予想以上のハイクオリティ、焼け跡を包むように名店が並ぶ/いといがわバル街vol.6 | 「その女、善良につき」

「その女、善良につき」

三線愛好家 & 三条市ボランティア連絡協議会会長 きよ里が書いております。どうぞよしなに。

糸魚川タイムスさん1面に載せてくださって、サンキュー!
演奏曲は「満月の夕」。

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以前にもお誘いいただいていたのに、どうしても日程が合わず、未体験だったいといがわバル街にやっと参加できたよ!
忘れずにお声がけくださった実行委員会さん、ありがとうございまスライダーズ~。

結論から言って、いといがわバル街はワンダフル。
今まで、新潟県内のバル街は長岡がまちがいなくNo.1と公言してはばからなかった私。その私めをして、
「同率1位かも…」
とうならせた町、それが糸魚川。
人口4万余の糸魚川市と、27万人を超える長岡市、参加店舗も38ヶ所と70店超で倍くらい違う(でも人口比率を考えればこれもスゴイ)のに、総合的な満足度としてはいい勝負…、近県のバル街ファンはぜひとも糸魚川一泊バルツアーを検討すべし。

ながおかバル街は14時スタート、さんじょうバル街は16時スタートだったけど、いといがわは店舗数のコンパクトさを埋めるかのごとくなんと正午スタート!ヤバイ!12時間飲める…!

【1軒目☆江戸前 重寿し

やけに控えめに佇んでいるお店だなぁと思ったら、糸魚川大火でお店を失い、現在のここは仮店舗なのだって。
バル街営業のみだったんだけど、常連さんがふらっと入ってきて、
「え、今日はバルのチケットないとだめなの?チケットってまだ売ってる?買ってくるわ」
みたいなお話が聞こえたりして、あ~愛されてるお店ら…と初っ端から良い予感。
幕開けに相応しい紅白寿司(鮪と鯛)に桃色のねぎとろ。
長岡の米八さんもそうだけど、職人さんの朗らかでオープンな対応が気持ちよい。ごちそうさまでした(´人` )。

この美味しさを伝えたく動画↑撮りました。

 

【2軒目☆月徳飯店

正午スタートだから、お昼ごはん代わりのピンチョスをどんどん食べていきたい。
お寿司の次は、ボリューミーな鶏唐揚げの中華料理店をチョイス。

 

タルタルソースと甘酢あん?のダブル味付けでうめえ。写真だと小さく見えるけど結構な量があった。3杯くらい飲める…けど、紹興酒を1杯でがまんがまん。
普通にランチでいらしているご家族連れがけっこう席を埋めていて、ここは地元の人気店だってことが自ずと分かっちゃう。
ブラック焼きそばが気になるけど…今日はできるだけたくさん回るからがまんがまん。
欲望を刺激されるお店だった。
 

【3軒目☆阿吽

ここ超いい。
海沿いの、さびれたようにすら見える古い建物が並ぶ小路の横に、静かに待っているかのような、普段はコースのみの完全予約制という秘密感たっぷりのお店。
三条で言えばたんたんと似た位置づけかな。たんたん入ったことないけど。

 

ちょうど小上がり(半個室)だけ空いてたので上がらせてもらったけど…マジいい。
語彙がなくなる。
私の好みにピッタリ。

ピンチョスは6種類から選べた。糸魚川猪のパテを選択。ごろごろと噛みごたえのある、でも決して硬いと思わせない、猪肉のかたまり。噛みしめるとあっさりした旨味、豚よりも脂っぽさを感じない素朴とも言うべき味わいを、白麹仕込の冷酒でありがたくうれしくいただく。は~、いい。

私の好きな感じすぎる…、阿吽。
もう、あの海岸端の潮風で傷みが早そうな、築30年は確実に経っていそうなアパートに住んで、静かに暮らしながら、月1回の楽しみとしてこの店に通いたい…。


調べたらこのお店の厳選日本酒を通販しているみたい。

AUN COLLECTION
センスがすごいわ、オーナーさん。

あまりにもお気に召したので、事前に実行委員会さんからいただいてた演奏OK店リストには載ってなかったけど、頼み込んで1曲させてただいた。調子に乗ってもう1曲。大変気分良くお店を出たころには、行列してたよ!商店街からは少し離れてるけどこんないい店ならさもありなん。


【4軒目☆飯豊町(いいでまち)にぎわい再現プロジェクト from 山形県】

米沢牛!!
レア気味な焼き加減がたまらなく旨い。デカい。通常なら1,000円程度の品であるという。納得。完全に赤字でしょう、これは。
山形県から、バル街が始まる前から糸魚川市と交流があるという飯豊町のみなさんが、糸魚川地区公民館に出張出店してくれてたよ。
この公民館オーシャンビューですごくロケーションがいい。今回はすげ~日本海らしく荒れてて電線が今にも切れんとブランブランしてたけど、それも11月っぽくて悪くないとすら思えた。



