目が覚めると、馴染みのある病室だった

頭には大袈裟に包帯が巻かれて腕には点滴の管。

久し振りに感じる病院の匂い

あ〜…ぁ

このまま入院なのかな…

また翔君に迷惑かけちゃう



"トントントン"


智「…はい」

松「おう、目が覚めたか」

智「松兄ぃ…」

松兄は丸椅子を持って来てベットの側に座った。
きっと…お説教だ…

松「なぁ…智。
俺ね、初めてお前を見た時さ…シャーシャー威嚇してくる黒猫に見えてさ…それも子猫な(笑)
お世話になったご夫婦に恩返しがしたいからと自分からやって来たくせに震えながら威嚇してくる子猫。
あの頃のお前は…全てを諦めたような目をしてた。
でも…海斗が産まれ、櫻井君と結婚して本当に幸せそうにしているお前を見ていてな…柄にもなく俺は泣きそうになるんだよ…」


髭の口元をキュと上げて鼻をスンと一つ鳴らした

松「それはそうと

海斗は心配ないから安心しろ。


安心出来ないのはお前。

どうして…素直に櫻井君に甘えないんだ?
彼や…俺達を信用できないか?」


智「そんな事!そんな事ない!!…ただ、翔君は心配性だから…翔君の負担になりたくないんだ…松兄や松潤にだって…いつも無理な事をお願いしちゃう…」


松「じゃあ…聞くが、もし櫻井君が今、深刻な病気を患っているとしたら…お前はどうする?」


智「え‼︎…翔君…病気なの?ねぇ、ほんとに?どんな病気なの?治るよね?」

松「落ち着け。例えばの話だ。
例えば…櫻井君がお前には言わず大病を患っているのを後から知ったら、お前どう思う?」

智「そんなの…ヤだよ…ちゃんと教えて欲しい」

松「だよな?彼も同じだよな。
お前は彼に心配をかけないように黙っているのだろうがな…そうする事で彼を逆に苦しめているんだ。"どうして頼ってくれないんだ" って」

智「そんなつもり…ないもん」

松「分かってる。櫻井君もちゃんと分かってくれている。
けどな、遣る瀬無い気持ちにはなると思うぞ」



それにな…

「海斗がお前の "声" を必死に探している事にも
気付いてるぞ」



松兄がカイに気付いていた事にも驚いたけど
翔君も分かっていたなんて…

何にも分かっていなかったのは

僕だ…


僕は…何をやってるんだろう…

皆んなに心配をかけないようにとしている事が逆に沢山の人を不安にさせていただなんて…


僕は...ダメだなぁ...