将棋の藤井聡太叡王(竜王・名人・王位・王座・棋王・王将・棋聖=21)が同学年の伊藤匠(たくみ)七段(21)の挑戦を受ける、第9期叡王戦5番勝負第3局が2日、名古屋市の「名古屋東急ホテル」で行われ、後手の伊藤が藤井を破り、シリーズ対戦成績を2勝1敗とし、タイトル初奪取にあと1勝とした。藤井はタイトル戦で初の連敗、初めて先にかど番に追い込まれ、「全8冠防衛」の大ピンチになった。第4局は31日に千葉県柏市「柏の葉カンファレンスセンター」で行われる。

終局後、藤井は「終盤がかなり読めていなかったので、結果にも出てまった」と振り返り、「本局は難しい将棋だったが、中盤から終盤に入るあたりに、何か、手段があったかも。そのあたりで間違えてしまったのは課題が残る」と話した。

ともに02年生まれの同学年対決。第2局では伊藤に公式戦初黒星を喫した藤井は連敗すると、「8冠防衛」の土俵際に立たされるプレッシャーのかかる一戦。大一番で迷わず、エース戦法である角換わりで挑んだ。日本将棋連盟の戦型データによると、16年デビュー以来、藤井の先手角換わりは70勝9敗。8割8分6厘の圧倒的な勝率を誇る。

お互いの研究範囲だったのか、序盤からハイペースで指し手が進んだ。午後からは読みのぶつかり合いとなり、お互いが長考を重ねた。迎えた難解な中盤戦では、1歩も引かないハイレベルな攻防を繰り広げ、藤井が歩の連打から強烈な攻めを見せ、終盤にリードを広げたが、両者とも持ち時間を使い切り、1分将棋に。最終盤の攻め合いで逆転負けした。

絶対王者がエース戦法で惜敗。全8冠防衛に黄色信号がともった。第4局へ向け「やることは変わらない。しっかり準備したい」と気持ちを切り替えた。