特産品のグミ酢サワーでスッキリ。
私にバル街をこんなにも楽しむきっかけをくださった、ながおかバル街実行委員の坂田さんと大沼さんと合流。天下のながおかバル街さんも、いといがわのレベルの高さを口にしていたよ。
 

【第1回目の振る舞い☆あるぱーじゅ函館チーズの会

振る舞いフリーライブを楽しく全うさせていただいた。
大盛況で売り切れを覚悟していた振る舞いピンチョスと赤ワイン、私たちの分を残しておいてくださった!うれしい。
ラクレットチーズたっぷりのバゲット、ふわふわのクリームチーズ…、チーズに溺れたい私には得も言われぬご馳走。

赤ワインは正直、タンニン苦手なんだけど、ここでいただいたのはびっくりするぐらい渋みが皆無で、実にライトでフレッシュ。これなら、お代わりできる。

【5軒目☆割烹春よし

前々回のながおかバル街に出張出店なさっていた割烹春よしは、振る舞いライブ会場の公民館からすぐ隣。

こちらも商店街からはちょっと飛び地なので、いつもはやや寂しさがあったのだそうな。でも今回は見る限り盛況でしたよ。お客さまの中へ分け入って、乾杯の1曲をさせていただいた。盛り上がってくださって、ありがとう!

 

ハイボールで、糸魚川名物メギスの3種揚げ(しそ巻き天ぷら、フライ、唐揚げ)をいただくと、ギタリストエーサクさんから
「俺もうここでずっと飲みたい…」
とバル街のシステムを完全無視する発言が出るほどにしっとり落ち着く雰囲気。
メギス3尾で全部揚げ物なのにちっとも飽きない。どれも食べごたえがあり、かつ、もたれない。合掌してごちそうさま。

 

【2回めの振る舞い】

駅前本部のあるアーケードで、冒頭の糸魚川タイムスさんに掲載してもらった振る舞いライブを決行。


今回は演奏している間に加賀の井がなくなっちゃったけど、6月に長岡でいただいてますからね!美味しい味は覚えていますよ。

阿吽でお会いして、
「安里屋ユンタやって、安里屋ユンタは俺の青春の曲だ」
とアツくリクエストくださったお客さまが、なんと阿吽さんのお料理をテイクアウトして差し入れしてくれた!
すごい…、あまりの意外さにびっくりした(しかも汁物なんだもん)。バル中にピンチョスをテイクアウトしてプレゼントされるなんて、こんなこと、当然ながら初めてw
他では絶対ないw
元花屋のお兄さん他お友だちの2名様、ありがとう!貴方達のことはだいぶ長いこと忘れられないと思いますw

【6軒目☆だいにんぐばー徳菜光

和装女子のグループと合流。その着こなし、ただ者ではありませんね。
聞けばバル街と同時開催の和小物展示販売チームのお嬢さんたち。

そりゃこなれているわけだ。銘仙かわいいよお。

お客さまギッシリの徳菜光さんの広々したカウンターで、数曲。
お店の作りが明るくて清潔で、自然とお客さま同士の顔が向かい合うようにできてて、あとスタッフさんの対応が軽やかで、入った瞬間から「あ、いい店」
って思うようなカラー。

飲み物はランブルスコ、ピンチョスはビーフシチュー。もうしかーもお腹いっぱいになってきちゃったんだけど、残す選択肢はありえない。ゆっくり歌ったり喋ったりしながら完食。
噂では店長さんがトランペッターだとか…。そのせいなのかどうか、非常に突然の演奏に対しウェルカムな空気が満ち満ちてた。
「そのせいなのかどうか」って書いたけど、お店の方がウェルカムなお店なら、一緒にお客さまも楽しんでくださる確率が高いのは間違いない。
お店の方が渋々みたいな感じだけどお客さまはノリノリ、っていうときもあるけど、申し訳ないよね…(でも私空気あんまり読めないのでお客さまが盛り上がればワー!ってやっちゃってたいていご迷惑かけるけど…、ごめんなさい)。
徳菜光さんはもう一度演奏しに来たいなと思わせてくれる温かみを骨の髄まで感じました。

心もいっぱい。

次の店~に行こうとしたけど

満員で入れず、次!

 

【7軒目☆フェルのはなれ

(撮影:大沼女史fromながおかバル街)
旧高野寫眞舘、見るからにわくわくするような、有形文化財指定されている昭和初期テイストの建物に続く道へ、キャンドルがたくさん飾られて、私たちをナビゲートしてた。もうこんなの、入らずにいられないでしょ…。

私はスパイシーなホットワインをチョイス、エーサクさんは酒を一旦距離置くとウーロン茶で、朱塗りのお膳を前にスイーツつまみに乾杯。

フェルエッグっていう鶏卵屋さん直営のお菓子屋さんなんだって。
文化財の写真館で、たまご屋さんで、お菓子屋さんで、乙女心にキュンとくるよぉ…。
思わずいっぱい買い物してしまった。

