こんばんは。先日の答えは『うちわ』でした(笑)
今日のは少し長いです!どうか最後までお付き合いください。よろしくお願いします
。
ー君が残した思いー
『あなたがいるから、私はいるのよ』
そう彼に言ったのは、
二限目の現国の授業が終った後のことだった。
彼がやって来たのは、
鈴蘭が咲き誇る、学生たちも
ようやくクラスに溶け込んでこれた四月の下旬のことだった。
私は彼の面倒を見るためにここにいる。
それはまるで、
シェイクスピアの作品マクベスの様に
運命的なことであった。
代々、私の種族ではそう望まれて生まれてきた。
『私たちは同族。彼らが存在するから、私たちも存在するのよ。理由なんてものはない。ただ、運命なのよ』
そう言い残し、彼女は消えていった。
そう、これは運命。
私たちは逆らうことは出来ない。
でも、存在は消えたくない。
誰でも消えるのは怖い。
少なくとも、私はとても怖い。
徐々に消えていく存在を
目の当たりにして、いつも怯えている。
それが今日なのか、明日なのか、と。
私たちには掟がある。
『感情を作るべからず。』
これは我々の掟である。
感情がないから、我々は存在している。
唐突に校舎が轟いた。
チャイム。
私はこのチャイムが苦手である。
授業が始まるぞ早く席につけ、と校舎が威張っているように聴こえるからだ。
私は先程まで考えていた恐怖をなぎ払い、二限目の現国の授業に集中した。
授業が終わると、私は彼のもとへ向かった。
どうしても伝えたくて、
存在理由を、
確めたくて彼のもとへ向かった。
『少しいいかしら』
たぶん、声が震えていた。
鼓動は高鳴り、彼に聴かれてしまっているのではないか、とそんなことを考えながら話しかけていた。
『あなたですか。何用でしょうか?』
彼の言い方はまるで、紳士のように気品があった。
『対したことは、ないんだけど、私は』
言葉が喉で停滞してしまった。
私は聴きたい。
彼に言いたい。
なんで。なんで私は。
『どうかされましたか?』
彼は私を心配そうに覗きんでくる。
彼は悪くない。
悪いのは、こんなルールを決めた人間なのだから。
でも私は。
『あなたがいるから、私はいるのよ』
でも、
私はやっぱり、変わることは出来ない。
『私は見ての通り。そろそろ、消えるわ。でもね、これがまた誇りなの。わかるかしら?あなたたちがいるから、私たちは存在するの。つまりね。あなたたちが、私の存在理由よ。でもね、これだけは言わせて』
彼は口を挟まないでただ、静寂を保ちながら話を聞いている。
私は大きく息を吸い上げた。
『怖いの。ただ、存在がなくなってしまうのがたまらなく怖いの。孤独に消えていくのがとても怖いの』
私は彼女を思い浮かべていた。
消えていく彼女を私は見ていることができなかった。
それが、どんなに残酷であったか思い知らされた。
彼は私が言い終えると、ただ頷いていた。
迷惑だったのかもしれない。
そう思い、私は彼からそっと離れていった。
それから何日か時が流れ。
いつの間にか五月の中旬となっていた。
とうとう、私も最期の時がカウントされてきた。
私の代役が、昨日やって来た。
その日の晩。彼はそっと私の隣にやって来た。
『少しいいですか』
紳士な彼は私を訊ねた。
『何かしら?』
私はできるだけ、平常心を装って返事をした。
『ずっと考えていたんですけど、僕も。僕もあなたがいるから、僕がいるんです』
彼はひたすら真っ直ぐな眼差しは私を捉えていた。
『僕が来た日のことを覚えてますか?
僕は今でも覚えています。
あなたに初めてあった日を。
鈴蘭がとても綺麗でした。
それも覚えてます。
僕はあなたを尊敬していました。
先日、あなたは存在理由について問いましたね。
僕はそんなこと考えたことがなかったから、答えを出せませんでした。
それは今でも、答えは見つかりません。
でも、僕は思うんです。
人間は存在が終われば墓を残し、
存在を残します。
しかし、動物はどうですか?
墓なんかないんです。
存在を形としては残すことが出来ないんです。
ならどうしているのかと言うと、
存在を覚えていてくれる仲間がいるんです。
動物たちは、仲間が、
仲間の心が存在を残しているんです。
我々も、そうするべきなんです。
僕はあなたを忘れません。
僕にあなたの存在を残させてはくれませんか?
