言葉の物語
<魚ーうお・さかな・ギョ>
「ポク ポク ポク」 木魚の音。
なぜ「魚」なんでしょうが。
この木魚の元は、禅寺に下げられている魚版からと。
ならば、「魚版」はなぜ魚?
魚は目をつぶることがありません。そのため、魚は
寝ることが無いと思われていました。
この魚のように、寝る間も惜しんで修行せよとの、
教えが含まれていました。
水は万物の母。そこに住む魚は、その力を受け継
ぎます。
進化論にも合致した古人の英知に感心しますね。
胎児は羊水の中で、数百万年の進化を遂げるとい
います。
総合すると魚は創造、死と再生の象徴となります。
豊穣を祈る太母神の祭りでは、魚が供えられたと
言います。
日本の神棚にも、魚が供えられます。
ヒンドゥー教では、世界救済の神ビシュヌが洪水か
ら人類を救う際に、魚を乗り物とします。
金魚は水を司るバルナ神の象徴。
仏足跡にも魚が描かれていますが、これは
現世の欲望、執着からの解放を意味すると。
キリスト教美術で、食卓に魚があるのは聖餐を
意味します。
この場合の魚は、洗礼と不死、再生を意味して
いるとも。
再生は、ヨナが鯨に呑まれたが、吐き出されて
その腹から甦えった所から。
<救世主、イエス・キリスト>の頭文字を並べる
とギリシア語の「魚」の意味になり、イエスの象
徴となる。
古代ギリシア・ローマでは、魚は愛と豊穣のシン
ボルでヴィーナスの象徴。
また、海神ポセイドンの象徴でもある。
来世における新生を願って、アドニス祭りでは死
者に魚が供養された。
(参照:ジエーン・C・クーパー『シンボリズム』)
魚潰(ギョカイ)
魚がくさりくずれるで、敗戦の軍勢が乱れるさま。
魚貫(ギョカン)
魚を串で刺したように連なって進むこと。
魚眼(ギョガン)
魚の目玉ですが、玉によく似て、
まぎらわしい偽物のことを言う(=魚目)。
また、沸騰したお湯の大きい泡をいい、
小さい泡は蟹眼(カイガン)という。
魚獄(ギョコク)
いけすのこと。確かに魚にとっては牢獄ですね。
魚水(ギョスイ)
互いに離れられない仲。水魚の交わり。
魚雁(ギョガン)
手紙、または通信。
鯉と雁が手紙を運んだという故事から。
雁書と言う言葉は聞くことがありますね。
これは、伝書鳩と同じですね。
魚玄機
晩唐の女流詩人
女道士となり、後に侍女を殺して処刑された。
ふむ、興味が引かれますね。というところで
森鷗外も『魚玄機』という題で小説にしました。
この小説で知りましたので、実在の人物とは
思ってませんでした。
魚虎(ギョコ)
フグの仲間のハリセンボンのこと。
また、カワセミの別称ですと。
魚肉
魚肉ソーセージではありませんよ。
他人の思うままに切り殺されたり、
軽んじられたりするものの喩え。
魚竜
身を魚に変えたり竜に変えたりする変幻の術。
今日一日 幸運でありますように。
誤字脱字ご容赦ください。