天門の試練 10 | シンイ二次小説でんべのブログ

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王様、王妃様がお姿をお隠しになり
十日程過ぎた頃
王宮が騒がしくなっていた。
康安殿には大護軍を信じるに値する
御仁と絶大な信頼を寄せる重臣らが
集まっていた。


「親元派が徳興君を担ぎ出し
都の外れまで既に着いたようだと
知らせが参りましたぞ、大護軍殿?
如何致しますか?」


「方々には指一歩触れさせる
事は致しませぬ。自ら触れる事は
なさらないようにお願い申し上げます。
あやつは毒を用いる男、指環には
毒が仕込まれておる故
努々お忘れなきよう」


「恐ろしや。医仙殿、否、許嫁殿が
その昔その毒に侵され大変な思いを
されたとウダルチ隊長より
伺っております。
いくら王族とはいえ決して許され
ませぬ。大護軍殿、親元派もろとも
成敗してくだされ。
我々は決して私利私欲の為に
動く訳ではございませぬ
民の為でございますれば
大護軍殿と一蓮托生と思って下され」


「イ殿、感謝致す。
忌々しい徳興君殿を医仙の目に
止まる事なく、王様の座を
脅かす事なく、民が苦しむ事なく
過ごせるよう某は全力で行く所存ゆえ
お知恵を拝借することもあろうかと
その折りはお願い申し上げます」


親元派、朴ら数名が排除されたなら
イら、残された重臣らと
王様をお支えし、この国を
何処にも侵略される事のない
一国としなければならないのだ。


「大護軍、スリバンから鳩が、文に
よりますと、徳興君は一足先に
都へ入られたとの事にございますが
・・・医仙殿が戻られたのも
承知しており、許嫁を迎えると
息巻いておられる由如何致します?」


「馬鹿げた事を、医仙は俺の許嫁
あの方の目に触れる事なく
片を付ける」


夕暮れ間近になり徳興君が
王宮大門前に姿を見せていた。


「変わらぬ。何処もかしこも
変わらぬの・・・」


感慨深げに徳興君は呟く、取り巻きは
黒尽くめの集団が護衛を務めていた
受けて立つはチェ・ヨンその男である。


「徳興君殿、如何なる用で
舞い戻られた?。王宮内へは
脚を踏み入れる事罷り成らぬ故
今すぐ戻られよ」


「クックッ、面白き男よ、そなた
王が不在ではこの地は滅びますぞ
それでも良いとお思いか
残された唯一王族は我ひとり
我が玉座に座り祖国であるこの地を
守ると申しておるのだ。
名案であろう?」


「恭愍王がおいでになられます故

徳興君殿は無用の長物
でございますればお戻りくだされ」


鬼剣を片手に持ち睨み付ける
仁王立ちしたその姿は
誰もが恐るる鬼神と称される
武将チェ・ヨン。夕暮れの西日が
背後から照らされその姿は
後光が差し、神に守られているのかと
見間違う程であった。


「わ、我は怖くはないぞ。
チェ・ヨンなど取るに足らぬ
元の配下を無下にし、決別し事
元の皇帝はご立腹であった。
我を受け入れねば再び
戦となり都は陥落するのだ
それでも受け入れぬと?」


「まさしく」


即答するヨンに徳興君は手を出そうと
試みるがひらりと後方へ飛び
その手を躱す。

「チィッ」と舌打ちが聞こえ
それを合図のように
黒尽くめの集団が徳興君の前へ
と進む。


「生け捕りにせよ!
こやつは腕が立つゆえ
我が王となりし折りには、右腕とし
支えて貰うゆえよいな!」


「チュンソク!手出し無用!
お前らが敵う相手ではない。
怪我でもしたならあの方が
悲しむ故」


「あの方?おぉ~~そうであった
我の許嫁が戻られたとあの馬鹿な
男らに聞いたぞ。
我の許嫁を返してもらい
我が王になった折り、王妃としようでは
ないかクックッ。楽しみじゃ、天人を
王妃とすれば我の力は最大限に
発揮できると言うもの。
どうじゃ、チェ・ヨンよ
そなたを上護軍に、そして正一品と
格上げしてしんぜよう
悪い話ではあるまい」


「虫酸が走る!俺は地位も名誉も
興味はない!ましてや俺のウンスだ!!
誰にも渡さぬ!うんっ?」


人の気に敏感なチェ・ヨンの事
山の麓に降り立つ、無数の気を
感じていた。


「全く・・・大人しくしていれば
良いものを・・・」


徳興君の目に触れる事なく
王様、王妃様を迎えるべく
ヨンは黒尽くめの集団に
「死にたくなくば退け!!」と
一喝すると、鬼剣の鞘を抜き
宙を舞うように、一人また一人と
袈裟斬りにしていく。
そして最後の一人となった所で
親元派の朴らが大門前へと姿を見せる。



皆様こんばんは。


短いですが、すみません。
またお付き合い下さいませね。