現れた…と、言っても家に来た…とかではない。

智君は松岡先生と約束した通り定期検診を欠かす事なく受けていた。
その日は、海斗も松岡先生に診てもらう事になっていて。
色々と検査に回らなければならない智君を一人にするのは心配だったが、俺が海斗を連れて松岡先生の診察を受ける事にしていた。

のんびりな性格なだけで成長が著しく遅いのでもなく、健康状態も良好との事に安心し、早く智君の所へ行こうとした時、海斗を松岡先生が連れて出て行ってしまい、代わりに入って来たのが…城島先生だった。


茂「カイちゃん大きいなったなぁ〜。ほんま、子供の成長は早いなぁ〜。」

俺の前に座りながらネームホルダーを見せ

"城島です" と名乗った。

それよりも、海斗が気になった。
どうして何も言わず松岡先生は海斗を連れて行ったのか…

茂「カイちゃんは心配せんといて。松岡の部屋で昼寝でもしてるやろうから。
ごめんなぁ…ちょっと君に話したい事があるんや」

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城島先生の話はこうだ

以前…ちょうど俺が智君を探してここに辿り着いた頃、城島先生は松岡先生の患者である智君の耳の診察をしてくれた。
その結果…もしかしたら智君の失聴は手術で難しくなく治療出来るのではないか…と確信したらしい。
説明はしてもらったけど詳しい事は分からない。
と、いうか…動揺して理解出来そうにない。
智君の失聴は先天性ではなく外傷によるもの…そこに心理的な作用が加わり音を失くした。

城島先生は智君に手術を勧めたが、断られたそうだ。

理由は
"何かあった時、海斗を一人にしたく無い"

それ以上、先生は智君に手術の事は言わなかったそうだ。

だが...それから日が経ち
智君と海斗を俺の戸籍に入れ正式に家族になった今だから、もう一度…考えてみてはどうか。

そういう内容だった。