かりんとう | 見えない世界の真実が此処に®

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霊能力を生業としている方や、一般の方、霊媒体質の方のためのブログです。


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冬の終わりになると

いつも思い出す情景。


あの頃、

決してお金があったわけでは無いと思う。

でも…


掘りごたつの中で足をブラブラして、

壁に足が当たる音でリズムを取っていた。


おばあちゃんと、おじいちゃんと、

姉と妹と弟と、

幼くして死んでしまった次男の啓二も、

まだあの時は居た。


夕方になると仕事から戻った

お母ちゃんとお父ちゃんも揃って

掘りごたつに足を押し込んだ。


姉は赤切れした手を掘りごたつの中にいれ、

いつもフーフーと息を吹きかけ暖めていた。




しあわせだった。




私の人生が狂い始めたのは

いつからだろうか。


東京に出てきてもう

何十年経ったのだろうか。


商社に勤めていた夫が

急にこの世を去ったのは、

正月の三日だった。



まだ53歳だった。



出世し、部長職についていた夫の葬儀には

かなりの人たちが弔問に来てくれた。



どれだけの数の人が頭を下げながら、

私の目の前を通り過ぎたことか。



いろいろな生命保険に入っていてくれた

おかげで、お金の心配は全く無かった。




でも、その後、誰も来なかった。




姉の真紀子も、妹の登紀子も、

弟の正治も、誰もこなかった。




すべて私のせいだと思うわ。



私の心の中には悪魔と天使がいる。



「おはよう。元気だった?」

と明るく言いたいのに、


「何で来たの?何か用?」

とそっけなく言ってしまう。



本当はもっと

周りの人と上手く付き合いたいのに

本当は私は優しいはずなのに




本当の私は…。




息子も娘もここに来ることは無い。


もう、何年子供たちに

会っていないだろうか。



孫が生まれ、顔を見せにきてくれて

何年経っただろうか。



怪訝そうな顔をしてやってくる

嫁の顔しか思い出せない。



「お母さん、大丈夫?
 何か必要なものは無い?」と

電話で優しく言ってくれている気はする。



でも、いつも変な考えが頭の中に

浮かんでは消え、浮かんでは消え

そして、その突拍子も無い、

鬼の考えが口から沸く。



嫁の言葉には

恐ろしい仮面が被せてある。

本当に優しい気持ちで

言ってはいない。

絶対に、私の財産を狙っている。

ひとつも私の事など心配していない。



本当は上手く付き合いたい…のに…。



______




ここは自由だ。


でも、施設を抜け出し、

演劇を見に行っても、

お芝居を見に行っても、

どんなに高級なお店に行っても

心の空洞は埋まらない。



「あら、柴田さん、
 今日はどちらに行ってたの?」



専門学校を卒業したばかりの

カリンという名前の女の子は

いつも明るく声をかけてくれる。



「………」



私は本当は心から


明るい返事をしたいと思っている。


「今日はおいしい野菜カレーを
 食べてきたのよ!
 あなたも一緒に行く?」

でも、
その言葉は喉から勢いよく出てくれない。



「カリンちゃん、
 いつもありがとう、
 あなたは本当に良い子ね」



私の心の中には

悪魔が、鬼がいる。

頭の中で思っている言葉は

私の口からは出ない。




カリン、本当に変わった名前だわ。




あれは一年くらい前の事だと思う。


まだ学生だったカリンちゃんは

研修の為にこの施設にきたばかりだったと思う。



重子というパートの女性が、

新人のカリンちゃんに

説明をしているのをウッカリ聞いてしまった。



「あの部屋の柴田さんという方は、
 要注意よ!性格が悪いの!
 注意してね。」


「はあ、でも
 性格が悪い人なんて
 私はいないと思いますよ…」


明るく素直なカリンちゃんは、

そうはっきりと反論していた。



どんな状況で

そんな会話になったのかは分からないけれども、

彼女は確かにそう言ったの。




きっと、良い子なのよ。

カリン。

本当に変わった名前だわ。

かりんとうは、

私も大好きなお菓子だし。



そう頭では分かっていた。



その子を見ていると、

自分の性格の表裏にがっかりした。


なんでこんな言葉しか

私の口からは出ないのか…


どんなに酷い言葉を

他人に向けて生きてきたのかと

振り返ってしまう。


_______


朝起きて布団から出るとすぐに、

インターホーンでコーヒーを注文し

持ってきてもらう。



コーヒーを飲みながら、

季節がうつろう景色をながめる。

近頃は、かりんとうをかじりながら、

コーヒーを味わっている。



別に難しいことを考えているのではないわ。

ただ、昔を思い出すだけ。

昔の、幼い頃の素直な自分を思い出すだけ。

弟や姉や妹たちと遊んだことや…

学生時代に恋をしたことや…

商社に就職でき、

大恋愛をしたことや…

そんな事を思い出すだけ…。



私の人生はいつから狂ってしまったのか。

あの人と結婚してからかしら…?

人生って何だろうね。



かりんとうをガジリガジリしていると、

トントンという音がした。



「柴田さーん、入りますよー」



あ、かりんとうだわ!


「はーい。どうぞ」


あら!

今日はなんだか明るく

答えられたじゃない!

やったわ…!



「コーヒーのお代わりはいりますか?
 シーツを変えましょうか!?」


明るく元気な声でカリンは言った。


「…ぉ、お願いできるかしら?」

と、明るく言えたと思う。


でもすぐに何だか

喉が潰れそうな感覚が襲ってきた。


 え………? 


 の、喉が詰まる。


一気に血の気が引いていくのが分かった。



コーヒーカップは

手の中から飛んで床に落ちていった。


でも、音はしない。


薄れいく意識は

あの思い出に戻っていった。


「お姉ちゃんばかり
 コタツに入ってずるい!」 


弟の啓二の声だった。





おわり
シックスセンス管理人

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