美紀は私に質問した。
私のこれからの人生において重要な質問だった。
「恵里は、時代の英雄で言ったら誰になりたい?」
「島津斉彬かな。斉彬なら、どんな困難に陥っても絶対的なリーダーシップをもって何とかしちゃうと思うんだよね」
美紀は笑いながら
「そういう英雄は、時代の歴史を追えばたくさんいるけど、やっぱり幕末のあの時代だからこそ斉彬の存在が大きいんだよね。
でも、恵里らしいな。絶対的リーダーシップをもつ斉彬になりたいんだもんね。
皆の、リーダーである恵里らしいよ。
私は、前にも言ったけど坂本龍馬だな。
龍馬なら、色んな人を仲間にして、困難を突破できるもんね。
恵里、今の時代に一人の英雄じゃ突破はできないよ。
多くの仲間が、いなきゃね。
だから、私は坂本龍馬になりたいんだ。
もっとも、まっとう過ぎて敵をつくりやすいんだけどね」
恵里も笑いながら、「斉彬も龍馬も正しいことをしてるはずなのに敵をつくってしまうのは同じだよね」
表情を私は変えて「世の中にはどうして、正しいことをしているのに敵ができちゃうんだろうね」
美紀の表情は曇り
「本当にそうだよね。でも、人には色んな思惑や意見の違いがある。
だから、対立しちゃうんだよ」
「皆が笑顔になれたらいいのにね」
「私もそう思うよ」
恵里が出て行った後
美紀は、今の世の中を過去の英雄達のように変えたかった。
誰もが、笑顔で暮らせるような日本になってほしかった。
美紀は、無念の死をとげた英雄達の気持ちが今ならよくわかると思った。
例えば斉彬・龍馬・劉備・孔明・大久保・木戸・高杉・武市・隆元等、理想を実現できないまま死んでいった英雄達の気持ちが。
でも美紀には、希望があった。
それは、恵里という誰よりも信用できる人間がいてくれるからである。
美紀は、恵里がいなければ病気を聞いた時、闇の中におちた状態で、オペをするはめになっただろう。
だが美紀には、恵里という最高の親友がいる。
親友の存在が、自分の心を豊かにしてくれる。
これが、恵里の天性の仁徳なんだよね。
本当に恵里は凄いよね。
そして、家庭と助教授という立場を見事に両立させてる頼もしい母である、里見の存在も大きかった。
父が、仕事にあれだけうちこめるのも里見の存在があるからである。
里見は、いつも家族に言ってることがある。
「皆、笑顔で人と接してね。
笑顔は、幸を呼ぶからね」
まさに、里見の言う通りだった。
人と人のつながりが、仲間との横のつながりを広げていくのだ。
そして、それが幸せいや幸運をもたらすことになる。
美紀にとっては、恵里との出会いがまさに、幸であると言えた。
そんな時、俊介兄ちゃんがやってきた。
「美紀、今だからこそ思うよ。
こんな腕にならなければお前をこの手で救い出してやれたのにな。
だが、これは可愛い妹を救った勲章みたいなものだと俺は思ってる。
あとは、高村と恵里ちゃんに託すよ。
美紀に、改めて言っとくよ。
俺は、お前を憎んだことなんて一度もない。
兄として妹を、救うのは当然の話だ。
お前は、俺の分まで優秀な医者になるつもりなんだろうが、俺のためじゃなくお前を待ってる患者のために医者になれ。
それが、兄としての願いだ」
「わかったよ。お兄ちゃん」
二人はこの時、初めてわかりあえた気がした。
美紀は、ずっとあの事件以来、苦しんでいたのだから。
それだけに今の会話は、重要だった。
俊介も、結果的に可愛い妹を苦しませていたのだがら、ようやく解決させてお互いに解放されたのが、嬉しかった。
そして、ついに恵里と話すときがきた。
「恵里はっきり言っとくね。
もし、私が今回のオペで助からなかったとしたら、あなたにはどうしてもしてほしいことがあるの。
まずは、私の分まで代わりに医者になること。
そして、今まで裏世界について集めたデータが・・・・・・にある。もし、私が死んだら、十年後そこのデータをもとに裏世界を潰してほしい。
やり方は、あなたに任せる」
私は美紀を睨みつけて
「死ぬなんて言わないで!
