2012.7  NO.13  ょうしゅうりき と ょうしゅうりき

 プロレスラー長州力とエステーの消臭力。

 私はガチンコ勝負が好きなので、プロレスよりもプロボクシングが好きだ。とりわけ、キンシャサの奇跡(日本の競走馬名にもなった)と言われたアリとフォマンのタイトルマッチで下馬評を覆しアリが勝利したのには興奮した。昭和4910月末青梅街道を挟んで勤めていた新宿支店の斜め迎いのバッタ屋の店先でテレビ観戦していた(勤務時間帯のハズなんだが)。

モハメッド・アリの後はシュガー・レイ・レナードであり、今はなんといってもマニー・パッキャオだ。パックマンの異名をもつパッキャオは体重の壁を乗り越え名立たるチャンピオンを次々と打ち負かし実質10階級を制覇した。世界バンタム級の名チャンピオン長谷川穂積さんが2階級あげて苦しんでいるというのに。今やフィリピンというより全世界の英雄だ。しかし、先月10日のタイトルマッチで判定負けした。次々と番狂わせで強豪を打ち破ってきたが、今回は番狂わせで負けた(WOWOWで見ていて勝ったと思ったが)。負けた場合のリマッチが予め決められており疑惑の判定(本人達はガチンコだか、審判団が?)とも言われるが、一時代の終わりの始まりかもしれない。


私がプロレスを喜んで観ていたのは小学生で力道山が鉄人ルー・テーズやかみつきブラッシーと戦っている頃で終わり。ショーと割り切れば楽しいに違いない。あるいは体操の内村選手の演技を見るように超人技を堪能すればよいのかもしれないが、私は人間に幅がない。徳光アナや古舘アナの煽る実況中継も好きではなかった。

最近の人気プロレスラーをほとんど知らないし、その人のプロレスを見たことがない。武藤敬司さんはものまねタレント神無月さんで知った。高田総統もお笑いコンビのクリームシチューの有田さんの「出てこいや!」のものまねで知るところとなった。

 長州力さんも全然知らなかったが、切れてない!と長州小力さんのものまねで知ることになった。ただ、長州力さんは本当に切れやすいのか私生活で週刊誌に叩かれていた。

 プロレスラーとものまね芸人との関係は共生ともいえる良好な関係だそうだ。プロレスラーにとってもプロレスを見ない女性達にも知られるのでメリットがあるのだろう。

 プロレスそのものは好きではないというものの、貧弱な私はプロレスラーの肉体美や運動神経にはあこがれもある。高田延彦夫人の向井亜紀さんがなんとしてでも夫の遺伝子を後世に繋ぎたいとの執念も分かる気がする。


 少し前「らっららら」と甲高い声で歌い始め最後にショウシュウリキ!と絶叫する子供のコマーシャル(CM)が人気になっていた。子供といってもポルトガルのれっきとした歌手らしい。このエステーと役所広司さんや唐沢寿明さんなど大物俳優を起用したダイワハウスのCMが不況下目立っていた。

 昨年の大震災の前にはオール電化で攻める電力会社と受けて立つガス会社がCM合戦をしていた。不況下民間企業のCMが減っている中で基幹産業のCMが目立つので「そんな金があるなら公共料金を値下げすべし」と思っていたら、東日本大震災が起きた。基幹産業だけではなくほとんどの企業がCMを自粛してしまった。ACジャパン作成のCMが数ヶ月も続き、「・・・こだまでしょうか。いいえ、だれでも」は耳にタコが出来た。おかげで詩人の故金子みすゞさんも再脚光を浴びることになり、何が幸いするか分からないものだ。

民間企業はCMを自粛し、震災当初は民放局がすべて震災の特番でアナウンサーが腕のみせどころとばかりにアドレナリンを全開し競っていた。他人の不幸に・・・とまでは言わないが、ひねくれ者の私は不愉快な気分になった(阪神大震災の折故郷の神戸が壊れたのを見たくなかったし、好奇な目にさらされたくはなかった。だから壊れた東北の姿も見たくない)。俄か総NHK化に対し、民放こそが自粛し、NHKに応援に行けばいいではないかと悪態をつきたくなった。

世の中の動きや消費者の嗜好が分かるCMの自粛は長すぎた。かえって世相が暗くなり沈鬱になった。

 TVCMは民間企業の販促やイメージアップ手段には違いないが、暗い世相に勇気づけるものもある。私は取引銀行の支店に電話をかけ、桑田佳祐さんが歌う「月光の聖者達」(『・・現在(いま)はどんなにやるせなくても、明日は今日より素晴らしい。・・』)を使った銀行CMは今の世相にマッチしているので遠慮せずCMを再開してはと言った。

 

長らくの不況下広告収入が減るに伴い取材コストも抑えられ、ニュースもワイドショーの内容もみな似たり寄ったり。

 番組で毎週観たいと思うのはテレビ東京の土曜日番組「アド街ック天国」とその後の『美の巨人たち』ぐらい。BSにて映画やボクシング等を観ることが多くなり、以前よりCMを見る機会は減ってしまった。