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           ※参考書による障害物通過の手順。この車両は明らかに逆走している。

 こういってはなんだが、不謹慎にも事前勉強に力が入らなくなってきた。それはそうだ。

その1 コースなど基本事項はおおむね暗記してしまったこと
その2 当初考えていた合格への早道的受験対策が、いささか的外れに思えてきたこと
その3 試験官により何となく採点規準が替わるため、合格への王道が見出せないこと
その4 受験者数と合格者の比率を考えた場合、到底自分が合格するとは思えないこと
その5 語弊はあるが“いいがかり的減点理由”により不合格になると思われること

 毎回毎回不合格ということで受験日は試験の後お昼休みから出社となり、何も語らずともその時点で仕事仲間から“ああ、いま出社ということは落ちたな”と判る仕組みになっている。以前に大型2輪免許を取得され、わりあいそちらの事情に明るい勤め先の女性は“受かったら儲けもの・・くらいの気持ちでやらなきゃだめでしょう”と忠告してくれた。本当にそう思う。つくづくそう思う。次回にむけて


① 運転を楽しむ。もう試験の雰囲気やコースには慣れたのだから、ミスを犯さないようにした上でさらに流暢で同乗者にも気持ちのよい運転を心掛けてみる。
② ただ、ブレーキ操作については慎重におこなう

 新制度となる6月までに合格しない場合、残念だが受験は諦めることにした。その件は会社の方にも報告してある。遠のいた合格の日を夢見て、平日にS岡まで有給を取って受験通いなど、酔狂も度を越えて馬鹿げている。さりとて上記のごとく現行制度上の免許取得にはあまたの解けぬ疑問が山積で、よしんば今回の免許チャレンジは長々したレポートをもってして終了しまう確率が“はなはだ、大”という訳だが、普段の安全運転に心がけられるヒントはたくさんあった。これをもって良しとしたい。

 それを踏まえて以上二点、心に刻んで4月下旬の受験を迎えることとする。

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               ※目の検査の窓口

 朝からどんより曇り。いつもより15分早く家を出る。試験の順番は当日朝の受付順となるのだが、あまり早いと若い順番となり、あまり遅いと午後の試験となる。受付前の目の検査で運悪くモタつくとその間に他の人に先に受付を済まされ、午後に回ってしまう可能性もある。できれば午前で、それもなるべく後の順番に当たりたい。先の受験者が多いほうか試験の様子を見ることができるし、試験を終えた受験生たちから試験官のコメントを聞くことができ弾力的にその日の試験対策ができるからである。このように試験日の朝一番は違う意味で何かと神経を尖らせる一面もあるのだ。

 今朝のロビーは人が少ない。普通車の外人もいつもの半分くらいしかいない。今日は様子を見ながらおずおずと受付を済ませると受験番号は104つまり4番目でコースは変則の2コースとのことである。ハマ君、ダンプ嬢、前回ベルトを締め忘れた“ベルトマン”の顔が見える。早速コースを歩き出す。試験は前もって休みを取って臨んでいるが、今日に限って自分の職場はもう一人用事によりお休みで、なおかつ午後から手間のかかる仕事が控えている。今日も不合格ならばさっさと仕事に向かわねばならぬ。コースを歩きながらとなりの保育園は鯉のぼりがはためいている。もうじきゴールデンウイークがやってくる。

 9時半に車両が入ってくる。今日の試験官はかなり若いDさんという方。初めての担当でハマ君も“知らない”という。初めて当たる試験管から合格は出ないと小耳に挟んだことがあり早速ネガティブ要因だ。オリエンテーションでは重ね重ね中型免許の説明があり出席取りとコース説明ののち、ただちに試験開始。

