ある晴れた日の午後
いつものように洗濯物を干していた。
気持ちのいい日差しに空を見上げた。
この大空に
翼を広げ
飛んで行きたいな♪
悲しみも
痛みも
悩みも
嘘も裏切りも
何もない
まっさらで平和で優しい世界に…
空を見上げると
手が届きそうな気がした。
身を乗り出してみた。
ピーポーピーポーピーポー
目が覚めたら救急車の中で
誰かが必死に意識レベルと痛みの確認をしてくる。
夫が手を握ってくれていた。
両足の感覚がない。痛みもない。
レントゲンとか色々検査を受けて、入院だと言われた場所が、精神科だった。
ちょっとうっかり
貧血で立ち眩んで…
ほらその…
精神科の主治医にはそんな見え透いた嘘は無意味で、これが初回ではない訳で、既往歴もある訳で。
半強制的に入院となった。
鍵のかかった牢獄のような場所へ。
子供たちに会いたい。
自業自得なのに、今さらそんなことを思う、母親失格の人間。
きっかけとか何とか聞かれるんだけど、空が綺麗だったこと以外に、理由なんてないし、誰かのせいでもない。
入院する必要性も感じなくて、当初は暴れてもみたのだけど、4人がかりで押さえつけられ、肩に注射を打たれた。
医療者が悪魔に見えた。
その治療望んでませんよ!辞めて下さい!とか言って、必死に抵抗したのに。安定剤ブッ刺された時は、人として終わったような気がした。
患者の意思を無視して生命維持優先だとか言えるのもこの精神科閉鎖病棟特有か。天井を見上げ無になった。
そういえば胃腸炎になってから、精神科の薬、勝手に減らしていたんだよな。
お腹の調子が悪いときって薬飲みたくないから。
それが原因かなって。
医者は原因を作りたがる。
家族に説明をしなきゃいけないから。
事を起こした私は、どうしたの?って説明を求められる。面倒くさい。
朝起きることも、ベッドから出ることさえも面倒くさくなる。あぁ何もかもが面倒で、無になりたい。自由な大空に鳥になって飛びたいと思うことぐらいある。
心配する人がいる。
悲しむ人がいる。
のこされた方の身にもなれ。
こういうことを起こした人間は責められる。
楽になることすら許されない。私の背負っている呪縛を取り去ることは誰にもできないのに
無責任な生きろ、頑張れの言葉に嫌気がさす。
同じだけの痛み背負って生きてみろと言いたくなる。
心配してくれたママ友たちからの連絡に、何も返せずにいる。毒付いたままの気持ちでは、何も話したくない。
何も知らないくせに
放っておいてほしい
私はいい人ではない。
虐待サバイバーの90%には希死念慮があると言われている。
どうやら私もその闇から中々抜け出せないようだ。
治ったふりしてニコニコ笑ってなきゃ、また牢獄送りよ。
あの日に戻りたい。
夫の部屋の懸垂器にブラブラしながら、筋肉ないよねーって笑っていた平和なあの日に…