私達二人で、シルバーブレッドになる。
そうでしょ?美紀」
美紀は満面の笑顔で
「そうだね。あくまでも万一の話しだよ」
私は単刀直入に聞いた。
「美紀は、黒幕が誰か知ってるの?」
美紀は真剣な表情で
「残念だけど黒幕は、わからないんだ。
でもナンバー2は、わかる。
高尾智彦という男よ。
調べればわかってくると思うけど決してあせらないでね」
「どうして十年後なの?」
「それは、大きな策が発動されるからって覚えておいて」
美紀は、散々悩みをかかえてここまできたということがよくわかった。
「それと、万一私が、助からなくても恵里が助手という形で関わってくれるだけで私は救われるよ。
恵里、私の分まで多くの患者を救ってね。
私は、心から恵里の優しさや皆が慕うような強さ・そして、人の事を何よりも考えているところ、私は心から尊敬してるんだ。
自分の本心を、ここまで話せる人は今まで誰もいなかったから。
でも私は、同時に心配になる。
恵里は、いつかあらゆることがたまりにたまって爆発しちゃうんじゃないかって。
だから、自分のことも考えてね。
それと例え私が、死んでも自分を決して責めないで。
私のことで恵里が、苦しむだけで私の方が、辛くなるってことを親友として理解してね」
私はとうとう堪えきれず涙を流しながら
「美紀、そんなこと言わないでよ!
絶対に、あなたは助かる!
あなたは、それだけ考えて。
それにね。美紀がいなくなったら私の方が困るのよ!
美紀は、医療に関する私にとっての考えを180°変えてくれた人だから。
どこまでも、理想の医者を目指して走ってく姿にどれだけ私は、変わったかわからないの。
美紀は私の目標なんだからね。
ちゃんとそれを、あなたの方こそ理解してね。
それに私は、美紀が思っているほど強くない。
私、今まで目標とする人とかそういう人っていなかったから、だから私は美紀のような人に会えて本当に嬉しかったんだ」
美紀は、涙でいっぱいになっていた。
ちっぽけな自分に、心から尊敬する恵里にそんなことを言ってもらえるとは思ってもいなかったためなおのことだ。
自分の存在で、恵里にいい方向に影響を及ぼしたのだとしたら、人をプラスに導く存在、それは何よりも美紀が憧れていたことだったからなおのこと嬉しかった。
「私もだよ。恵里。あなたに会えて良かった」
二人そろって、涙を流しながら語った。
二人の魂の会話だった。
手術当日、美紀は私に
「恵里、これ私の宝物なんだ。
恵里に持っててほしいんだ」
美紀は、兄である俊介からもらった美紀の宝物であるきれいな水晶を恵里に渡した。
私は聞いた。「どうして私なの?」
美紀は笑顔で
「恵里が、誰よりも私が尊敬する人だからだよ」
美紀は、それと同時に、
話すことがあった。
「私に、万一のことがあった場合のために言っておくことがあるんだ。
世の中信用できる人間と信用できない人間がいる。もし、恵里が裏世界を追うつもりならそれを良く考えてね」
間をおいて、美紀は私に
「多くの人を、その笑顔で幸せにしてあげてね。
恵里は、皆の太陽だからね」
そして、オペ室に入った。
オペは順調に進み、全てが完璧なはずだった。
だが、体力がもたなくて美紀はそのまま息を引き取った。
私の中に、美紀の一生忘れられない言葉を何度も想い浮かべる。
「私の想いを継いでくれる人がいてくれるから、私は何も考えずに病気と戦えるんだ」
これが、美紀の最期の言葉だった。
私は、あまりに呆然として、現実がまったく理解できなかった。
だが、涙だけが止まらなかった。
何を考えていいのか、さっぱりわからなかった・・・・・・。
高村も手が震えた。
「畜生!オペが完璧なのにどうして死ぬんだ!」
と壁を殴りつけた。
高村は、美紀のオペ以来、手が震えて執刀できなくなった。
世の中にはフェアなことなんて、何もない。
あんなに、誰よりも頑張って人を助けることだけを考えて、誰よりも天才の美紀が、死んでしまうなんて・・・・・・。
私みたいな凡人が生きてるなんて・・・・・・。
生きてるって何?
