真田事務次官に私は呼び出された。

もう少しで、金崎の切り札が、発動するという時期に……。

厚生労働省事務次官室に私は入り

「お久しぶりです。真田事務次官」

真田事務次官は笑みを浮かべて

「ああ、そうだね。

君に会ったのは、美紀のオペをしてもらった日だったな。

君に来てもらったのは、他でもない。

これから、西園寺教授が組織を潰すための策を発動させる。

その前に、君にやってもらいたいことがある」

「真田事務次官、何故、今、発動なんですか?

どうして、すぐ潰さなかったんですか?」

「それは、黒幕が、金崎先生の策通りじゃなかった場合、蜥蜴の尻尾で終わってしまうからだ。

だから、確信がもてるまで、時間がほしかったのと、その人物によって救われる患者が、金崎が殺された時期から数えて、千人の特別な人物が、無事、治ったらということだったんだ。

それを、推測したら10年ということだ」

私の表情は曇っていたと思う。

「それじゃあ、高倉先生が、黒幕であるという確証は、今はあるんですか?」

「残念ながら、高倉は公安の人間だったらしい。

警備局長、直々の命令で動いてる」

私はますます困惑した。
「それなら、どう攻めるのですか?」

「FBIの中にいた獅子心中の虫が、黒幕に繋がるであろう人物の名を教えてくれたよ。

そいつは、頭も良く鋭く仕掛け、女を玩具としか思ってない屑だ。

だが、そいつが、組織の中枢を担う幹部として、間違いはないらしい。

そこで奴を、引きずり出すために、君に動いてほしい」

すると、その中枢を担う幹部の顔と犯行の映像・教唆を命令している映像、女を玩具にしてる決定的な証拠が、そこにあった。

ここまでの証拠がありながら、捕まえなかったのは、黒幕まで確実に辿り着くためだ。

ただ、逮捕したのでは、口封じに殺されるからだ。

だから、真相を闇に葬られないために、動かなければならないのだ。

私は、極秘に人を撃つための射撃の訓練を始めた。

今回は一発で、仕留めなければ関係のない犠牲者もでかねない。

まさに、戦争である。

私はFBIに入った時から、覚悟はできていた。

そこには、日本一の心臓外科医の高倉の姿があった。