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2階は昔の撮影スタジオ。老朽化したしっくいや木の床に、胸の奥を絞られるような切なさがある。
全室自由に見ることができるんだよ。
どこをとっても泣きたくなるようななつかしさと、失われゆくものの悲しさと、大切にされてきたことが現在に続いている文脈(高野写真館さん自体はこの建物の隣の新店舗で現在も営業中)にあふれていて、自分にとって大事なものを改めて大事に抱き締めたくなるような、そんな気持ち。

 

【8軒目☆ZIP

事前に、ストリートスライダーズファンネットワーク糸魚川支部の方(私が今勝手に作った組織w)から
「糸魚川に来られるなら、ZIPに寄ってください。リクエストすればストリートスライダーズかけ放題です」
とのメッセージ受信。

土屋公平ファンのきよサクが揃ってて、そんな店不可避でしょ。
ちなみに写真の中央の方は、SS糸魚川支部の方でも、この店のマスターでもなく、先に入っていたお客さま。

地図通りに進んでるはずなのに店が見つからなく、半ば無意識に回避していた怪しげな細い裏通りへ戻って入ってみると、その角に、目立たない「ZIP」の看板が…。
飾ったところのない煤けた木の扉は、一見客にはめちゃくちゃ入りにくい!
でも、それも気軽に開けられちゃうのが、バル街の大きなメリット。
あと、今回は、情報をくださったマサキさんのおかげ。ありがとう!

硬派なこの店のマスターは、両八重歯の人懐っこい、優しいお兄さん。私たちの求めに従ってすぐにスライダーズの全アルバム(!)を取り出し、夢遊病をかけてくれました。

 

夢遊病 夢遊病
2,621円
Amazon

 

そしてタイミングよく現れた、情報提供者マサキさんと、「かえりみちのブルー」を合奏しながら糸魚川の夜はとっぷりと暮れていくのでした。
あぁ~思い出しつつビール飲みたくなってくる。

あとこの店、ギターと三線が置いてあったwww
こんな、きよサクに来いと言っているような店見たことないよ!

絶対また行きたい…!


【最後!9軒目☆創作ダイニングあやふ野

しめくくり!
意外と遅い時間まで人が溢れてるよ。
っていうか、38店舗の出店があったけど、約半分はお昼の営業で終わり、深夜営業までやっているお店は一部だから、バル街のお客さまが集中するのは当然かもしれないです。
ここも普段から気軽ないい店の雰囲気(店員さんがフレンドリー)あったけど、何より相席したカップルさんが強烈キャラクターすぎて色々吹っ飛んだw
 

彼氏イトーちゃん:飲みすぎて3回救急車で運ばれた。バル街のために今日は東京から泊まりで来潟。

彼女ミミコちゃん:県内の街の名前を言うと、必ずその街の飲み屋の思い出を語れる。口癖は「ちょーウケる」。

これ友だちになるとヤバい人たちらよw 彼らと飲み仲間として親しく暮せば、酒の上での楽しみと失敗が、糾える縄の如く絡み合って今までの人生の2倍やってきそう。惹かれるw

アルコール指数激高の2人が言うには、
「いといがわバル街は店もいいけど人も超いい、来ているお客さんもいい人ばっかり」

私もそんな気がした。
糸魚川大火のあと、商店街に空いている寒々しい焼け跡の穴、その復興を応援する気持ちを持っているお客さまが集まった可能性はあるけど、だからといってこの暖かさと心地よさは、説明できないと思う。そもそも地元糸魚川の人も一緒に遊んでるし(地元の人だって街を応援するけどさ)。

 


ひどい言い方したけどw、最後には忘れ物を持って駆けつけてきてくれた優しい2人。
はじめてのいといがわバル街のすてきな夜の終わりを、底抜けに明るく彩ってくれてありがとね!
今度2人で三条へ飲みに来てね。
 

大火のことはもちろん知識としては知っていたけど、舌鼓乱打して、優しいスタッフの皆さんと触れ合ってると、そんなこと忘れて飲んで堪能してしまった。
けど、次の店へ!とスキップで飛び出すと、否応なく視界にある痛々しい空き地の群れ、修復中の工事現場、あそこにもここにもあって、必ず目に入ってくる。
当事者ではないから、火事の痛みは結局リアルにはわからないけれど、部外者として、どれほどの良い店が失われたのかと考えると残念でならない。何しろ無事に残った(または移転した)お店のうちほんの10軒ばかり回って、いい店しかない。また行きたいと思う店ばかりだった。
そして火元になってしまった商店主の方の苦しみはいかばかりかと思う。

復興を祈ることは部外者でもできるけど、自分に利害のあることとまでリアルに感じられるのは難しい。
しかしこうして糸魚川の町を存分に楽しんで、好きになってしまった今、自分が知ることなく失われた店には、町並みには、どんな魅力があったのか、永久に知ることはできない、そのことを自分の損失として感じている。

関わった人々の痛みがいつか癒えて、みなさんにそれぞれの幸せが来ますように。