オレが入ってる、アメーバのぐるっぽのスレで、描いた御本人から一年くらい前に、よければ、一度、読んでみて的なカキコミがあった。

それからすっかり忘れてたんだけど、この間、たまたま、この本を見かけた時に、そのカキコミを思い出した。素になった作品も好きだったし、この作品の絵柄も嫌いじゃなかったので、今回、読んでみた。
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これは、マンガの神様と呼ばれた故・手塚治虫の傑作img42855e37381rcg.jpg
を下地にした作品。
手塚治虫というと、数々の代表作があるけど、オレの場合、その、ほとんどは、子供の頃、アニメで見たんだよね。
実際の手塚マンガって、そんなに読んでないと思う。
オレが初めて見たマンガの単行本については、前に書いたけど、オレが、初めて買ったマンガ雑誌は、たしか小四だったと思うけど、週刊少年チャンピオンだった。

オレが子供の頃は、チャンピオンが全盛だった時期で、その中に、ブラック・ジャックも連載されてて、毎週、楽しみにしてたマンガのひとつだった。

ガキの頃、住んでたところから、チャリで15分くらいのところに貸本屋っていうのがあって、母親も手塚マンガが好きだったから、よく、ブラック・ジャックの単行本は借りに行ってたなあ。

ブラック・ジャックは、これまで、何度もトリビュートされてるけど、この作品の最大のウリは、SFマンガの傑作、「寄生獣」
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を描いたマンガ屋、岩明均がシナリオ原案をした事で、岩明均がブラック・ジャックという題材を、どう料理するか、だったと思う。
連載時、岩明均名義だったのに、どんな事情があったかわからないが、単行本では、岩明の二文字をバラした山石日月という変名の名義に変わってるところからも、残念ながら、この試みは失敗だったみたいだけどね。

ましてや、この作品では、自身の画ではなく、シナリオ原案というアイデアと文章のみという岩明均にとっても初めての書き方だったが、病気にSF的要素を入れるでもなく、人間ドラマをメインにしてたから、奇抜な展開にももっていけなかったようだからね。

この作品のあらすじは、ブラック・ジャックが50代になってて、舞台は、、絶対専制国家ハロイ。

独裁政権を維持する為に情報統制、異分子の弾圧・粛清を行い、国庫は軍事に偏り、その為に財政は破綻。生活に窮した国外亡命者が後を絶たず、国は荒廃しており、世界からも孤立し、独裁者ムタリロを世界中がもて余していた。

そういう状況の中、ムタリロが重病に倒れた。

崩れかけのハロイ政権を実質的に握るムタリロの後継者といわれるNo.2ソルニ参謀長
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は、自身の人望もカリスマ性にも乏しく、政権維持にはムタリロの威光が不可欠で、頼みの綱である独裁者の延命をはかる為、天才ながら、無免許の天才外科医、ブラック・ジャックを呼び寄せた。
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ブラック・ジャックの診察によれば、ムタリロの延命は、8年くらいなら可能だという。

ただし、報酬は、米ドル換算で二億。
ソルニは、あまりにも法外な金額に驚愕するが、ブラック・ジャックは、政権維持の為と考えるなら、そう高い金額でもないと答える。
ブラック・ジャックは、一緒に連れて来た、助手のグエン
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が持参したPCで、支払い方法の設定をさせる。

ソルニは、そんな金額は払えないと、ブラック・ジャックに銃を突き付け、独裁国家らしい傲慢さで手術させようとする。

しかし、ブラック・ジャックは、急に昏倒するという持病を抱えており、一度、昏倒すると、30時間近く眠り続けるというものだった。
手術中の昏倒を防ぐには、自分が調合した、特別な強壮剤が必要であり、作り置きも利かないので持って来ていない。

強壮剤の原料となる薬品は、グエンの持つケースの中に揃っており、ケースの中の機械が的確な調合をするという。

ただし、この機械は、指定の口座に入金された額と連動して作動する仕組みになっており、入金されない限り作動しない。

そして、一度、設定すると、システムを開発したグエンでも設定の解除も変更も不可能な仕組みになっており、手術できるかどうかはソルニが入金するかどうかによるという。

ソルニが手付金を入金すると、調合された強壮剤がケースから出てきた事で、ブラック・ジャックの言ってる事が確認された。

隣国の難民キャンプで、急がしく亡命してきたケガ人や病人に処置をするクロエ。
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そのクロエの耳に、幼い女の子の泣き声が聞こえてくる。
そちらを見に行くと、幼い兄妹がいて、兄が妹に父親は撃たれ死んだ事を教えているのだが、妹は信じない。

クロエは、父親が死んだ事をわからせる為に、妹と同じ腕輪を父親がしてる事を聞き、その腕輪を一瞬で記憶し、夜になると、父親の遺体を探しに国境を越える。

女の子に届ける為に、父親の遺体から腕輪を外したクロエは、亡命者の集団を発見した。

谷は、囲まれた丘からはまる見えであり、衛兵に銃撃されれば、ひとたまりもない。

クロエの超視力で丘の方を窺うと、そこには移動中の避難民達を全て射殺しようと身を潜める政府軍の衛兵達の姿が見えた。

抵抗軍の一小隊のリーダーサマム
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は、抵抗軍に狙われてる事に気付いてない政府軍が、避難民に攻撃を始める直前に、襲撃しようと考えていた。

銃声が聞こえ、政府軍の狙撃が始まったかと、そちらの方を見ると、政府軍の銃弾の中を、ひとりで舞うような人影があった。

隙をついて、避難民の集団を逃がした後、さきほどの人影の正体を確認しようと近づくと、素手で政府軍の兵隊達を倒していくクロエの姿があった。
その姿に目を奪われるサマム。

