【重要記事】原子炉「意図しない再臨界」が起こっているのか。





米新論文:「意図しない再臨界」が起こっているのか。




アジア太平洋ジャーナルは、今回初めての試みをした。福島第一原発の原子炉において
高い濃度の放射性物質を含む水が漏れたことに関連する重要な事柄を議論する科学技術

論文の掲載である。この論文が、汚染水の除去と作業員の安全確保という大変な課題を扱う

ものであり、私達は、日本の、そして世界の科学技術学会、日本政府当局、東京電力にこの

論文を提供したいという目的をもって掲載に到った。またこの論文の内容は、政府関係の書類や

報道では触れられていない危険性について論じており、一般市民やメディアにとっても重要で

あると信ずる。まずアージュン・マキジャーニー博士の解説文によりこの論文の扱う内容を明らか

にした後、F・ダルノキーベレス博士の論文を紹介する。(アジア太平洋ジャーナル)



解説文( IEER エネルギー環境研究所 所長  アージュン・マキジャーニー )



福島第一原発の3つのタービン建屋(訳者注:1号機から3号機のタービン建屋)の溜まり水の


高放射線の原因は、原子炉の炉心が損傷を受けている事であると広く理解されている。


これは炉心の損傷が進んでいる事と、配管システムに漏れが生じている事を始めとする数々の


問題を示唆しており、懸念が高まるのは当然である。しかし、1号機のタービン建屋の溜まり水に


塩素38という短命の放射線核種があることにはあまり関心が注がれていない。


この論文は、この物質の存在が深刻な問題、つまり、意図しない連鎖反応が1回か複数回起こっ


ている(技術的には「意図しない再臨界」と言える)ことの証拠になっているかどうかを検証する。


このような連鎖反応は、核分裂生成物とエネルギーの急速な放出をもたらし、その両方が損傷


を悪化させ、既に非常に困難な作業環境を更に悪化させる可能性がある。



塩素38は半減期が37分と短く、天然の塩素に4分の1ほど含まれる塩素37が中性子を吸収する


時につくられる。海水が冷却に使われたために、3つの原子炉全てに何千(何万)もの大量の塩が


ある。原子炉が本当に停止しているのなら、中性子の出所は一つしかないはずだ。


それはすなわち、原子炉が稼動しているときに作られ、炉心の中に存在し続ける幾つかの重金属


(訳者注:超ウラン)の自発的な分裂の事である。一番重要なものとして、プルトニウム2つ、


キュリウム2つの同位体がある。しかし、もし予想外の連鎖反応が起きているとしたら、ホウ素を


混ぜた海水で原子炉を完全に停止しようとする努力は、完全には成功していないという事になる。


断続的な臨界が起きているとしたら、いや、1回だけ偶発的に起きたにせよ、高い放射能をもつ


放射性核分裂生成物と放射化生成物が、原子炉停止後も(少なくとも1号機では)生成され続けて


いる(若しくは生成された)という事を意味している。それはまた、人に多大な放射線被害をもたらす


中性子の集中的な発生が、1度かそれ以上起きていたという意味であり、その仕組みが分り、もう


起こらないような仕組みを作らない限り、更に起こるという事である。作業員を安全に確保し、発生


している可能性がある中性子とガンマ線被爆を測定するための対策をとるべきである。



この論文での分析結果では、1号機の溜まり水から検出された塩素38の原因として考えられる


のは、自発的な核分裂だけなのかという事である。それしか説明として考えられないのであれば、


それほど心配する事ではない。しかし、この論文の分析では、計測された塩素38の濃度は、


自発的な核分裂が唯一の原因であるどころか、主要な原因でさえない可能性が高い事を意味


する。報告されている計測値が正確であると仮定すると、残された可能性は一つしか無い事に


なる。それは、1回かそれ以上の連鎖反応である。この論文は、安全策の更なる強化が必要


なのか、また、原子炉を安定させるための追加策が必要なのかという問題意識のもとに提示


している。また、福島第一原発における、悲惨で、技術的にも困難な核の危機の、科学的議論


の予備的分析を提供するものである。



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I.A. said... 再臨界がおこれば中性子線が検出されるはずなのに、東電からしばし発表がありません。


事故以来2度ほど中性子が検出されたのですが、正体はよく分かりません。このところ発表がないの


です。ことの重大性から隠し通せるようなものではないはずなのですが。また、数日前に、半減期が


大変短い放射性核種が見つかったという「誤認」事件がありましたが、もし短半減期の各種が見つか


れば再び核分裂連鎖反応が送った証拠になります。ここ数日、近隣での放射能汚染が突然大きくな


った経緯からして、4日ぐらい前に原子炉内部と外部がいっそうツーカーで通じるような何か異変が


なかったのかどうか、注意しています。

E.I. said... 論文全ては読んでいませんが、大体のところは読んでみました。著者はかなり厳密な

科学者であるようです(当然のことですが)。そして、様々な仮定のもとでの計算もそれほど難しいわけ

ではないが、正確にやっている。ただし、あまりにも仮定が多いし、計算の 根拠たる数値の正確さに

ついてはわたしには判断ができない。

結論部分: Cl-38がどこから来たかの推定で、どうも停止している燃料棒に使用中にできた

プルトニウームなどの自然崩壊でできた中性子 によるのではなく、核分裂(再臨界)によるものだろう

という推論は、重要でしょう。これはもちろんイントロとおなじだが。


意味不明の部分はこうです:核燃料は主にウランで、そのうち大部分はU-238、濃縮されてある

U-235が核分裂を起こすもの。さて,放射性Cl-38は、天然にあるCl-37 に中性子が作用してできる。

ということはこの問題の根本はこの中性子がどこから来たかになる。その源として二つの可能性がある。

(1)燃料棒が完全に核分裂が終わっているとすれば、燃料棒にある物質のうちで、自然に核分裂を

起こすので中性子を出す物質か、(2)燃料棒で、少し(?)核分裂が起った(再臨界)ためー核分裂が

おこると中性子ができる。この論文は、この二つの可能性のうちどちらが現実に近いだろうかの検討

です。そこで、先ず(1)を仮定すると可能性のあるのは、プルトニウームとウランの同位体である。

この赤線の部分は、そのことで、これらの重金属(単に重い金属という意味だが、ここではプルトニ

ウームとウラン)。ここで注意しなければならないのは、原発で使われるのは、主として、中性子をあて

て引き起こされる高速の核分裂(ウランー235)を制御して用いるもの、しかし、このように中性子を

あてなくとも、低速だが、自然に核分裂を起こすものも、燃料棒の中でできてしまう。それが、プルトニ

ウームなどである。いずれにしても、核分裂が起ると中性子が出来る。中性子というのは、電気を

帯びていない(だから中性子)なので、物質中の透過力が強いので、非常に危険である。