どんな仕事も | 見えない世界の真実が此処に®

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霊能力を生業としている方や、一般の方、霊媒体質の方のためのブログです。

 

 

どうせ俺なんて、世間のゴミダメだと思っていた。唯一の自慢は港区白金に住んでいる事。そう、こう見えても俺はシロガネーゼ。築30数年のワンルームだが、ロフト付き(自分で作った!)自慢では無いがとても綺麗好きの俺の部屋はいつもピカピカ。ゴミは毎週捨てるし、洗い物をシンクに置きっぱなしなど有り得ない。自炊も洗濯もお手のものだ。警備員歴30数年、誘導棒を振り回す技術では誰にも負けない。仲間は、俺をスーパー警備員と呼ぶ。そんな俺の敵はプラスでも無い、マイナスでも無い、そう、都内をぶん回し走り続けるタクシードライバー。やつらは俺たち警備員の敵だ・・・いや敵だったはず、そう、ずっと思っていた。

 

先月末の事だった。給料が出たので少し奮発して、白金高輪駅の近くの「きらぼし食堂」に行ってきた。なんと言ってもここは昼呑みができる。そして、魚が美味いのだ。ちびちびと焼き魚をほぐし、ハイボールと魚と白ご飯を、バランス良く口に運び、食事をすすめながら、ハイボール2杯目を飲み干した頃だった。

 

どう見てもタクシーの運転手らしき2人が入ってきた。もちろん、敵が来たと俺は思った。ただ、お酒と美味しい料理で気分は良かった。だからなのかどうなのか。やつらが何を頼むのか、どんな話をするのか聞き耳をたててしまった。ちょうど背中の方のテーブルに彼らは座った。

 

今思い返せばあの2人の話を聞かなければ良かったのか、どうなのか。

 

「お前な、なんでいつも、どうせ俺なんてという顔をしてるんだよ。そんなんだからノルマも達成できないんだよ。先月いくら稼いだんだ?どうせ猫の頭くらいの稼ぎなんだろう?」

 

(それを言うなら猫のひたいだろ。喩えがおかしいよ)

 

先輩と新人の2人のようだが、明らかに新人イビリをしている。

そして、イビリは続いた。

「お前な、前の職場でも同じこと言われなかったかあ?そんな顔してるからタクシードライバーなんて仕事してるんだよ・・・」

(いや、お前もだろ・・・!)

 

先輩らしき男は大きく溜息をついて、鳥の唐揚げ定食を2つ!と片付けをしている定員さんの後ろ姿に向かって注文した。どうみても2人とも50歳前後。俺と変わらない年代かもしれない。この店は魚が美味しいのに唐揚げかよ。

 

『もう1杯、ハイボールお願いします!』

俺はなぜか今日イチのスマイルで定員さんに言った。

 

背中の方では2人がさらに会話を続けていた。

「センゴクさん、俺、駄目なんです・・・」

(先輩らしき男はセンゴクというのか、ふむふむ。3杯目のハイボールをグビっといった。)

 

「何がダメなんだよ?えぇ?何かあるのか?」

(うん? センゴクは、なんか親身に聞きだそうとしてるな、意外とイイヤツなのか・・・?)

 

「俺、客が路上で手を挙げているのを見ると、怖くて・・・」

(おいおい!それな!?タクシーの運転手無理だろ!)

 

「おう、そうか・・・それ、俺も分かるよ」

(センゴク、お前もか!分かるんかい!)

 

「そうか・・・俺もそうなんだよ。客が手を挙げているのを見ると最近怖いな・・・」

(怖いんかい!?  2人とも無理ゲーだな…)

 

「え!?先輩もですか!?」

 

「そうよ、ほれ、先月はじめ俺、電話番させられてただろ?一旦停止したはずなのに、なんか赤く光る棒が振られてるなと、見て分かってはいたけど、ただの警備員だと思って素通りしたらさ、会社に電話がかかってきて・・・それで、それであれだよ。あれだから、電話番1週間に反省文と報告書を書かされてさ。それからだよ、歩道で手を挙げている人が、なんか怖くてさ、特に夜!

手だけかな?赤く光ってるかな?どうなのかな?って確認してると、もう通り過ぎちゃってさ。それで、後ろのタクシーに、それであれだよ。もうなんか最近、ダメなんだよ…」

 

(・・・ 俺は3杯目のハイボールをさらにグビっといった)

 

「え〜センゴクさん、それはタクシーの運転手できなくなるんじゃないですか〜?」

 

「えぇ? だ、大丈夫だよ。俺だってもうタクシー乗り始めて7ヶ月経ってんだから」

(まだ7ヶ月かい!?)

 

「そ、そうですよね。私、頑張れます。頑張ります!なんかセンゴクさんの話を聞いていたら、怖く思ってたのが馬鹿らしくなりました!ハハハハッハ  それにしてもこの唐揚げ美味しいですね!」

 

「おう、そうか、それは良かった。そうだろ!?うまいだろう、ここの焼き魚。」

 

「センゴクさん、これトリカラですよ。」

 

「あ、おう、そうだった!」

 

「そんなんだから、警備員と警察と間違うんですよ!ハハハハッハ」新人ドライバーもなかなか言う。

(・・・・3杯目のハイボールをさらにグビっといった)

 

「うるせいうるせい、どうせ俺んてみたいな顔してるお前に言われたくないわ!ハハハハ…」

 

(・・・タクシーの運転手にも色々あるんだな・・・なんか敵だと思ってたのが馬鹿らしくなった)

 

そんな事があったのが、先月末の事だった。

それから、夕暮れ時の誘導棒の振り方を考えた。どうやったら警察官に間違われないか。どうやったら「警備員だぞ」と主張できるのか。

 

いつの間にか敵だったタクシーが同じ道路の安全を守る仲間のように思えてきているのだ。そう、俺はシロガネーゼ。自炊も洗濯もお手のもの。そして、警備員らしく誘導棒を振れる男になる。今日も、スーパーの出入り口の混雑を解消する。どんな仕事にも苦労や悩みはあるのだろう、だから、あれがそれで、これがあれだ。あれがあれだから、これなのだ。みんな一生懸命に働いているから、敵など無い。共に働く仲間だと思えば良いのだ!どうせ俺なんてと思うのは辞めた。

あれがあれだから、それがこれで、あれなんだ。

 

今日も良い日だ。がんばろう。

 

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