田舎暮らしを始めたのは、娘が4歳、息子が1歳の頃。

元気一杯でじっとしていない娘と、病弱で泣き虫の息子。
東京では、出掛ける時、騒がしくして周囲に迷惑をかけないか、いつもピリピリと気を使っていたと思う。


私たち家族が引っ越したのは、JRも通っていない過疎化の進む村。
近所のおばあちゃんが
「子どもの声がするって、嬉しいね~」
と言って、畑で作った野菜を沢山持ってきてくれた。
その言葉がとても嬉しかった。


素晴らしい生活だった。
家の周りは何もなく、子ども達は野山を駆けずり回って遊んだ。
蛍を見たのも、私には初めての事。
夏には近くの川で泳ぐ。
川で獲れたての鮎や川エビをいただく贅沢。
温泉があり、毎晩、温泉に入りにいくと、おばあちゃん達が子どもにお菓子をくれたり、お話したり、村中みんな仲良しだ。

私たちも、近所の方々に教えてもらい、畑で野菜を作ったり、田んぼでお米を作ったりした。

夫は林業に就いており、本物のモミの木を山から運んでくれて、クリスマスツリーを飾ったこともあった。

自然が、優しい田舎の人々が、子どもを、私たちを育ててくれた。


ずっと田舎で暮らしていても良かったのだけど、その村には高校がなく、色んな事情もあり、3年前に私たちは東京へ戻ってきた。


10年の田舎暮らしで私たちには故郷ができた。