- 藤田 雅矢
- 蚤のサーカス
- 小学6年生のたかしとあげはは昆虫が大好き。二人の住む町に「蚤のサーカス」がやって来るという話を聞いた。そこらへんに飛んでいる蚤を訓練して、縄跳びや曲芸をさせるという。ぜひ行きたいと思った二人は金策にかけずりまわり、チケットを手に入れた。すばらしい蚤のサーカスを見終わった二人は団長に会いに行った。そこで毒蚤にさされ、解毒剤が欲しかったら横浜に来て弟子になれ、と言われる。
第7回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞した方の作品です。受賞作が見つからなかったので第2作目を読んでみました。
優秀賞受賞作は「糞袋」。ちょっと読む気が失せるような読みたくなるような複雑な気持ちです。これも「蚤のサーカス」でわずかばかりためらいました。
とてもおもしろかったです。
実在しない(はず)の蚤がたくさん出てきて、それを上手く使っています。毒蚤、スパイ蚤、蚤は万能です。
実在しないよね?しないよね?と少々ビビりながら読みました。こんなんいたら怖い。
この本がほとんど虫、虫、虫だらけです。
しかし虫嫌いの私が読みきることができたので、普通の人は平気だと思います。
たかしは蟻が特に好きで、あげははダンゴ虫が特に好きなのです。
生活の様子もこと細かく描写してあります。
横浜に行く旅費を稼ぐのにも、珍しい昆虫の標本を作って買い取ってもらう方法を選ぶし、小説中が虫で徹底されているところがすばらしい。唯一違うのはミイラですが、あれも別で効果を生んでいます。
やはり虫で始めたからには、最後まで虫でなくては。
途中まではストレートな話だなあと思っていました。団長に会いに行くまでの中学生に上がった二人の生活がメインに描かれていたからです。大阪万博の話が延期して食糧不足になったという架空の設定で進められました。食料も虫などで補う生活です。
が、終盤急展開。意表に意表を突かれ、最終的には切ないようなちょっと幸せのような。
最終場面、一つだけ無理があるかなと思ったところがあるんですが、そんなものまあいいや。
結末がいいし、虫だらけの小説でも怖気が立たなかったし、蚤の発想もおもしろい。とにかくよかった!