 今日もお騒がせがひとり、1番目の受験生はコース間違えまくった上で方向転換のバック時に障害物に衝突するなどいろいろやらかしてくれるがコース完走。ハマ君は“今日の試験官優しそうですねえ”とポツリと漏らす。2番目はベルトマン、3番目はダンプ嬢、ここで自分はテント席へ。テント席ではどうも自分同様に急ブレーキによる流血騒動が試験官の知れるところになったからか、最近日本語とポルトガル語で“ベルトを締めて両手でバーを持つこと”と注意書きが張られるようになった。テント席でダンプ嬢の運転やいかにとキャビン後面の鉄柵に張り付いていると、D試験官がおもむろにこちらを振り向きガラスの向こうからジェスチャーで“棒を持って!!”と注意される。ダンプ嬢はかなりブレーキがカックン気味だ。本人も上手くいかんなあとばかりに首をかしげている。坂道発進の下り坂では以前の自分同様ギヤ選択を間違えギクシャクしてしまい入れなおす一幕もあった。

 さて、自分の番となった。前回ハマ君、大ちゃんと申し合わせたときと同様、クルマの後ろから回って乗り込み試験官に挨拶。“準備ができ次第発進してください”と説明の間、神業的早さでダイヤルを回しシートポジションを直す。手順どおりに発進。本線に出るまえに改めて“基本を踏まえたうえ、運転を楽しもう”と心がける。直線では“サーッ”と加速しカーブ手前で“スッ”と減速、もちろんポンピングブレーキだ。変速も“オレの車だ”とばかりにスコスコとスムーズに決めていく。ただ、外周から中の課題に入るときの安全確認や進路変更はきっちりこなし、脱輪や白線踏みがないかミラーでしっかり確認する。課題路では慎重を期すあまり“恐る恐る運転”にならないように自信を持っていつもより速度を上げてこなしていく。途中S字に入ってからD試験官が帳簿に何かチェックを入れた。何か見落としたらしい。またS字だ。ハンドルを握りながら軽く“チッ”と舌打ちしてしまう。2コースは鋭角進入や進出が多く比較的難コースだが、無事発着点に戻りD試験官のコメント。

“はい、ご苦労さまでした。S字に入るとき合図出して曲がる方に車線変更するでしょ?(交差点に進入する30mまえ、曲がる方に幅寄せする。これも車線変更という)S字の入り口は狭いから気持ちはわかるんだけど少し膨らんじゃったね。そこが残念でした。あと細かい所なんだけど、車線変更の合図(ウインカー)出すときと車線変更するときと2回安全確認するでしょ。非常によくできていましたが2回目の時のタイミングを早くするともっといいと思いますよ”との事。一礼し下車。後方よりホームへ戻る。

 まずなにより嬉しいのは試験官のコメントで初めて褒められたことだ。安全確認や進路変更の手順は参考書やWebの受験記でもしっかり書かれており、ついぞ声に出すことは無くなったものの確認手順は一応参考書どおりに今まで続けてきた。見てくれている人は見ているのだ。ただ、狭路進入の際の膨らみを指摘されてしまった。おそらく前回同様にこれがトドメとなり不合格であろう。しかし課題そのものの失敗は無く気持ちよく試験を受けることができたので充分満足であった。次回はもっと攻めた運転でいきたい・・。

 朝もそうであったが、今日は普通車の外人が非常に少ない。試験車は2台だけでそれも11時前後には試験が終わってしまう。自分の試験の後は交錯する車両もなく、交差点の左右確認は気を使わなくて済み、そういう意味ではラッキーである。のこりハマ君を含め午前中7人の試験を終えてロビーに戻る。今日はうすら寒いうえ小雨もぱらついている。最後まで発着ホームで試験を見ていたのはハマ君、ベルトマンと自分だけだった。

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              ※“技能合”のスタンプ

 ベルトマンは気さくな人で前回の試験で(4月初旬)シートベルトを付け忘れた話を屈託なく皆に話す。“C試験官は何も言わなかったの?”と聞くとベルト忘れは自分で気づいて自己申告したのだそうだ。そのときC試験官は“やっと気づきましたか~?アドバイスできないもんですみませんねえ・・。”と、ニヤッとしたのだそうだ。それを聞いた今日の受験生みなで“ヤな性格だなあー!”と、嫌悪感極まり声を合わせる。外人たちが振り向く。そのあいだ普通車と今日同時に行われていた二輪車の合格発表があった。

