眼横鼻直なることを認得して、人に欺かれず。 | 夢中説夢

眼横鼻直なることを認得して、人に欺かれず。

只是等閑に天童先師に見えて、当下に眼横鼻直なることを認得して、人に欺かれず、便乃ち空手にして郷に還る。所処に一毫も仏法なし。任運に且く時を延ぶ。朝朝、日は東より出で、夜夜、月は西に沈む。雲収て山骨露れ、雨過ぎて四山低る。畢竟如何。良久して云く、三年に一閏にあい、鶏は五更に啼く。

訳)ただはからずも先師天童如浄禅師にお目にかかり、その場で目は横、鼻は縦であることがわかって、もはや人にだまされなくなった。そこでなにも携えず故郷に還ってきた。だからして、私にはいささかも仏法はない。ただなんのはからいもなく自分の思うままに時を過ごしているだけだ。見よ毎朝毎朝、朝日は東に昇るし、毎夜毎夜、月は西に沈む。雲がはれあがると山肌が現れ、雨が通り過ぎると辺りの山は低い姿を現す。結局、どうだというのだ。しばらくしていうには、三年ごとにうるう年が一回やってくるし、鶏は五更(午前四時)に啼く。

『道元禅師語録』
道元禅師語録 (講談社学術文庫)/鏡島 元隆

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