長瀬の漁船とは違って、どちらかというとクルーザーだな…どこぞのボンか…

船が横付けされた事に相手は当然、気付いてはいるだろうが…出来るだけ静かに船に乗り移り先を目指す

予想では直ぐに見つかり一揉め位の覚悟をしていたが…誰も来ない
相手が何人でどんな奴かも分からないのに俺も後先考えての行動が苦手らしい

操舵室…というのか?操縦する場所を覗くと海斗が…毛布の上に寝かされていた

怪我はない…顔は少し赤いから平熱とは言えないのだろうが、見た限りでは緊急性はなさそうで胸を撫で下ろす

話し声が聞こえる

少しだけ先に進むと…



いた…



男の後ろ姿しか見えないが
その先には

床に……手を付いて蹲っている智





ふざけやがって…

何をさせてやがる





「なんでもしてくれるんだ…?なら、裸になれよ。
見せてみろよ…アンタの体、珍しいんだろ?」




俺は…海斗の元へ行き静かに抱き上げた

海斗はいつも眠りが深い

一瞬、目を開けたが俺だと分かったのか、また静かに目を閉じた


海斗を毛布に包んだまま抱えて先程の場所へと急ぐ

智は、膝をついたまま…自分のシャツのボタンへ手を持っていっていた…

本当に…お前という奴は…

そりゃあ、そうだよな
命懸けで産んだ海斗だ
海斗の為ならどんな屈辱にも屈しない

本当にお前は…強い


どうやら…




相手は一人…

人質の海斗は俺の腕の中




海斗を預けに行こうと引き返すと
待ちきれなかったのだろう、櫻井君が目の前に居た。

ひとまず、海斗の無事を確認して安堵し
目で智の居場所を探る



松「海斗を長瀬に預けてくる。それまでは待て、一人で先に行くな。いいな?」


納得がいかないのか強い目で俺を見据えるが目線を下げて海斗を見ると少しだけ柔らかさを見せた


頼むぞ…


君は海斗の父親だ


この子と智が悲しむような無茶だけはするなよ