 午後から仕事が忙しいので、おそらく次回が最後であろう試験の日程を調整したあと速攻で仕事に戻りたい。スケジュール帳を手に待っているとしばらくして大型の合格発表となる。いつものように案内放送と同時にD試験官が受験票の束を手にカウンタ奥から現れる。そちらに向かいツカツカと歩み出すと、試験官が笑いながら“発表みてからだよ~”と電光掲示板を指差し笑っている。見ると、交通安全運動の標語からぱっと表示が変わる。

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       本日の合格者  大 型 103 .104  以 上
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 なんと、自分の受験番号が掲示されてあるではないか。にわかには信じられなかったが、合格したのだ。

 あっと驚き、もう一人の103って誰だっけと探し出す。これもサプライズでなんとダンプ嬢である。不合格だった他の面々に気遣い、ちょっと彼らから離れてから先ずは彼女を見つけ自然と 握手、ハイタッチ、抱擁の3点セットと相成った。6月の悪夢の免許制度改正まで試験一回分の猶予を残してようやく大型免許を手にすることができた。午後からは、けん引や大型特殊ならびに二種を除く大型車の運転が合法となる。ほんとうに良かった。気が抜けてしばらくそこに座り込んでしまう・・。

 ただ、ハマ君、ベルトマン達不合格組は本当に気の毒である。カウンターに集まり6月以降の試験の説明を受けている。おずおず話を聞くと次回の日程は5月末、本当のラストチャンスだ。D試験官は彼らに“6月以降でS岡へ受験に行こうと考えている人はいますか?”と皆に聞き、うなだれた彼らは苦笑して首を横に振る。“えー、試験場での6月以降の大型試験はS岡のC部免許センターで行います。技能試験合格の後、路上試験となり、これに合格しないと大型免許は交付されません。ただ同様の試験は公安委員会指定の教習所で今まで同様に行われますので皆さんの負担は大きくなっちゃうけどH松市でも免許取得できます”などと彼らに説明している。免許センターの試験はS岡に移管されるだけでなく試験車両が大きくなり路上試験も追加となるのだ。教習所でも路上検定とそこまでの教習時間分の教習費用の負担がこれまで以上に入校者に重くのしかかってくるであろう。

 また、これまでのS部免許センターの試験は今後も継続されるが、これに合格して与えられる資格は新設中型免許の限定解除だけということになる。まさしく悪夢である。仮に自分も不合格のまま6月を迎えた場合受験放棄もいくらか覚悟してはいたが、それまでの挑戦はまったくの徒労ということで、残るは悔いばかりである。手に届きかけていた獲物に逃げられる心境であろうか。まだあと一回彼らはチャンスがある。今まで共に頑張ってきた仲間である。健闘をいのりたい。

 さて合格の余韻に陶然としていると1回目の試験の時に試験官だったAさんが我々合格組を呼び“おめでとう、午後1時に2階の第一講習室に来てください”とそれぞれ受験票を返した。受験票には“技能合”“合格”の小さなスタンプが捺されていた。おずおずと見ていると“それ無くしちゃダメだよ、無くしたらまた最初から技能試験受け直しだからね”とおどける。そして彼女は有名人なのか、ダンプ嬢を見て“あれえ、受かったの!?おめでとう”と改めて労をねぎらっていた。

 やがて不合格組がとことこやって来る。特にハマ君は最初から顔馴染みなので残念そうである。自分はこんなプレッシャーの中にいるのは当分御免だが、彼らとの別れは大変残念であり、なおかつ心配でもある。そこで特にハマ君には今まで自分が勉強してきた参考書を進呈しアドバイスした。“普段4t乗っていて運転は上手いんだから、これ読んで基本の所だけさらっておけば大丈夫”と励ます。また他のメンバーにも“安全確認と進路変更と脱輪と白線踏みだけ注意してあとは自分のクルマ転がすつもりでやれば絶対受かるよ”と前向きにコメントする。そして正午になり解散となった。

