そして父になる

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今回は、映画化もされた
「そして父になる」を読んだ。

出生後に取り間違えが起こり
6歳まで他人の子を育てた
2組の家族の物語。


主人公は42歳の良多。
一流企業に勤め、何事も自分の理想通りに
人生を歩んでいる。
性格的には、合理的で怜悧な部分を多く持っている。


この物語は
いささか使い古された言葉で言うと
主人公、良多の
自己実現の物語と言える。


現実の世界で
成功したように見える良多でも

息子を取り違えられたことで
自分の価値感を
根底から覆さなければ
ならなくなる。

そのあたりが
この物語の核心かなと思う。

今まで培ってきた価値を
転換することは
誰しも
簡単なことではない。

6歳まで育てた息子を手離して
自分の価値感には合わない子供を
実の息子だと押し付けられるくらい
価値の転換は理不尽なものだと

この物語は教えてくれている
のかもしれない。



血の繋がらない息子を手離す
苦しみと

血の繋がった実の息子と暮らす
苛立ちの中で


良多の
抑圧されていたものが
心の奥底で動き出す。

忘れさられていた
もう一つの側面が
じわじわとと
浮き上がり
より魅力的な人間へと
良多を導いてくれる。


こういうのは
頭で考えて
できるものじゃなく

無我夢中に
問題に取り組む中で
自然と
自分のものにできる。


この物語の中だと

昔、良多が好きで
大事にしていたが
今は、手にも触れない
ギターが

なぜか部屋の中央に
置かれていたり、

物語の後半で
良多が
思わずそのギターを手に取って
行動する部分に
よく表現できている。


生きていく上で
「遊び」の部分を
捨てていた
良多が

二人の「息子」と
取り組む内に
自然と
「遊び」の部分を
取り戻していく。


読んでいて
悲しくて
切なくて
胸が締め付けらることもあるが

自己を実現することを
わかりやすく描かれていて
示唆深い物語だった。