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       season5

      episode8

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朝9時から出勤して18時退勤。

4連勤の4日目であったが

目にするエンジェルナンバー

2222の嵐に

背中を押された野根澄しそ美。


もう何年ぶりかもわからない

元旦那との2人きりでの外食に

1時間後の待ち合わせ。


帰宅してササッとメイクを直し

パッと家を出た。

(ご飯をご馳走になるだけ。)

そして話せる雰囲気ならば

(家の相続税のことまで話そう。)


そんなマジな事まで

織り込みながら

(わたしはわたし。自信を持て!)

と言い聞かせて

お店に着いた。


19:30の駅前の繁華街は

同じ近所でありながら

しそ美には

似合わない空間だとすぐに察した。


元旦那の行きつけ?らしい

そのイタリアンのお店は

忘れていたが週末土曜日の

開放感溢れる酒場、となっていた。


敏腕プロデューサーみたいな

服装の元旦那が座っていた。

「どうも~」と言いながら

しそ美が座ったとたん、


「ご褒美だ」と言われた。


???


「娘たちを育ててくれているご褒美だ」

「好きなのいっぱい食え」

と言われた。


(いや、そんなつもりじゃないんだけどな…)

よく分からない展開に

メニューを見せられるも

そんなに食べたいものが無くて、


そして前菜だの

バーニャカウダーだの

1品1品値段がみんな高くて、


それと

何を勘違いしてるんだか

「食え」と言われることにも

何だか無理で、


「わたし、スパゲティでいい」

と言った。


やたらゲラゲラと笑う元旦那は

もう既に飲んでいて

「俺酔ってるから!笑」と言った。

スパスパ吸うタバコにも

「お母さん!ハイボール!」

と店員に言う慣れた感じにも

(…なんかヤダなあ)と嫌悪感。

結婚していた時には

見たこともない姿だった。


そして

先日娘らと買い物に行った話や

仕事中の笑っちゃう話を聞かされて

その後「しそ美は?」と

やたら下の名前で呼ばれながら

質問をされるも、

しそ美が話出すと聞いてない 笑


(酔っ払っい嫌いだわ…)

心の中の採点が

望んでいないのに数字を叩く。


そしていきなり顔を覗き込んで

「お前団子っ鼻だなー😆」と

言われたあと、

「お前幾つになった?」

「誕生日いつだっけ」と言われた時、


しそ美の中の採点がもう

底を尽き

(…もう、人として、無いなー)

と思った。

誕生日いつだっけ?には笑う。

昔誕生日を忘れられて

泣きながら1人コンビニで

ゼリーを買いに行った

切ない過去を思い出す。


けれどもそんな感情も

今となればどうでも良く

面倒臭くなり、

違う話に変えようと

車が壊れた話をすると

「俺が車買ってやろうか?」

と元旦那は言った。

「車検も全部俺が出すからお前は保険だけ毎月払え」

「いい話だろ?俺はたまに乗るだけだからお前の家の駐車場に置いといていいよ」


しそ美は何だか

この男の考えていることが

理解できなくて、

境界線がまだ引けていないことを

痛感する。


(この車の話、絶対乗ったらだめだ)

しそ美の中の

危機管理能力が働いた。


「お前にとっていい話だろ?」

と笑う元旦那に

「わたし、自分で頑張りたいから要らない」と言った。

「自分でいつか買う」と言った。


一瞬、怪訝そうな顔したが

「あっそ!ならいいや」と言われ

話は終わった。


もう、タバコの煙が臭くて臭くて

この環境にも慣れていなくて

そんなに美味しくもない料理を

何とか食べ終わると

「そろそろ帰ろ」と

しそ美が言った。


すると元旦那は

「一緒に帰ろっか!」と言う。

この線引きの緩さに

怖さを感じたが

店を出ると元旦那は

まっすぐ歩けなかった。


「いい大人なんだからさ、ヨタヨタするまでお酒飲むの辞めたら?」

そう言うと

「もっとゆっくり歩いて!」と

言われた。

「仲良く帰れるなら歩いて帰ろ?」


「いや、仲良くじゃなく、普通に帰ろ」

しそ美が言うと

よたついて車道に飛び出そうになる

元旦那にまた怖くなる。

(危ない、ケガするよ!)と

怖かった。


独身男としてお金の余裕は

出来たのかもしれない。

だけど、この人に

誰かを守る力は無いと感じた。

それはヨタヨタと

酔っ払っているからじゃない。

心の問題だ。


そして元旦那は言った。

「歩いて帰ってお前ん家でトイレ借りて子供達の顔みて帰るから家まで送って!」

182cm90kgの男が道端で叫んだ。


淋しいのかもしれない、

だけど、男としてどうなの??

あんた送ったら帰り

わたし夜道1人じゃないのよ 笑

しそ美はつくづく思った。

男は背じゃないってこと。

そして、、、

しそ美の誕生日を忘れるこの男は

ツインレイでは無いってこと。

そして

0:00にHappybirthday!!!しそ美、と

送ってきた田貫登真斗のこと…。


もう、若かったあの日々は

完全に終わったんだなと思った。

元旦那には元気で幸せでいて欲しい、

それも心から思った。

だけど隣にはもういたくない、

いられない、

それはわたしじゃない、とも思った。


縁はもう、切れていると思った。


登真斗、

登真斗は今どうしてる?

わたしを思い出すことはある?

奥さんと、子供達と、

仲良く幸せに暮らしてる?


どんな状態だとしても、わたし、

やっぱり登真斗が大事だ…。


登真斗との連絡を断って

1ヶ月が経った。

"Happybirthday!!!しそ美"  という

0時ちょうどの登真斗からの

誕生日のメッセージを

しそ美が3週間未読スルーして

そのあとはもうお互いに

連絡をやめた。


しそ美は時に不安に押しつぶされ

淋しさと恋しさを感じても

今は我が事に真っ直ぐに

向き合いながら人生を創っている。


これからどうなっていくのか

さっぱりわからない人生だけど、

色々な切なさや

愛だけでは無い想いも

感じながらの人生だけど、

登真斗、あなたとはやはり

どこかで繋がっている気がしてるよ。


登真斗を想って切なくなるのは

どうして私達

夫婦じゃないんだろう

という絶望と

どうしてあなたは

他の人の旦那さんなの?

というやるせなさと

どうしてわたしを選んでくれないの?

どうしてこのままでいいと思うの?

どうして行動してくれないの?

どうして勇気を出してくれないの?

という、


結局

どうして離婚してくれないの?

になり、

早くわたしを迎えに来てよ!、

という自己中な望みに辿り着くから

嫌になるんだ。


どうしても結局

それを望む自分が嫌で

登真斗から距離をとった。


今頃どうしてるのかなと思う時は

たいてい登真斗は

のほほんとしてるから

その温度差も嫌で

もう考えないようになった。


とにかく今は

自分の今を頑張ろうと思う。

しっかりしようと思う。

最善を尽くそうと思う。

そんなわたしでいたいと思った。


エンジェルナンバー222の嵐は

そんな決意を

しそ美に教えてくれた夜だった。*∅


2024.7.14

道照月子

~season5episode9へ続く~