 近くのコンビニで簡単に昼食を済ませダンプ嬢改めTさんと話をする。流暢な日本語を話すが実は日系ブラジル人で大型技能試験は3回目との事。今日の運転内容から推察して、いかなる理由で大甘採点があったかと勘ぐるが、話を聞く内に色々事情が判ってきた。彼女は来日時まったくの無免許であったため、合格屋を通じて本当に苦労してこのS部免許センターの試験で普通免許を取得された。その後、余勢嵩じてここで普通自動二輪を取得し、そして今回の大型受験に続けてチャレンジという訳なのだそうだ。いわばS部免許センターの“カオ”なのだ。試験官も安全協会の若い女性も気軽に彼女に声を掛けてくる。それで“次は大型二輪にチャレンジかな?”と聞いてみる。すると“ワタシは足短いからダメです。次ここに来れるジカンがあったら二種(タクシー、代行など)を取りたいですネ”とわらう。お住まいは(旧)D東町とのこと。

 いい機会なのでブラジルの運転免許制度について聞いてみる。ブラジル母国で免許を取得し来日した場合、やはり外免切替といって書類手続だけで日本の道路を運転できるのだそうだ。ただ、その切替が適応されるのは日本の普通免許だけに限られ、それ以外の大型などを取得する場合その外免切替から3年経たないと受験資格が得られないのだそうだ。カルロスなどはそのパターンであろう。今回言語や収入のハンディを乗り越えて免許取得に挑む多くの外国人を目にしたし、その中でこうして知り合いもできた。彼らは大変にまじめで自分が抱いていた偏見的イメージは変えねばならないと思った。少なくとも運転免許取得についての努力については脱帽ものである。Tさんは自分との話の合間、電話を掛けっぱなしである。試験を応援してくれた仲間に次々に掛け母国語で報告していた。

 午後から自動車学校卒業の若者に混じって2階の講習室にて免許証交付のためのオリエンテーション。そのあと写真撮影と進み、退屈で長い長いビデオ上映がある。この間に新しい免許証が作成されてくる。午後3時過ぎ、まだビデオ上映途中だったが、自分とTさんその他本日の技能試験合格者のみ呼び出されて新免許交付。すべての手続きが終わりとなった。Tさんと別れ、いささか夢心地でもう当分通うことは無いと思われるS岡県S部運転免許センターを後にする。職場のほうにはお昼の発表の後ですぐ合格の連絡を入れ、免許交付手続のため急遽終日有給に切り替える旨を伝えてある。3回目の受験時ここに憮然として会社の鍵を取りにきたN氏が受話器の向こうで“合格?合格?合格?”と何度も念を押していた。信じていないらしい。

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            ※試験コース案内の看板

1月の社内新年会に出席者の前にて、今思えば無謀にも「一発での大型免許取得」を宣言することほぼ足掛け5ヶ月、5回目にして想定外の法改正が刻々と迫る中、その期限内に大型免許を取得することができた。本音を言えばハデな取得宣言をして、なおかつこのようなレポートを作成してきた以上、6月の受験放棄へのシナリオなどとんでもないことだなあと内心暗澹たる思いであったが、なんとか体裁を保つことができた。職場セクションのメンバー及び費用援助を快く引受けて頂いた社長、また応援してくれた多くの方の多大な協力があったからなのだ。この場を通じて御礼を申し上げたい。

 最後に今回の貴重な体験を通じてみなさんもできる範囲内でいいから、自身で考えられる新しいことに挑戦する姿勢を持ってもらいたい。またそのチャンスは意外にも身近に転がっている。以上、筆者からのメッセージとしてこのレポートを終了したいと思う。

  通 算  平成19年2月初旬某日~4月下旬某日  大型一種技能試験5回目にて合格

    受験費用  受験手数料+車両代¥4.400円×5回=¥22.000円+交付手数料1.650円
      合計 ¥23.650円 

    付帯費用  コース図面¥30円×4枚=¥120円+汎用参考書購入費用¥1.050円
      合計  ¥1.170円

  総合計 ¥24.820円