『1秒先の彼女』 ~初めての台湾映画~ | 老いてますます映画!!

老いてますます映画!!

還暦過ぎにNetflixを始めたことで、映画を再びよく観るようになりました。そしてつくづく思うのは、わずらわしい日常を忘れさせてくれる映画の力です。往年の名作から最新作まで、皆さんと夢の世界を共有したいと思います。

 実は台湾映画はまだ観たことがありませんでした。先日、私の職場がある埼玉県川口市のSKIPシティというところで観て来ました。『1秒先の彼女』という2020年の作品です。予備知識なしで観たので、始まってしばらくの間は香港か中国の映画と思っていたのですが、実は台湾で製作された作品でした。

 これが、まぁ、なんともピュアなロマンティック・コメディで、心が洗われる思いがしました。

 

<あらすじ> ※ネタバレ注意

 この映画の主人公は、台北の郵便局で働くアラサー女性のシャオチーリー・ペイユーと彼女の幼馴染でバスの運転手をしているグアタイリク・グァンティンです。シャオチーは、何をするにも人より1秒早く、映画を観ても人より早く笑ってしまいます。一方、グアタイは、シャオチーと違って何をするにも1秒遅く、どこか茫洋とした雰囲気を漂わせています。

 グアタイは幼いころからシャオチーに思いを寄せていますが、シャオチーの方はグアタイが郵便局に訪ねて来ても彼とは気づきません。それどころか、ハンサムなダンス講師に入れあげて、あやうく金をだまし取られそうになります。

 映画は、テンポが人より1秒遅いグアタイが、本人も気づかないうちに時間を貯金していたことが物語のミソになっています。その貯金をグアタイが使っている間、シャオチーをはじめ、まわりの人間はフリーズしていて、こうした生まれた1日を使って彼はシャオチーとデートします。その時にグアタイが撮った写真が写真店に飾られ、眠りから目覚めたシャオチーはその写真を見て撮影場所を探す旅に出かけます。

 この旅を通じてシャオチーは、郵便局に通う男性が幼馴染のグアタイで、彼が出し続けた手紙が自分あてのラブレターだったことを知ります。ラブレターのあて先としてグアタイが使った私書箱のある郵便局に転勤し、彼が訪れるのを待ちます。そしてついに・・・。

 

 

 というように、この映画はロマンチック・コメディであると同時にファンタジーでもあります。時間差がポイントで、グアタイはフリーズしたシャオチーとのデートに時間差によって生まれた貯金を使って成功します。と、こう書くと、グアタイはまるでストーカーのように思われるかもしれませんが、少なくとも私は、彼の純粋さに心打たれることはあってもストーカーと思うようなことはありませんでした。優れた脚本、演出、それにグアタイを演じたリク・グァンティンの演技力のなせる業だと思います。

 監督はチェン・ユーシュンで、この映画は台湾のアカデミー賞にあたる金馬奨で作品賞、監督賞、脚本賞、編集賞、視覚効果賞の5部門を受賞しています。

 

<SKIPシティ>

 埼玉県川口市にある映像製作を目的とした施設で2003年1月にオープンしました。Saitama Kawaguchi Intelligent Parkの頭文字をとってSKIPシティと名づけられました。A、B、Cの三つの街区からなり、このうちA街区には、埼玉県の映像ミュージアムや映像ホール、川口市の市立科学館、それに去年秋から週二回、私が働いている放送局の映像データベースセンターなどがあります。

 

  SKIPシティ(埼玉県川口市)

 

 このうち映像ホールで開かれた今回の上映会では、ほかにも邦画の『恋は光 2022が上映され、活弁シネマ倶楽部の森 直人さんと徐 昊辰(じょ こうしん)さんが作品を解説するトークショーとの豪華(?)3本立てで、お値段はなんと無料でした。  

 上映会のキャッチフレーズは、「映画をもっと好きになる」。確かにこれだけお得だと、普段、映画をあまり観ない人も好きになるかもしれませんね(笑)。

 

                            映像ホール

 

 SKIPシティでは、今回のような無料の上映会のほかにも街の映画館より安い料金で映画を楽しむことのできる「ウィークエンドシアター」や若手映像クリエイターの発掘・育成を目的とした「国際D(デジタル)シネマ映画祭」を開催しています。

 JR川口駅からバスでおよそ15分と交通の便が悪いため、正直言って、認知度はいま一つです。でも、この後、NHKがTVスタジオを建てることでもありますし、SKIPシティが映像製作の拠点として広く知られるようになることを期待しています。

 そう言えば、吉永小百合さんが出演した『キューポラのある街 1962も、SKIPシティがある川口が舞台でした。

 

<1秒先の彼>

 『1秒先の彼女』は、女性の方が何をするにも人より1秒早く、男性の方は、逆に1秒遅い設定となっています。

 この設定を入れ替えて京都を舞台にリメイクした『1秒先の彼』という作品が、今年7月に公開されます。宮藤官九郎さんが脚本を書いた日本映画で、男女が入れ替わっているだけに、『1秒先の彼女』のように、主人公の男性がストーカーと勘違いされてしまうのではなかという心配はないと思います。もっとも最近は女性のストーカーもいるようなので、主人公の女性がストーカーのように見えないことを願っています(笑)。ちなみに主演は岡田将生さんと清原果耶さんです。

 

 

<台湾映画>

 私の場合、海外の映画というとアメリカのハリウッド映画が真っ先に頭に浮かんでしまい、アジア、とりわけ台湾の映画には、正直言って、あまり関心がありませんでした。

 今回、たまたま観た台湾映画ですが、文句なく面白く、そのクオリティの高さに驚きました。また、映画の中の街並みに心惹かれ、特に漁村の風景は、子どものころに家族で夏休みに行った日本の海辺の街を思い出させてくれて、訪れたこともないのに懐かしさで胸がいっぱいになりました。

 実を言うと、私はタイか香港からの帰りにクレジットで台北の空港に寄ったことはありますが、台湾を訪れたことはありません。一度、ゆっくりと台湾を旅行し、街歩きや食事を楽しみながら存分に映画を観てみたい。『一秒先の彼女』は、そんな気分にさせてくれる映画でした。

 

 そしてSKIPシティです。「国際D(デジタル)シネマ映画祭」には行ったことがありますが、商業映画の上映を楽しんだのは初めてでした。映像製作に力を入れている場所だから今の職場を選んだわけではありませんが、あらためて考えると、映画好きが高じてこうしてブログまで書いている私が、ここで働くようになったのは運命だったのではないかとさえ思えてしまいます(笑)。

 これからは「地の利」を生かして、SKIPシティでおおいに映画を楽しみたいと思います。来月10日には平野啓一郎さん原作で、妻夫木聡さんと安藤サクラさんが

出演する『ある男 2022が上映されます。こちらは無料ではありませんが、前売券を買うと800円で観ることができます。詳しくは、下をクリックしてください。

ウィークエンドシアター|SKIPシティ 彩の国 ビジュアルプラザ (skipcity.jp)

 

 

 

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。