二「いいの?櫻井さん、逢いに行ったよ?」

相「仕方ないよね…俺が何言ってもダメだったろ?サトちゃんの為なら芸能人も辞めるって言うし…そもそも、俺にそんな権利ないし?」

二「だな…でもさ…好きって感情もないのに、よくそこまで大野さんを大事にできるね?」


相「好きは好きだよ?でも、恋愛じゃないよ。
俺もさ、カズの為にと思って…お前から離れて地元に…ここに逃げて来たじゃん?
俺には帰る場所と、迎えてくれる家族がいた。
でも、サトちゃんには両方なかったんだよ…
目が覚めて…ううん…ちゃんと覚めてなかったんだろうな…母ちゃんが熱測ろうと額に手を置いた時に…声に出さずに言ったんだって…


『 か あ さ ん 』 


泣いてたって…。


母ちゃんさ…何処の誰かも分かんないのに、サトちゃんの "母さん" になってやろうと思ったんだって…。サトちゃんが母ちゃんの子なら俺とは兄弟じゃん?だから、うん、そう!兄弟みたいなもんだから…だから、悲しい思いはして欲しくないんだ…」


二「そう…さっき櫻井さんも言ってたけど…大野さんを最初に見つけてくれたのが雅紀達で良かったよ…本当に…」

相「そういうカズだって、わざわざこんな所までサトちゃん探しに来るなんて…好きなんじゃないの?」

二「俺は…彌生さんから大野さんを紹介されて…お互い言葉にこそしなかったけど…同士?そんな感覚があったんだよ…俺にも耳の不自由な身内がいるからさ…生きていくのが決してラクじゃないのは少しは分かってるつもりだった。
大野さんのプライベートは全く知らなかった…
いつでも貸せる手を用意していたけれど、仕事だけの付き合いに少し毛が生えた程度の距離だった…でも、あの人からは、なんて言うの…悲壮感?みたいな感じなかったんだ。
きっと…満たされているんだ、満たしてくれるヒトがちゃんと居るんだ、そう思ってた。
でも…櫻井さんに会って、そうじゃなかった事を知って…」

相「今度こそ手を貸してあげようと?」

二「そんな偉そうな手じゃないけど…さ…」

相「そんな事ないよ……ここの人達もみんな同じ気持ちだよ。
…サトちゃん…どうするんだろう…翔ちゃんにカイの父親だって言うかな?」

二「あとは…二人が決める事だよ…」

相「…だよな…」