『プロフェッショナル仕事の流儀 庵野秀明スペシャル』 ネタバレの感想 | アンパンマン先生の映画講座

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 3月8日(月)に公開された『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の制作過程を追った『プロフェッショナル 仕事の流儀 庵野秀明スペシャル』が3月22日(月)に放送され、非常に興味深かった。

 冒頭で、宇部駅構内をビデオカメラを持って駆ける庵野が映し出される。もちろん映画の最後の場面の素材撮影である。BGMがエヴァの曲だったり、画面の字幕がエヴァで使われた字幕に似ていたりと、エヴァンゲリオンを意識して製作していたのにも興奮した。

 最初のナレーションが「密着を始めて暫く、私逹は悟った。この男に安易に手を出すべきではなかった」と恨んでいる様子。さらに「それは苦行のような日々の始まりだった。密着は伸びに伸びて、番組史上最長の4年。類を見ないものとなった」と続く。取材はかなり苦労したようだ。

 まず、庵野はスタジオに来ない。会議に出ても「分からない」ばかりで明確な指示がなく、スタッフは何をしたらいいか困り果てている。画コンテの代わりにプレビズを使い、俳優に演じさせていたのは興味深かったが、撮影を任されたスタッフは、どう編集したらいいか困り果てていた。さらに、Aパートだけではなく、Dパートの脚本まで書き直しして、かなりスケジュールが押していた。スタッフが「過去最大級にやばいんじゃないですかね」と言うくらいギリギリの状況だった。

 おまけにNHKのカメラマンに「僕ばかり撮るのではなく、困っているスタッフ達を撮った方が面白い」と注文まで付ける。庵野が来ないので、スタッフが困っている場面を撮っているのを知らないだけでは?と思った。

 ただ、庵野は映像のプロだけあり、このドキュメンタリーを面白くしようとしているのは分かる。熱海合宿の時、取材カメラマンに「インサート用に大雨を撮りなさい」とアドバイスしているのは感心した。 カメラマンは助言に従って、ちゃんと大雨の場面を撮っていた。「アニメはアングルが肝」の言葉には感銘した。カメラマンもアングルにこだわるようになった気もする。飲み屋の場面はテーブルにカメラを置いてあおりになっていた。会議を上から固定カメラで撮った場面もあった。ひょっとしたら、このカメラマンは撮影や編集の勉強になったのでは。

 第3村の模型。プレビズの俳優の演技。アフレコの「分からない。綾波レイならどうするの?」の台詞。シンジの心理描写のトンネル。寄り引きが全部逆と言っていた8号機の戦闘場面。線路で寝ている猫など、映画を見ていれば「あっ、ここだ」と言う場面が沢山出てきたのも楽しい。

 庵野は「自分の命と作品を天秤にかけたら、作品の方が上なんです」と言う。作品を面白くするためにとことん考え、身を削る姿勢に感心した。だから『シン・エヴァンゲリオン』は感動するのだろう。映画を見た人も、これから見る人も、このようにして撮影したのだと分かり、非常にためになると思う。

 ところで、2020年6月27日公開予定が新型コロナ感染症で、2021年1月23日(その後3月8日)に延期になった。でも、映画の完成が2020年12月17日だった。つまり、当初の6月27日の公開延期はコロナのせいではなく、完成していなかったためだったの?