美紀の家族には、父親の勇蔵・母の里見助教授・兄の俊介・姉の由利・妹の愛がいる。

私は真田家に連絡し、姉の由利はアメリカにいるので来れなかったが、それ以外のメンバーはやってきた。

勇蔵が真っ先にやってきて

美紀は、父が来てくれたことに驚いた。

勇蔵は、自分の理想を果たすために全力で仕事をしてる父にとって、家族の心配をしてる余裕すらないほど忙しかったのだ。

その勇蔵が、自ら娘のお見舞いにきてくれたのだから。

勇蔵の顔を見て、美紀は笑顔で

「来てくれたんだ。お父さん。

ありがとう」

勇蔵は怒ったように

「礼の必要などない。

親にとって、子供以上に大切なものなどないんだ!」

と言った後、表情を戻して

「娘が、病気になったのに仕事してるような非情な父親じゃないぞ。

普段は、母さんという家庭の柱がいてくれるからな。

だから、自分の理想に向かって仕事ができるんだ。


だから、早く治そうな」

美紀も表情を輝かして

「お父さん。ありがとう」

照れたように、勇蔵は

「礼の必要ないと言っただろ」

勇蔵は、優しく言って頭を撫でた。

勇蔵は、部屋から出て直接、話すことなはなく、いつも話したかった恵里に出会った。

恵里のことは、真田家ではいつも話題にのぼるのだ。

美紀を、別人のように明るく変えたからである。

そして、恵里は自殺しようとする生徒を救ったりクラスの中心にいながら端にいるような人でも気軽に声をかけてあげることができる人であり、看護婦として、目的をもってること、真田家の人達にとっては一目も二目もおいてるのが恵里なのだ。

勇蔵は、恵里の顔を見て

「久しぶりだね。恵里ちゃん。

君とはずーっと直接、話したかったんだ。

君のことは美紀から、いつものように聞かされてる。

本当にありがとう」

真田課長は頭を下げて礼を私に言ったのだ。

私は驚いて

「そんな。頭を上げて下さい。

私だって美紀がいるからこそ、頑張れてるんです。

私の方が、美紀に感謝してるんです」

真田課長は頭を上げて笑みを浮かべて

「君のような親友を持てて、美紀は世界一の幸せものだよ」

そう言って真田課長は医者に会いに行った。

次に俊介が現れて

「久しぶりだね。恵里ちゃん。

俺も、親父と同様感謝してるよ。

可愛い妹が、俺のせいで苦しんでるのに俺は何もできなかった。

情けない兄だよ。

それを救ったのは君だ。

本当にありがとう」

そう言って病室に入り

美紀は表情を輝かして

「お兄ちゃん。待ってたよ」

俊介は言葉を出さないまま、美紀の頭を撫でた。

言葉を出すと泣いてしまいそうな気がしたからだ。

そして、妹の愛がやってきて

「お姉ちゃん。大丈夫?」

美紀は笑顔で

「私は大丈夫、あんたはこれから大学受験なんだから、私のことを本気で考えるなら、勉強に集中しなさい!」

愛は去るしかなかった。

私は病室に入って

「美紀、大丈夫?」

「うん。大丈夫。

恵里、本当のことを教えて。

私は何の病気なの?

