ユリアの本当の母である星神族皇女ガイアは、ユリアのクローンを五人造った。

レインは驚愕し

「何故五人も造る必要があるんだ?」

ガイアは笑みを浮かべて

「謀多きは勝ち・少なきは負ける。

全てを欺くためです。

この娘は、未来でこの世界の救世主になる娘です」

と笑顔でレインに言ったのだ。

「オーディン族としては考え方が違うんだが、お前がそう言うならそうしよう」

ガイアは完璧なクローンを造った。

誰も見分けることはできないだろう。

俺クラスにならなければな。

ガイアは星神族史上最強の皇女だ。

だが、ユリアはそれを遥かに凌ぐ。

ユリアが生まれた時、五人のクローンをすぐに未来に送った。

その後、ユリアが一歳になりレナが生まれた後、ガイアはオーディン族を去った。

そして、エヌルタにガイアは殺された。

ユリアはもちろん、その事実を知らない。

エヌルタが、ユリアを恐れるのは、俺の娘だからというのもあるが、ガイアにエヌルタが追い詰められたというのもある。

ガイアは死に間際に、その様子を俺に送りつけてきた。

エヌルタとユリアが、戦うのは運命としかいいようがない。

ユリアは、全てを欺いて光神族の奥義を使って眠りについた。

そう、優斗がクローンかどうかを見抜けないはずがないのだ。

そして、俺が潜入してる以上、わざわざ俺にユリアが会いに来ることはない。

そう、潜入してる限りは敵の命令が絶対になる。

黒幕に辿り着くまでは・・・・・・。

エヌルタが、クローンを出してくることをユリアは読んでいたため、あらかじめ、アッシュールにクローンが来ることを伝えておいた。

本当の戦いは、ヒマラヤ山脈で行われることになるとユリアは読んだのだ。

翔子専用の光神族奥義が、ヒマラヤ山脈にある。

敵にとってヒマラヤ山脈の高さなら、タムリンの結界も届かないため、敵にとって戦いやすい状況というわけだ。

だが、翔子の奥義を手にするためには罠だとわかっていても、ヒマラヤ山脈に行かなければならない。

そう、俺はそれを知りつつ翔子にヒマラヤ山脈に行くよう指示を出した。

それが、冥神族上層部の命令だったからだ。

でも、ユリアを信じていた。

翔子は、久保清子・佐山理彩・細田慶子・田沼恵美・清水誠也・上杉小百合と向かったらしい。

ユリアのクローンとアルテナとこの中に紛れ込んでる清美も一緒ということらしい。

それだけの戦力じゃ足りないぞ。

相手はエヌルタと大十二神最強のプロメテウスだ。

神魔族皇帝のクローンは、一刺しで殺したらしいが、一刺しで殺せる程度の奴なら大神オーディンを殺すこともできないし、俺も一太刀で倒してる。

そして、風間龍一がガイエルの息子なら、恐ろしい気配を隠していてもすぐクローンでもわかるだろう。

ユリアのクローンが、見抜けないはずもない。

オリジナルのユリアに、あれだけの怪我を負わせた相手だからな。

ガイエルの息子は、奴以上に強い。

どう考えても、美里が気配を消して倒せる相手じゃない。

最も、ユリアはあの時のユリアでは足下にも及ばないほど今のユリアは強いけどな。

そして、当然の如く、光神族の奥義を使ったユリアのところに、刺客はやってきた。

そう、そこにもエヌルタはやってきたが、優斗・幸子・雄介が、三人がかりで倒したらしい。

全てユリアのシナリオ通りだったのだ。

だが、ユリアはそれもクローンだと言い切った。

オリジナルは、やはり、ヒマラヤ山脈で待ち構えてる。

翔子を確実に消すための罠だ。

そう、実際、ユリアの言ってる通りだった。

さすがはガイアの娘、星神族正当後継者だけはある。

策略対策略か。それにしても、相変わらず冥神族は恐ろしい相手だ。

本当に頭脳戦だ。

だが、我が娘も負けてはいない。

本当の勝負はヒマラヤ山脈。

罠だとわかっていながら、実の娘を行かせなきゃならないのは辛いな。

だが、光神族のあいつ専用の奥義を手に入れてもらわなければ、奴らに勝てない。

俺自ら、翔子を守ってやりたいところだが、私情で動くわけにはいかない。

黒幕を見つけ出すまでは・・・・・・。

レインの拳が震えていた。