お隣さん 大宮編です。







「……っ」


大野さんが  何かを 言いかけたけど

その影を 振り払うように  続けた。



「ワタシね、就職先…決まったんですよ」

「……あ、そうなんだ。 おめでとう!
…どこに?」

「前の会社の…同僚がやってる会社に  誘われて。…今のバイトも辞める事にしました。

……だから…」


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アナタを 笑って 送り出そう。


…なけなしの勇気を 振り絞るよ?



「アナタも…行ってください。
…お互いに  新しい  一歩を踏み出す時が来たんですよ」

「…にの?  何を言って…」

「アナタ 分かりやすいんですよ。
絵を描き終わって…道路工事の仕事も もう終わりでしょ?

……行くんですよね?」


大野さんは  ワタシから視線を外し

それでも 
絞り出すように答えた。


「…うん 描き終わったら…行くつもりだったけど…だけど…」


言い淀みながら…
ゆっくりと 視線をワタシに 戻す。


「あのさ、にの も一緒に 来てくれない?」


真っ直ぐ  ワタシに向けられた瞳に
思わず  決心が 揺らぎそうになる。


でも  それは …違う。


握った 手に 力を込めた。


「…何言ってるんですか。ワタシも 新しい仕事  頑張りますから。

大野さんは アナタの…
自分のやるべき事をやってください」



重い沈黙が 
ふたりを 包み込む。



「…にの の顔、この絵と 同じだな。

そんな、哀しい顔をしてんのに…
笑うんだ」


大野さんの顔が  切なげに 歪む。



あんなに…笑って送り出そうと 
そう  決めたのに。



…涙が溢れて 止まらない。



「………っ…」


慌てて 背けた  ワタシの顔を
大野さんの 掌 が 優しく包む。


ふたりの間が 近づいて

大野さんの唇が…そっと涙を  拭った。




「…愛してるよ。にのを…愛してる」

「うん…」




『愛してる』 

…嬉しいハズの  この言葉が
こんなにも 切なく 響くなんて。


瞳を閉じると  
引き合うように  唇が重なった。


…あと  どれだけの間
アナタと居られるのだろう。

それを考えると  
胸が 締め付けられるように苦しい。


でも、今を…

愛していると 言ってくれた
この時を  大切にしよう。


背中に回された  
この手の温もりを 忘れない。


空が白むまで

寄り添い
ただ  触れるだけの  キスを

ワタシたちは…何度も 繰り返した。



 
続く

2015.4.20   miu


お話の 時系列でいくと、この後に


Neighborly love 〜旅立つ日まで〜
に続いてます。


そして、Neighborly love  大宮  21   に帰ってくるんだよね。

分かりにくくてゴメンなさい。
m(_ _)m