ロンジ写真館『蝶の眼薔薇の声』

その2


『紫陽花』写真・文by ronji


雨の参道で
「お着物がだいなしになりますよ」と傘を差し掛けてくれたあのひとは
並んで歩くこともなく
私にその黒い傘の柄を押しやって
苔むした階段を器用に駆け下りてゆきました

色褪せた紫陽花が
始まる切っ掛けを失った恋を静かに見守っています



『紫陽花』文by 70rock


「さっきは傘をありがとう」
女の声が聞こえたような気がして窓をあけると、
庭の紫陽花の
薄紫色の花の隙間から
傘の柄が覗いている。


「私はいくら雨に濡れても平気なの。
あなたの優しさだけいただいて
傘はお返しするわ」
紫陽花の花の中から声がした。


私70rockと冷やし蜥蜴寫眞館 のロンジさん

とのコラボレーション、

ロンジ写真館『蝶の眼薔薇の声』の第2回です。


月曜の夜にロンジさんの写真と文章をアップ。

その写真と文章に触発されて私の灰色の脳細胞に生れた言葉を書きつけ

1枚の写真と2つの文章を週末の土曜or 日曜に再アップします。

第1回は『指輪』でした。