私のこれからの人生において重要な質問だった。
「恵里は、時代の英雄で言ったら誰になりたい?」
「島津斉彬かな。斉彬なら、どんな困難に陥っても絶対的なリーダーシップをもって何とかしちゃうと思うんだよね」
美紀は笑いながら
「そういう英雄は、時代の歴史を追えばたくさんいるけど、やっぱり幕末のあの時代だからこそ斉彬の存在が大きいんだよね。
でも、恵里らしいな。絶対的リーダーシップをもつ斉彬になりたいんだもんね。
皆の、リーダーである恵里らしいよ。
私は、前にも言ったけど坂本龍馬だな。
龍馬なら、色んな人を仲間にして、困難を突破できるもんね。
恵里、今の時代に一人の英雄じゃ突破はできないよ。
多くの仲間が、いなきゃね。
だから、私は坂本龍馬になりたいんだ。
もっとも、まっとう過ぎて敵をつくりやすいんだけどね」
恵里も笑いながら、「斉彬も龍馬も正しいことをしてるはずなのに敵をつくってしまうのは同じだよね」
表情を私は変えて「世の中にはどうして、正しいことをしているのに敵ができちゃうんだろうね」
美紀の表情は曇り
「本当にそうだよね。でも、人には色んな思惑や意見の違いがある。
だから、対立しちゃうんだよ」
「皆が笑顔になれたらいいのにね」
「私もそう思うよ」
恵里が出て行った後
美紀は、今の世の中を過去の英雄達のように変えたかった。
誰もが、笑顔で暮らせるような日本になってほしかった。
美紀は、無念の死をとげた英雄達の気持ちが今ならよくわかると思った。
例えば斉彬・龍馬・劉備・孔明・大久保・木戸・高杉・武市・隆元等、理想を実現できないまま死んでいった英雄達の気持ちが。
でも美紀には、希望があった。
それは、恵里という誰よりも信用できる人間がいてくれるからである。
美紀は、恵里がいなければ病気を聞いた時、闇の中におちた状態で、オペをするはめになっただろう。
だが美紀には、恵里という最高の親友がいる。
親友の存在が、自分の心を豊かにしてくれる。
これが、恵里の天性の仁徳なんだよね。
本当に恵里は凄いよね。
そして、家庭と助教授という立場を見事に両立させてる頼もしい母である、里見の存在も大きかった。
父が、仕事にあれだけうちこめるのも里見の存在があるからである。
里見は、いつも家族に言ってることがある。
「皆、笑顔で人と接してね。
笑顔は、幸を呼ぶからね」
まさに、里見の言う通りだった。
人と人のつながりが、仲間との横のつながりを広げていくのだ。
そして、それが幸せいや幸運をもたらすことになる。
美紀にとっては、恵里との出会いがまさに、幸であると言えた。
そんな時、俊介兄ちゃんがやってきた。
「美紀、今だからこそ思うよ。
こんな腕にならなければお前をこの手で救い出してやれたのにな。
だが、これは可愛い妹を救った勲章みたいなものだと俺は思ってる。
あとは、高村と恵里ちゃんに託すよ。
美紀に、改めて言っとくよ。
俺は、お前を憎んだことなんて一度もない。
兄として妹を、救うのは当然の話だ。
お前は、俺の分まで優秀な医者になるつもりなんだろうが、俺のためじゃなくお前を待ってる患者のために医者になれ。
それが、兄としての願いだ」
「わかったよ。お兄ちゃん」
二人はこの時、初めてわかりあえた気がした。
美紀は、ずっとあの事件以来、苦しんでいたのだから。
それだけに今の会話は、重要だった。
俊介も、結果的に可愛い妹を苦しませていたのだがら、ようやく解決させてお互いに解放されたのが、嬉しかった。
そして、ついに恵里と話すときがきた。
「恵里はっきり言っとくね。
もし、私が今回のオペで助からなかったとしたら、あなたにはどうしてもしてほしいことがあるの。
まずは、私の分まで代わりに医者になること。
そして、今まで裏世界について集めたデータが・・・・・・にある。もし、私が死んだら、十年後そこのデータをもとに裏世界を潰してほしい。
やり方は、あなたに任せる」
私は美紀を睨みつけて
「死ぬなんて言わないで!