僕はあなたを忘れません。
いや、忘れたくないです』
彼はひたすらまっすぐな眼差しで私を捉えていた。
私は声を出すことができなかった。
ただ何も言わず、
どこからか流れてくる
暖かい水滴を感じながら、
うん、
と頷いた。
『知っていますか。
鈴蘭という花を。
とても小さくて可愛らしい花なんです。
しかしですね、この花には、
毒があるのです。
だから、
動物たちには食されず残されるらしいです。
その事から花言葉は
「意識しない美しさ」
とも言われているんです。
僕はあなたがこの花にとても似ていると思うんです。
僕にはそう感じました』
次の日、
私は代役の彼女に前の彼女が言っていたようなことを言いました。
そして、存在を残せる誰かを見つけるようにと言いました。
私は消えてしまっても、
誰かが私の存在を残してくれる。
もう、恐れることはない。怯えたりしない。
私は消えない。
彼が私の存在を残してくれるから。
Question
私と彼は何でしょう。
今日のは少し長いです!どうか最後までお付き合いください。よろしくお願いします
。
ー君が残した思いー
『あなたがいるから、私はいるのよ』
そう彼に言ったのは、
二限目の現国の授業が終った後のことだった。
彼がやって来たのは、
鈴蘭が咲き誇る、学生たちも
ようやくクラスに溶け込んでこれた四月の下旬のことだった。
私は彼の面倒を見るためにここにいる。
それはまるで、
シェイクスピアの作品マクベスの様に
運命的なことであった。
代々、私の種族ではそう望まれて生まれてきた。
『私たちは同族。彼らが存在するから、私たちも存在するのよ。理由なんてものはない。ただ、運命なのよ』
そう言い残し、彼女は消えていった。
そう、これは運命。
私たちは逆らうことは出来ない。
でも、存在は消えたくない。
誰でも消えるのは怖い。
少なくとも、私はとても怖い。
徐々に消えていく存在を
目の当たりにして、いつも怯えている。
それが今日なのか、明日なのか、と。
私たちには掟がある。
『感情を作るべからず。』
これは我々の掟である。
感情がないから、我々は存在している。
唐突に校舎が轟いた。
チャイム。
私はこのチャイムが苦手である。
授業が始まるぞ早く席につけ、と校舎が威張っているように聴こえるからだ。
私は先程まで考えていた恐怖をなぎ払い、二限目の現国の授業に集中した。
授業が終わると、私は彼のもとへ向かった。
どうしても伝えたくて、
存在理由を、
確めたくて彼のもとへ向かった。
『少しいいかしら』
たぶん、声が震えていた。
鼓動は高鳴り、彼に聴かれてしまっているのではないか、とそんなことを考えながら話しかけていた。
『あなたですか。何用でしょうか?』
彼の言い方はまるで、紳士のように気品があった。
『対したことは、ないんだけど、私は』
言葉が喉で停滞してしまった。
私は聴きたい。
彼に言いたい。
なんで。なんで私は。
『どうかされましたか?』
彼は私を心配そうに覗きんでくる。
彼は悪くない。
悪いのは、こんなルールを決めた人間なのだから。
でも私は。
『あなたがいるから、私はいるのよ』
でも、
私はやっぱり、変わることは出来ない。
『私は見ての通り。そろそろ、消えるわ。でもね、これがまた誇りなの。わかるかしら?あなたたちがいるから、私たちは存在するの。つまりね。あなたたちが、私の存在理由よ。でもね、これだけは言わせて』
彼は口を挟まないでただ、静寂を保ちながら話を聞いている。
私は大きく息を吸い上げた。
『怖いの。ただ、存在がなくなってしまうのがたまらなく怖いの。孤独に消えていくのがとても怖いの』
私は彼女を思い浮かべていた。
消えていく彼女を私は見ていることができなかった。
それが、どんなに残酷であったか思い知らされた。
彼は私が言い終えると、ただ頷いていた。
迷惑だったのかもしれない。
そう思い、私は彼からそっと離れていった。
それから何日か時が流れ。
いつの間にか五月の中旬となっていた。
とうとう、私も最期の時がカウントされてきた。
私の代役が、昨日やって来た。
その日の晩。彼はそっと私の隣にやって来た。
『少しいいですか』
紳士な彼は私を訊ねた。
『何かしら?』
私はできるだけ、平常心を装って返事をした。
『ずっと考えていたんですけど、僕も。僕もあなたがいるから、僕がいるんです』
彼はひたすら真っ直ぐな眼差しは私を捉えていた。
『僕が来た日のことを覚えてますか?
僕は今でも覚えています。
あなたに初めてあった日を。
鈴蘭がとても綺麗でした。
それも覚えてます。
僕はあなたを尊敬していました。
先日、あなたは存在理由について問いましたね。
僕はそんなこと考えたことがなかったから、答えを出せませんでした。
それは今でも、答えは見つかりません。
でも、僕は思うんです。
人間は存在が終われば墓を残し、
存在を残します。
しかし、動物はどうですか?
墓なんかないんです。
存在を形としては残すことが出来ないんです。
ならどうしているのかと言うと、
存在を覚えていてくれる仲間がいるんです。
動物たちは、仲間が、
仲間の心が存在を残しているんです。
我々も、そうするべきなんです。
僕はあなたを忘れません。
僕にあなたの存在を残させてはくれませんか?
僕はあなたを忘れません。
いや、忘れたくないです』
彼はひたすらまっすぐな眼差しで私を捉えていた。
私は声を出すことができなかった。
ただ何も言わず、
どこからか流れてくる
暖かい水滴を感じながら、
うん、
と頷いた。
『知っていますか。
鈴蘭という花を。
とても小さくて可愛らしい花なんです。
しかしですね、この花には、
毒があるのです。
だから、
動物たちには食されず残されるらしいです。
その事から花言葉は
「意識しない美しさ」
とも言われているんです。
僕はあなたがこの花にとても似ていると思うんです。
僕にはそう感じました』
次の日、
私は代役の彼女に前の彼女が言っていたようなことを言いました。
そして、存在を残せる誰かを見つけるようにと言いました。
私は消えてしまっても、
誰かが私の存在を残してくれる。
もう、恐れることはない。怯えたりしない。
私は消えない。
彼が私の存在を残してくれるから。
Question
私と彼は何でしょう。