辰ちゃん・恒さんが見せる「兄弟分の悲哀」東映東京「昭和極道史」佐伯監督。 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんにちは。

 

 

休み最終日、西日本で猛威を振るった低気圧が本日は此方の方に来ております。降雨は少ないですが猛吹雪時の様な風切り音が繰り返し耳に響いています。

 

 

 

さて「藤の純子姐御の婚姻による引退(後に復帰)」と「鶴田のおやっっさんや健さん、若山先生等々が支えてきた東映任侠路線・東映現代やくざ路線の衰退」が興行結果から明らかになって来た昭和47年…

 

 

岡田名誉会長は常々「看板路線は持っても最大10年」と言ってはいた様ですが、製作現場では「東映の看板路線の継続維持」の為に様々な試行錯誤が行われていた事が、この当時の作品を鑑賞していて伝わって来ます。

 

 

サクさんが手掛けた「一匹狼の暴れん坊路線」は翌年「東映実録ヤクザ路線」として定着し新たな看板路線となり、岡田名誉会長を最高総司令官として総隊長の石井センセイ・本隊隊長の中島村長・別動隊監督のソクブン監督で構成された「東映京都ゲリラ部隊」は「東映ポルノ路線の更なる昇華と「東映女番長路線」の確立」に貢献。更には千葉ちゃんや悦ちゃんを主演として起用した「東映アクション路線」も「安定した興行成績を残せる作品群=併映作品の王道路線」として定着。

 

 

そして「東映任侠路線・東映現代やくざ路線の維持」にも様々な工夫を凝らし、看板路線の名が外れてしまったとしても「これ等の路線の維持」の為に多くの方々が尽力していた事が伺えます。

 

 

そんな中制作された作品が此方…

 

 

 

「昭和極道史」昭和47年10月12日公開。松本功/山本英明の共同脚本・佐伯清監督・東映東京制作。

 

 

VHS化作品ですが未DVD化、Amazonビデオ/DMM.com/GYAO!ストア/YouTube内で有料動画配信が行われています。

 

 

 

 

 

 

※KINENOTE内の作品案内は此方から

 

 

 

辰ちゃんが主演・恒さんが助演で「兄弟分の悲哀」を見せ、そこにヒロインの加賀まりこが花を添えています。

 

 

●東映公式・YouTubeプレビュー動画

 

 

 

 

 

 

併映作品は、監督を務められた小沢天皇が生前自著内で「俺の唯一の失敗作」と語られてはいたものの「口より手が早い、修行中の身の侠客を鶴田のおやっさんが演じられ、結末も従来の任侠路線の様な殺伐とした雰囲気等々を払拭していた」異色の任侠映画ながらも傑作と俺は感じた「着流し百人」(松浦健郎脚本・小沢天皇監督・東映京都制作・未VHS/DVD化作品ですが、DMM.com内で有料動画配信が行われています。KINENOTEの作品案内は此方から

 

 

 

 

 

 

 

東京の老舗一家の若衆であった辰ちゃんと恒さん…しかし、新興暴力団(組長・ナベさん/妻役は小林千枝)に潰されてしまい、二人はナベさんを襲撃しましたが失敗した上、恒さんは瀕死の重傷を負います。

 

 

その恒さんを残して一人自首し服役した辰ちゃん…数年後に出所した際、即座に声をかけてきたのはムショ仲間で関西の大組織の幹部になっていた京さん。

 

 

辰ちゃんはやくざ稼業から足を洗おうとしていましたが、好意を受けた義理を返す為に要請を受ける事になるのです。

 

 

それは「関東進出の足掛かりを辰ちゃんが付ける事」数年ぶりに東京に戻った辰ちゃんは焦る若衆(潮の健さん。辰ちゃんのお供に加え、京さんに監視役を命じられていました)を抑え付けながら関西組織の看板を掲げ機会を狙っていた時、ナベさんに父親を殺された仇を打つ為、機会を狙っていた関東きっての腕を持つ女胴師のまりこさんに出逢うのです。

 

 

そして恒さんとも再会…しかし恒さんは、襲撃時の瀕死の状態から救ってくれたのがナベさんであった為義理が出来てしまい、客分となっていたのです。

 

 

運命の悪戯なのか?敵として戦う事になった辰ちゃんと恒さん。

 

 

