念ではありますが現実はこうなんだと理解し、反面教師として自己防衛及び日常生活に生かす必要が在るでしょう。