ヤッホ～！帆足由美です。

今回は、先日観てまいりました

歌舞伎座公演、第一部の感想です。

『三月大歌舞伎』　第一部

「新・三国志」　関羽篇

三代猿之助四十八撰の内『新・三国志』。

市川猿翁が平成11年に初演し、

上演を重ねてきたスーパー歌舞伎です。

今回はそのなかから、「関羽篇」を上演しています。

中国の後漢末期の混乱期。

劉備、関羽、張飛の大志を抱く三人が巡り合い、

「桃園の誓い」を果たし、

「争いのない、人々が幸せに暮らす国」の実現に

邁進していく物語。

上に紹介したポスターにも大きく書かれていますが、

強く訴えているのが「夢見る力」。

このテーマの打ち出し方が、とても熱い！

そして、ひじょうにわかりやすい！

物語が展開するにつれ、

このテーマが強く深く心に刻まれていくのです。

冒頭では、「三国演義」の作者・羅貫中ならぬ、

中車さん演じる羅昆中(！)が、

コミカルかつ軽快な語り口で

三国志の世界をざっと紹介してくれます。

一気に三国志の世界に入り込めます。

そして始まる物語。

桃の花が咲き誇る舞台をせり上がってくるのが、

猿之助さんの関羽、中車さんの張飛、

そして笑也さんの劉備です。

なんと目に鮮やかな！

これから展開する物語が

いかに壮大なドラマかということを、

この出だけで示してくれるのです。

強く印象に残るのは、色、そして音。

登場人物が身に着ける衣裳の色で、

誰がどちらについているのか一目でわかり、

しかもその色使いが夢のように美しい。

加藤和彦さんが手がけた音楽も

フルオーケストラの演奏ながら

歌舞伎座の舞台に不思議となじみ、

唯一無二の世界を創り出していました。

さて、俳優陣。

猿之助さんの関羽は

颯爽として真っ直ぐで立派。

笑也さんの劉備は、

もとは玉蘭という女性であることを隠し、

大望かなえるために男性として生きている、

という設定ですのでとても複雑かつ繊細。

そして、得も言われぬ気品。

そんななか、中車さんの張飛は、

力強さの中にもコメディリリーフ的要素もしばしば見せ、

とてもいいアクセント。

3人のバランスの良さが際立ちました。

また、このお芝居、

３人を取り巻く人々もそれぞれ見ごたえが。

香溪役の尾上右近さんは匂い立つような艶やかさ。

このたび襲名の--も立派。

歌舞伎俳優に交じって舞台に立つ

浅野和之さんの曹操は

なんともニヒルな味わいがありました。

関羽の養子・関平を演じた團子くんは

とってもりりしく、

しっかり成長している姿を見られたのも嬉しかった。

しかし、何より心に響いたのは

このお芝居のテーマ。

「争いのない、人々が幸せに暮らす国」

はきっとできると思う

「夢見る力」。

古代中国の物語が、

こんなにも今の世界情勢とリンクするとは、

人間の愚かさ、成長のなさに

じつに情けないと思うのですが、

そういう思いに至らせてもらって、

よかった。

「夢見る力」を忘れずにいようと

思わせてもらえてよかった、

と思うのです。

『三月大歌舞伎』

３月２８日（月）千穐楽です。

今、観るべき舞台！「新・三国志」～『三月大歌舞伎』第一部～