●バンドの結成

「学生時代に絶対にやるべきことだな!」ダギーが熱っぽく叫ぶ。やっと最初の話題に戻ってきたようだ。

「とにかくバンドを始めることだ。やってみりゃ分かる」

「アート・スクールにはいつだってギタリストがいるからね」アンディが返す。 「毎週金曜の夜、俺たちは版画クラスの教室でジャムってたんだ。最後はサンダ ーバードの上で酔いつぶれることになるんだけどね」

「本当にバカだよな」フランが笑う。「でも大学でバンドを結成しておけばさ、 イベントなんかで演奏できるだろ」

学生バンドで活動している連中っていうのは自分のことを地元のヒーローみたいに思っているものだ。さもなきゃデビッド・ボウイみたいな衣装を着るわけがな い。で、現実はどうなんだ? 彼らは本当にヒーローなんだろうか?

痛いところをつかれてダギーはしどろもどろだ。

「え? ああ。本当はどうなんだろうな」彼の顔が赤くなる。「あんまり期待はしないことだな。でも、ま、何が起こるか分からないだろ。この世の中?」

「信念さえあればね。何をやったっていいんだ」フランはここぞとばかりに大きな定規を机に叩きつける。「僕が君主政治の一部になることだってできる。もちろん、そんなことは愚かなことだと思うよ。でも本気で望むならきっと出来るはずだ」

「それが学ぶことの本質なんだ」家の呼び鈴がなり、スロットマシンが回り、ビ ールのジョッキがパブの入り口で手招きしていても、だ。

フランの結論。「自分が本気で、心から望むこと。それを掴み取るために頑張るんだ。学校に通 い、頭の体操をして、友達を作り、バンドを結成する。何だってできる。学生時代ってのはね。本当に素晴らしい一時なんだ」 [完]