私は、奥山の得意分野の懐に入り込むことで、難を逃れた。

私は、心臓病の膨大な資料とオペの映像をもらった後、北栄総合病院に戻った。

宮藤の片腕に目をつけられてる以上、長居は危険である。

公安に任せることにした。

私が北栄総合病院に戻ると、石川先生が現れ、地下に行った。

ここなら、誰にも聞かれることはない。

石川先生は私を見ながら
「宮藤の片腕が、君をマークしてる……か。

やれやれ、厄介だな。

君なら怪しまれずに、あの病院を解決できると思ったが、そう、簡単じゃないな。

君は暫く医療のことだけ考えてなさい」

私は頷いた。

「わかりました。石川先生。

その方が良さそうです」
石川先生は、私と別れた後

携帯で連絡を取った。

「新島副幹事長、あなたも策士ですね。

FBIの潜入捜査官のあなたが、わざわざ奥山に恵里ちゃんのことを伝えるとは。

本当は、恵里ちゃんの気配に気づいた上で、わざと話したのでは?」

新島は豪快に笑いながら
「まさかな。さすがにそれはない。

だが、奥山に話すことで、間違いなく心臓病のことで近づいてくるであろう彼女に、危機感をもってもらうことができると考えたのは事実だがな。

あの娘のことは、組織は何とも思っちゃいない。

だから、心配はいらない。

だが、いらない細工だったようだ。

奥山は、いつの間にか彼女のペースにのってしまって、完全に指導医として接していたからな。

完全にあの娘の勝ちだ。
だが、民間人を危険な目にあわせるわけにはいかない。

石川先生、彼女には本当のことは話すな。

宮藤も、実は同じ考えのようだからな。

彼女を危険な目にあわせたくないようだ。

だから、首を突っ込んでほしくないということだ。

いいな?石川先生」

「わかりましたよ。

新島副幹事長」

そう言って携帯を切った。

「やれやれ、新島先生の掌の上か。

だが、奥山は役に立たなかった。

彼女も、負けてはいない。

自分のペースに持ち込んだんだからな」

極秘会談はこうして終わった。

だが、石川も恵里を危険な目にあわせたくないのは、同じであるため恵里には何も言わないことにした。

言えばまた、無茶するのがわかりきってる。

真田美紀の分まで生きてる彼女だから……。

その頃、私は病院長に報告していた。

病院長は、厳しい表情をして

「なるほどな。わざわざFBIの潜入捜査官が、奥山を利用して、君を危険から、遠ざけようとしたか。

しかし、よく新島の正体がわかったな」

私も軽く笑みを浮かべて
「それくらいの情報は、もってますよ」

「天真病院の奥山は、たいした奴じゃなかったか。

それなら、公安に任せておけば大丈夫だね」

天真病院は、その後、公安によって極秘に処理された。

これで、一件落着である。