しかし、関西ヤクザの進出を阻止する為に結成した「関東ヤクザ組織の連合会」の会長で、ナベさんの動きを注視し苦言を放った良識ある親分(ネコさん)が、右腕であった筈の幹部(高宮敬二)とナベさんの策略により惨殺され、更には辰ちゃんと恒さんの兄貴分で現在は堅気の建設会社を経営していた丹波の御大と重役の稔侍さん迄が「辰ちゃんと恒さんを助ける為に匿った事」から抗争に巻き込まれ命を失います。

 

 

そしてナベさんは京さんと手打ちを行い、同時に血縁式を開催する流れに…

 

 

ヤクザの汚さに愛想を尽かした上、堅気の人間に迄手を出し葬った怒り抑え切れなかった辰ちゃんと恒さんはやはり「心の繫がっていた兄弟分」そこに「ナベさんを葬り、父親の仇討ちを果たす事」のみを生甲斐としていたまりこさんが加わり「最後の勝負」に臨む事になるのです。

 

 

 

当時鑑賞された方々、そして現在の「任侠映画好き」の中には「顔触れを変えただけで中身は従来とは変わらない」と感じてしまい「あまり面白くなかった」と評価をしてしまうのは仕方がないです。

 

 

実際、当作品の下地となった物語の流れはそれ迄何度も使われていたものですし、頭の中では「世代交代や顔触れの刷新は必要かつ時には新たな発見を生む」とは解っていても「古き良き時代の傑作を知っている上、見慣れていた」となれば「二番煎じ」「焼き直し」等々と即断されてしまう事は今も過去もこれからも変わらないでしょうから…

 

 

「新たな思考・志向・施行」では、併映作品の「着流し百人」に軍配が上がります。

 

 

 

しかし、物語の流れは「焼き直し」ではあるものの、辰ちゃん・恒さんが「諸先輩達の芝居を解った上で、敢えて真似する事無く、自分達が遣ってみたかった芝居を肩肘を張る事無く演じている事」「次世代を担う若手俳優の視点で、新たな侠客の姿を構築しようと尽力した事」「いい意味で東映に染まってはいなかったまりこさんを顔触れに加え、堅気の女性の恨み辛みを自然に演じ切った事」が当作品の美点であると思います。

 

 

俺もこの作品の良さに気付いたのは三度目の鑑賞だったかなぁ…一度目は「焼き直しかぁ…」と感じた事を書き加えておきます。

 

 

 

そして、もし可能であるならば「辰ちゃんの頭の回転の良さ・器用さ」を「不良番長シリーズ」等々と並行して鑑賞しながら感じて欲しい!

 

 

これは「夜の青春シリーズ」「夜の歌謡シリーズ」の時代からも感じ取る事が出来ますが「添え物作品のスターにしろ!」と岡田名誉会長は制作陣及び辰ちゃんご本人に号令をかけてはいたものの、同時並行の形で「花札勝負」「渡世人シリーズ」「決着(おとしまえ)シリーズ」等々で辰ちゃんを「男気溢れる正統な東映やくざ路線の主役」としても重用。

 

 

「大馬鹿芝居」は自らが考え生み出した芝居でしょうが「東映やくざ路線に於ける芝居」は「兄貴分だった鶴田のおやっさんの芝居をきちんと勉強してしっかり生かしていたのでは?」と台詞回しから感じる事も多々。

 

 

恒さんは東映任侠路線にも出演をされていたものの、この頃はまだ「やんちゃな雰囲気」を色濃く残していた役柄が多く、またそれが東映ファンやボンクラ野郎を強く引き付け、東映に新しい風を持ち込みましたが、従来の侠客の姿に近い役柄に挑んだのは、俺はこの「昭和極道史」が最初ではないのかなぁ…と考えています。(その前に「博奕打ち・いのち札」で侠客を演じられましたが「自分勝手な判断から勢いで突っ走った事が重大な結果を生んでしまった若衆」ですので、従来の侠客芝居とは一線を画していたと判断しています)

 

 

 

この三か月後に「仁義なき戦いシリーズ」の「第一部」で山守組長を演じ、生涯の当り役かつ「星桃次郎・中村主水・車寅次郎・浜崎伝助・神坂弘」と並ぶ「ボンクラ野郎のアイドル」の一人として未だに君臨し、愛され続けているネコさんが「善人を絵に描いた様な組長」を演じ切っているのも見物です!(勿論、多くの作品で「善人役」を演じ、其々が観客を引き摺り込む名演を見せていますが…・)

 

 

 

他の出演者は…見明凡太郎・北川恵一・たこちゃん・城恵美・沼田曜一・中田博久・亀山達也・八名の親分・絃さん・サワショウさん等々です。