避難民達が無事に谷を抜けたのを確認したクロエは、退こうとするが、政府軍の兵隊に撃たれそうになる。サマム達は、その兵隊を撃ち殺し、さらに、クロエに倒されていた政府軍の兵達をも降伏してた者も含めて撃ち殺し始めた。

その光景を見たクロエは、抵抗軍の兵の銃を奪い、サマム達に、「まだ人殺しを続けたい者は、前に出なさい」と、その銃口を向ける。

独裁者ムタリロの危篤は、抵抗軍にとっては、願ってもないチャンスであり、ムタリロが死ねば、独裁政権の崩壊に繋がる。

国民に生まれた希望の光を守るために、宮殿で危篤状態のムタリロと、それを治そうとするブラック・ジャックを討っ為に、首都に集結しようとする各地の抵抗軍にサマム達も合流しようとしていた。

ブラック・ジャックの名を聞いたクロエは、サマム達についていく。

手術前に、宮殿内で、アヤラ
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と再会する。アヤラは以前、世界中の医者が見放した難病の息子をブラック・ジャックに治してもらった事がある、ハロイの政治家だが、現在は、顧問官というなんの実権もない立場に追いやられていた。

ブラック・ジャックは、このアヤラに、ムタリロの治療費を教える。

自分に迫る危険も知らず、ブラック・ジャックはムタリロの延命処置手術を始める。
ブラック・ジャックの、その神業のような技術に、側についているハロイの医療スタッフ達は心を奪われ、可能ならば、ブラック・ジャックのもとで学びたいと心の中で思うのだった。

手術は順調に進んでいたが、突然、ブラックジャックを持病が襲う。

手術室を外から見ていたソルニは、手付金を支払った時に処方された分があったのでは?と聞くが、手術前に使用した事をグエンから聞く。

昏倒の危機に陥るブラックジャック。
この緊急事態にブラック・ジャックは、手術を中断する為、スタッフに縫合の処置を頼むが、独裁者の身体という事で万一の失敗を恐れ、なにもできず、ブラックジャックの助手であるグエンにすら頼ろうとする現地スタッフの情けなさにたいして、睡魔と闘いながら、ブラックジャックは激を飛ばす。
ソルニは、仕方なしに二度目の送金をし、PCから強化剤を受け取ったブラック・ジャックは、昏倒の危機を脱し、手術を続行し、成功させる。

手術室から出て来たブラックジャックに、あとは術後の経過を見るだけで、なにか不具合が生じなければ、ハロイの医療スタッフでも問題ないという話を聞いたソルニは、ブラックジャックとグエンを監禁する。

そして、強化剤の切れたブラックジャックは、そのまま眠りに落ちてしまう。

ブラックジャックが昏倒してる間に、ハロイは急激に動き出す。
アヤラは、首都周辺の政府軍を管理する閣僚達を秘密裏に呼び集め、ブラック・ジャックに聞いた情報をもとに、ソルニによる国庫金の使い込みの発覚を伝える。
これにより、ソルニは、外出途中に、アヤラが連れて来た衛兵に拘束され、失脚した。
サマム達抵抗軍は宮殿に到着するが、行動前から抵抗軍にたいして陰ながら協力してくれていた、アヤラの希望により、数の力による降伏を試みる為、強引な武力制圧はせず、ムタリロの宮殿を威嚇攻撃する。

この攻撃を受け、入口に出て来た、宮殿を守る衛兵達は長きにわたるムタリロへの忠誠心が刷り込まれており、サマム達抵抗軍は対峙する。

互いの立場の違いにより、折り合えない両軍は次第に緊張感が高まり、一触即発の状況となる。

その両者の間にクロエが入り、今にも銃を撃とうとする宮殿の衛兵に話しかける。

「嬉しかった事、楽しかった事、誰かの笑顔を思い出して」と…。

衛兵達の間に動揺がはしるが、ひとりがクロエに向けて、発砲する。
クロエは、抵抗軍の兵士により救われるが、それを皮切りに、一気に銃撃戦が始まる。

クロエは、そのさなか、宮殿内に侵入し、ブラック・ジャックと会う。
不安げなグエンをよそに、眠るブラック・ジャックに話しかける。

一方、宮殿内でムタリロを見つけた抵抗軍は、その場で殺そうとするが、そこにアヤラが駆け付け、裁判にかける事を提案するが、虐げられてきた民衆の集まりである抵抗軍の兵士達は止まりそうもなかったが、サマムの説得により、アヤラの提案を聞き入れた。

目覚めたブラック・ジャックは、グエンからクロエの事を聞き、懐かしそうに顔をほころばせる。

政権交代したハロイだったが、クロエとアヤラの口添えもあり、ブラック・ジャックとグエンは無事に帰途についた

この作品を読み終えて感じたのは、話題性とかからしたら、期待ハズレかもしれないけど、ひとつの作品としては、よくできていたと思う。

年齢を重ねたブラック・ジャックは、きっとこんな感じだろうな、と思ったし、一応、裏設定にしてあるピノコ
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が成長した姿のクロエは、ちょっとおとなしくなりすぎた感じはするけど、ブラック・ジャックの側で見続けてきたからこその生命の大切さを理解しながら成長した女性である事を感じられた。

演出的にも、最初の手術中のシーンと
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ラストに、敢えて、手塚風のタッチにしてみたり、
時が流れて、現在の顔に変わっていくコマ割りなど
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オレ的には好きな手法だった。

この作品では、革命を主軸に、それに関わる医療の前線をはじめ、国を本来支えるべき一般層の意識や日本人がどれだけ平和に暮らせているかを考えさせられた。

この作品のテーマであろう「思い出して、誰かの笑顔を」
これが、全編から伝わってきて、読んだ後、温かい気持ちになれた。