お父さんを呼ぶほどなんだから、それだけの病気だということだよね。

教えて?何言われても驚かないから」

私は厳しい表情で

「胃癌だよ。でも、執刀は国谷先生の二番弟子の高村先生がやるから、大丈夫だよ」

「そっか。高村先生か。

それなら大丈夫だね。

日本の誇る癌医療の名医、成功率90%を誇る天才。

やっぱり、国谷先生の弟子は格が違うよね」

その頃、勇蔵は高村と話していた。

「本当のことを言ってくれ。

美紀は、助かるのか?」

高村は厳しい表情で

「五分五分ですね。それもオペ室の中では何が、起こるかわかりません。

そして、検査の結果だけでは見えない部分もあります。

開腹して初めてわかる場合もあるんです。

だから、難しいんです」

勇蔵は溜め息をつきながら、真面目な表情で


「そうか。それなら頼みがある。

古波蔵恵里、彼女を助手にしてオペをしてくれ。

全ては、美紀のためだ」

高村は怒ったように

「それは、いくらあなたの頼みでも無理な話しです。

素人を、助手につけるなどオペを失敗させる確率を増やすだけですからね」

勇蔵は表情を変えず

「安心しろ。彼女は、アレクサンダー教授の弟子だ。

何度も難関のオペに娘とともに経験を積んでる。

そして、美紀の精神的なことを考えてもそれが正解だ。

断言しよう。彼女以上に適任はいない。

逆に私は、彼女以外で成功しなかった時の方が後悔する」

勇蔵のこの言葉で、高村は決心した。

高村は私にそれを話して

私は驚愕して

「私がですか!?」

「そうだ。家族の望みなんだ。

癌治療には、精神面が不可欠なのは、君も知ってるはずた。

癌の成功率を君があげるんだ。

いいね?」

私は冷や汗を流しながら頷いた。

私は病室に行き、美紀にそれを話すと

美紀は目を輝かせて

「やったあ。恵里が、助手についてくれるなら、百人力だよ」

と大喜びだった。

私が病室をでると俊介がいて

「悪いね。親父が無理言って。

でも、俺も賛成だ。

美紀の精神面・そして、アレクサンダー教授の弟子としても、君が助手になるのが、一番相応しい」

間をおいて

「恵里ちゃん、元外科医という立場から言わせてもらう。

癌に絶対はない。

完璧なオペをしても、患者の体力がもたずに亡くなるということもあるし、開腹した途端、転移が見つかって、閉じるということもある。

いいか?何があろうと自分を責めるな。

癌というのは、それだけ難しいんだ。

だが、精神面によって、確率は上がる。

君には美紀と一緒に最後の最後まで、戦ってほしい」

オペは一週間後に決まり、姉の由利から手紙が届いた。

美紀へ、私は大学の研究が忙しくてお見舞いにいけなくてこめんね。

でも美紀なら、間違いなく病気に勝てると私は確信してるから。

美紀は、病気を治して、あなたを待ってる何千人もの患者があなたに診てもらうのを待ってる、たがら何があろうと病気で負けるなよ。

私も、自分の理想を実現させてみせるからね。

たがら、あなたも頑張ってね。

美紀は、由利姉らしいと思った。

どんなことにも、全力投球で物事に向かう由利を見てるとさすがは由利姉だと思った。

その事を話す美紀は、本当に嬉しそうだった。

「美紀の気持ちが、本当に良くわかったお姉さんだね」

美紀も笑顔で

「私の自慢の姉だからね。

ま、当然だね。

由利姉は、いつも、先の先を見た上で行動できる人なんだ。

もし、ここにきてたら、怒鳴りつけてるところだよ」

と美紀は当たり前のように語った。

そして、病院のすぐ近くの食堂に行った。

美紀には、決して見せなかったが私はガチガチに緊張していた。

そこに、国代が現れた。

「恵里さん、今、あなたのやろうとしてるのはこれからいくらでもぶつかるオペです。

だから、突破して美紀ちゃんを他ならぬあなたの手で救って下さい」

私は頷いた。

高村は他のオペで私を助手として使い、実力を確めた。

「古波蔵恵里、完璧だ。

あの真田課長に一目置かれるだけはある。

美紀を必ず救うぞ」

ガッチリ握手した。

真田課長は病室に行き

「美紀、私は、助かるのを確信してる。

そして、お前と恵里さんが協力すれば必ず、理想の医療を実現させることができると私は、思ってる。

私は、お前が恵里さんと出会って大きく変わったことを聞いた時、本当に嬉しかったよ。

医者として最も大事なことを、おかげでお前は気づくことができたわけだからな。

私は、だからこそ助手につくのは恵里さんしかいないそう思った。

お前はどう思う?」

美紀は、笑顔で答えた。

「私は、恵里だからこそ安心できるんだ。

それに恵里が、今回のことで本格的に医者の道を進むことを考えてくれたら嬉しいしね」

勇蔵は、美紀がどこまでも恵里の輝く未来のために自分自身を犠牲にしてることを改めて知った。

そうまでしたくなるほど恵里に、一目おいてるのだと改めて理解したのだ。

勇蔵は、美紀がそこまで信じているのなら結果はどうあれ恵里に全てを託す決意が改めてできたのだった。