私達二人で、シルバーブレッドになる。
そうでしょ?美紀」
美紀は満面の笑顔で
「そうだね。あくまでも万一の話しだよ」
私は単刀直入に聞いた。
「美紀は、黒幕が誰か知ってるの?」
美紀は真剣な表情で
「残念だけど黒幕は、わからないんだ。
でもナンバー2は、わかる。
高尾智彦という男よ。
調べればわかってくると思うけど決してあせらないでね」
「どうして十年後なの?」
「それは、大きな策が発動されるからって覚えておいて」
美紀は、散々悩みをかかえてここまできたということがよくわかった。
「それと、万一私が、助からなくても恵里が助手という形で関わってくれるだけで私は救われるよ。
恵里、私の分まで多くの患者を救ってね。
私は、心から恵里の優しさや皆が慕うような強さ・そして、人の事を何よりも考えているところ、私は心から尊敬してるんだ。
自分の本心を、ここまで話せる人は今まで誰もいなかったから。
でも私は、同時に心配になる。
恵里は、いつかあらゆることがたまりにたまって爆発しちゃうんじゃないかって。
だから、自分のことも考えてね。
それと例え私が、死んでも自分を決して責めないで。
私のことで恵里が、苦しむだけで私の方が、辛くなるってことを親友として理解してね」
私はとうとう堪えきれず涙を流しながら
「美紀、そんなこと言わないでよ!
絶対に、あなたは助かる!
あなたは、それだけ考えて。
それにね。美紀がいなくなったら私の方が困るのよ!
美紀は、医療に関する私にとっての考えを180°変えてくれた人だから。
どこまでも、理想の医者を目指して走ってく姿にどれだけ私は、変わったかわからないの。
美紀は私の目標なんだからね。
ちゃんとそれを、あなたの方こそ理解してね。
それに私は、美紀が思っているほど強くない。
私、今まで目標とする人とかそういう人っていなかったから、だから私は美紀のような人に会えて本当に嬉しかったんだ」
美紀は、涙でいっぱいになっていた。
ちっぽけな自分に、心から尊敬する恵里にそんなことを言ってもらえるとは思ってもいなかったためなおのことだ。
自分の存在で、恵里にいい方向に影響を及ぼしたのだとしたら、人をプラスに導く存在、それは何よりも美紀が憧れていたことだったからなおのこと嬉しかった。
「私もだよ。恵里。あなたに会えて良かった」
二人そろって、涙を流しながら語った。
二人の魂の会話だった。
手術当日、美紀は私に
「恵里、これ私の宝物なんだ。
恵里に持っててほしいんだ」
美紀は、兄である俊介からもらった美紀の宝物であるきれいな水晶を恵里に渡した。
私は聞いた。「どうして私なの?」
美紀は笑顔で
「恵里が、誰よりも私が尊敬する人だからだよ」
美紀は、それと同時に、
話すことがあった。
「私に、万一のことがあった場合のために言っておくことがあるんだ。
世の中信用できる人間と信用できない人間がいる。もし、恵里が裏世界を追うつもりならそれを良く考えてね」
間をおいて、美紀は私に
「多くの人を、その笑顔で幸せにしてあげてね。
恵里は、皆の太陽だからね」
そして、オペ室に入った。
オペは順調に進み、全てが完璧なはずだった。
だが、体力がもたなくて美紀はそのまま息を引き取った。
私の中に、美紀の一生忘れられない言葉を何度も想い浮かべる。
「私の想いを継いでくれる人がいてくれるから、私は何も考えずに病気と戦えるんだ」
これが、美紀の最期の言葉だった。
私は、あまりに呆然として、現実がまったく理解できなかった。
だが、涙だけが止まらなかった。
何を考えていいのか、さっぱりわからなかった・・・・・・。
高村も手が震えた。
「畜生!オペが完璧なのにどうして死ぬんだ!」
と壁を殴りつけた。
高村は、美紀のオペ以来、手が震えて執刀できなくなった。
世の中にはフェアなことなんて、何もない。
あんなに、誰よりも頑張って人を助けることだけを考えて、誰よりも天才の美紀が、死んでしまうなんて・・・・・・。
私みたいな凡人が生きてるなんて・・・・・・。
生きてるって何?