4月に入る。GWも近づいてくる。
私はその夜、またお酒を飲み過ぎた。作戦を続けることができなかった。
「クマオさん、連休の予定は?旅行行くんでしょ」
「うん。1泊だけ行く。30日と1日」
「そうなんだ・・・」
「りこ、しんどいか?」
「・・・やっぱりクマオさんは彼女のことがものすごく好きなんだ」
「・・・」
「旅行って、二人の絆深めるために行くんでしょ。思い出作りでしょ」
「・・・」
「クマオさんと私の絆なんて、あっという間に抜かされちゃう」
「・・・」
「いいなあ。恋人同士の旅行って、一番楽しいもんね」
「りこ、まだその話続ける?」
「だって、クマオさん、なーんにも言わないもん。終われないやん」。
「絆深めるためとか、そういうの。別に考えてないよ。彼女がどこかに行きたいって
言うから、慌ててさがしたら、どこもなくて、とりあえず1泊だけでもって」
「ふーん。そんな言い方するなんて彼女かわいそう。」
「そうやな。オレは最低男やからな」
「そんなこと言ってほしくない。彼女が好きで好きで仕方ないってクマオさんの本当の
気持ち言ってくれる方がよっぽどいい。クマオさんは後先の事考えずに、とりあえず
目の前の人にいいことを言うんだよね」
「・・・帰る」。
クマオは来てまだ20分も経ってないのに帰ろうとする。
クマオの好きなハンバーグもまだ一口しか食べていない。
「そうやっていつも逃げるね」
「じゃあ、どうすればいい」
「それもいつも聞くね。自分で考えれば。」
「・・・・・」
「私、知ってるよ。彼女、プライベートサロンのオーナーさん。」
クマオはぎょっとした顔をする。
「飲食店なんて嘘つくから、私、一度傷つけばいいところを二度傷ついたよ。
私の下手なマッサージ受けてくれてたけど、ある時言ったよね。りこにしてもらうと
余計だるくなるって。そんなの最初から彼女がプロだとわかってたら、わざわざオイル買って
マッサージなんてしなかったのに」
そう言うと、クマオはいたたまれなくなったのか、土下座した。
「やめて。そんなことしたら、私もう二度と会わない。私のこと、バカにしないで」
「りこ、もう無理や。オレといたらりこを傷つけるばかりやから。オレはりことずっと
このまま会っていたいと思うけど、こんなにりこを傷つけるのならもう会わない方が
いい」
「うん。私もそう思う。一生憎んで生きて行く方がいい」。
私は号泣した。クマオのことが好きなのに、どうしてこうなるのか。
いい年をしてこれほどに未熟な私。もう何もかもが嫌になった。
クマオは言った。
「オレ、彼女とは別れる」。