初舞台で名作「天璋院篤姫」に臨む国仲涼子。博多座で今までにはない「篤姫」を演じる意気込みは、すでに確固たるものがあり、その熱意が笑顔の端々から感じられる。初めての舞台。初めての博多座。初めて尽くしの「天璋院篤姫」をどう演じるのか。その意気込みを聞いた。



この公演が初舞台ですね。映像では数多い仕事をされていますが、舞台に初挑戦で主役、というのはどんな気持ちですか?

正直なところ、不安がいっぱいです。今までにいろいろなお仕事をさせていただいて来て、初めての経験がだんだん少なくなってきているんです。でも、舞台は未知の領域ですから、ここで色々な方々に背中を押していただいて、初挑戦することができました。こういう挑戦ができて、今年はすごくいい年になりそうです。

稽古はこれからですから、どうなるかわからないという不安は大きいですね。でも、これから台本ができて来て、自分で役をどう演じようか工夫を重ねて、皆さんとご一緒に稽古をするのが楽しみですし、待ち遠しいですね。

稽古が待ち遠しい、というのは頼もしいですね。

ドラマや映画などの映像の世界では、立ち稽古をする機会があまりなくて、現場でリハーサルをして本番、ということが多いんです。出演者が全員集まってしっかりお稽古をする機会がなかなかないんですね。私は、稽古は好きですし、自分だけで役の個性を考えていても、相手役の方や周りの役の方に会うと、違ったイメージが生まれることもあります。そうして稽古を重ねるうちに、声のトーンや動き方が変わったりして、稽古の中で役が作られ、でき上がって行く部分も多いと思っています。稽古が始まる前に自分で感じた役の個性と、周りの方々が捉えてくださっている役のイメ
ージが生まれることもあります。そうして稽古を重ねるうちに、声のトーンや動き方が変わったりして、稽古の中で役が作られ、でき上がって行く部分も多いと思っています。稽古が始まる前に自分で感じた役の個性と、周りの方々が捉えてくださっている役のイメージを、自分なりにうまくミックスさせて、舞台の上で表現できればいいですね。
舞台は共演者の方々とのセリフの間合いや、感情のキャッチボールで日々変わりますから、映像とはまた違った「生」の魅力があります。また、幕が開いてから最後までを一気に演じる中での感情の流れもありますので、とにかく稽古をしっかりしたいですね。

宮尾登美子さんの原作から、「篤姫」という女性を、どういう風に捉えていますか。

普通の女性から観て、「こういう女性になりたいな」という憧れを持つような女性だと思います。本来きっと誰もが持っている心に秘めた感情を行動に移せるのが「篤姫」で、それをうまく表現できない私にはすごく魅力的ですね。
原作を読んでいると、「あぁ、私にもこういうところがあるけれ
どまだ踏み出せないなぁ」というところがたくさんあります。しっかりと自分の意見を持っている篤姫の姿に憧れますし、こんな女性になれたらいいと思います。

特に印象に残っているのは、島津家に養女に行く場面です。一人の女性が自立して歩き出す出発点で、現代ではなかなか経験できない場面ですよね。

「国仲版・天璋院篤姫」では、どんな篤姫像を描きたいのでしょうか。

まだわからないことだらけですし、いろいろな面がありますけれど、私が感じて、稽古場で皆さんと創り上げて演じる篤姫像を、そのままお客様に受け取っていただけたら嬉しいです。
 私の憧れている女性像は、かよわい女性ではなくて、男性と対等に闘えて、気持ちの部分でも強い女性なんです。そういう部分を演じることができて、お客様に少しでも共感していただければ、と思います。あの時代に人には言えない苦しい部分を全部受け止めて、勇ましい女性としての篤姫になれたらいいですね。

自立した女性、ですね。そういう意味では、現代にはぴったりの篤姫像かも知れませんね。

お客様は、何通りものイメージを篤姫に対して持っていらっしゃると思うんです。ただ、今回の舞台を観ていただいて、「あぁ、こんな部分もあるんだ」と、篤姫の中に今までにない新しい部分を発見していただけたら嬉しいですね。
スッと背筋が伸びて、前へ進んで行く女性像を感じていただければと思います。

また、お客様に観ていただいてこそ、の舞台ですから、お客さんからのエネルギーやパワーを活かせるような舞台にしたいですね。また、舞台から生のお芝居の楽しさを感じていただければ、とも思っています。
お客様に目の前で生の演技を観ていただくという経験が初めてなので、それに対する期待とと不安もありますが、生のお芝居をご覧になって、厳しい言葉も含めていろいろな感想を聞かせていただきたいですね。

「篤姫」の持っている強さとしなやかさが、国仲さんの今の姿に何か共通するような感覚がありますね。

そう言っていただけるのはとても嬉しいです。まだ私の中では、篤姫の人物像が完璧につかめてはいませんし、稽古を重ねて行く上で変わることもあると思います。

ただ、せっかく舞台に挑戦させていただくチャンスを活かして、私が持っている「素」の部分も加えて、今までにない「新しい篤姫」を演じられたら最高だと思います。

今回の舞台では江戸へ出る前の薩摩時代に重点を置いていますが、沖縄出身の国仲さんにとって、九州という土地に対する印象はどうですか。

この前お邪魔した時に、何かほっとしました。住みやすそうだし、皆さんの空気が温かいんです。食べ物も美味しいですし(笑)。私、ラーメンが大好きなので、それだけでも楽しみです。もつ鍋も、水炊きも美味しそうだし(笑)。食べ歩きも楽しみですけれど、
そういうところでの皆さんとの触れ合いを通して、博多の方々にお目にかかれるのも楽しみです。1ヶ月間仕事で同じ場所に滞在するのも初めてと、新鮮なことばかりですから、いろいろな楽しみも多いです。

共演は大ベテランの西郷輝彦さんですね。

ポスター撮影の時に初めてお目にかかったのですが、とても素敵な方ですね。温かいし、頼もしいし、優しいし、憧れの大先輩です。頑張ってついて行こう、という気持ちにさせていただけるような雰囲気をお持ちでした。一緒の舞台に立ちながら、1ヶ月の間にいろいろなことを教えていただき、私からも貪欲に吸収したいですね。



それでは、ズバリ、今の段階での自信は?

90%ぐらいですね。

ずいぶん気合いが入ってますね(笑)。

今の段階で30%しかないのでは、皆さんに失礼です(笑)。しっかり稽古をして、限りなく100%に近づける気持ちで舞台に立ちたいと思っています。

最後に、お客様へのメッセージを一言。

とても立派な博多座で初舞台を踏めるのは光栄なことです。夏の博多はお祭りもあってとても賑やかな活気に満ちていますし、それを更に盛り上げるような舞台にするように頑張ります。皆さん、博多座へ篤姫に会いに来てくださいね。お待ちしています!

初舞台に、あの2008年国民的女優宮崎あおいが大河で演じたあの篤姫を実力派女優国仲涼子が挑みます。

たいていの方は、間違いなく篤姫というと宮崎あおいを思い浮かべるはずです。

その中での、国仲涼子の挑戦、宮崎あおいを越える新しい篤姫をつくりあげることができるのか、これから、国仲涼子の女優人生にとっても大きな勝負と言っていいかもしれません。

皆さんは、どう思いますか?