昨日から続く・・・。
相手チームの投手は、流石に強豪チームでエースを任されるだけあって
綺麗なフォームから伸びのある速球を投げ込んでくる。
しかし、ター君は余裕を持って打席に立ち、トップバッターらしくバントの構
えで相手を牽制しながらカウントを整えていた。
もし、今までのター君だったら緊張でガチガチになるところだが、先日、今
まで経験したことが無い程緊張する修羅場をくぐっているので、一皮むけ
たのだろう。
時間を先日の試合のサドンデス裏に戻してみる・・・。
7月9日に行われた大会の2回戦はサドンデス裏に突入した。
表に大量の7点を奪われ敗色ムード濃厚の時、新監督は選手全員を集め
て策を与えた。
前の回ター君の前の打者で終わっているので、満塁で最初に打席に立つ
のはター君だ。
「満塁の初球、ヒットエンドランをする。
○○(ター君)、初球お前が空振りしたら終わりだ」
ター君の顔が緊張でこわばり、見る見る青ざめていくのがわかった。
そして、自信無げに首をかしげていた。
それを見た監督は言った
「ダメならダメと言え、交代させるから」
その言葉で目覚めたのか、ター君は意を決した様で
「大丈夫です。やります」
と応え、バターボックスに向かって行った。
ター君は何かを呟きながら必死に自分を落ち着かせていた。
そして、バッターボックスに立ち「行くぜー!」と雄たけびを
あげた。
プレイボールがかかり、相手投手のモーションが始まった時、走者は一斉
にスタートを切った。
投げられたボールが外角に入ってきた。
ター君がそのボールに食らい付く様に振りぬくと、打球はレフト線にライナ
ーで飛んでいき、ギリギリラインの内側に入った。
「ヤッター!」
ベンチと観客席から一斉に歓喜の声が上がった。
3塁と2塁に居たランナーはホームイン。1塁ランナーも3塁に到達した。
打ったター君は楽々2塁まで行ける打球だったが、極度の緊張から開放さ
れた脱力感からか、1塁に留まったままだった。
そしてベース上で大きく深呼吸をすると、メンチに向けて笑顔でガッツポーズ
を送っていた。
この試合はそのまま敗戦となったが、ター君にとっては素晴らしい経験とな
った。
話を元に戻し、最後の大会の1回表、トップバッターのター君。
カウントはバッティングカウントの1-2。
4球目が投げられ、ター君はそのボールに向かっていった・・・。
つづきは明日・・・。