恵里が、北栄総合病院についた時、異常事態が起こっていた。

経済担当大臣の高橋龍馬は、危篤の状態になっていた。

恵里は、それを病院長に呼び出された時、話しを聞かされた。

そう、それには助手の医療ミスによるものだった。

恵里は、すぐに高橋龍馬を見に行った。

栗原は、恵里を見ると

「上村先生、よく来てくれた。

これから、緊急オペに入る、君に助手として入ってもらいたい。」

恵里は、患者を救うために承諾した。

二人は、高橋を救うためにオペを行い、意識は戻らなくてもオペは成功した。

恵里は、

「今日か明日が、ヤマですね。

それを乗り越えたら高橋先生は、内科に移します。

よろしいですね?」

栗原は、何とか一言言った。

「ああ、わかった。それで構わない。」

恵里は、

「後、医療ミスのことですが、助からなかった場合は公にします。

隠し事が多ければ、それだけ病院のダメージは大きくなります。」

栗原は、

「君の、言う通りにしよう。」

そして、高橋は、ヤマを越えて、助かったのだ。

恵里は、栗原の助手としてオペをしてミスをした西倉には

「西倉先生、人である以上ミスは誰でもあります。

そのミスを元に、外科医として力をつけて下さい。」

西倉は、涙をためて頷いた。

「ありがとうございます。」

高橋は、内科にその後移され恵里自ら担当となった。

そして、高橋は無事退院した。

高橋は、経済担当大臣として復帰し経済政策をうちだした。

不景気の世の中に、国民の就労率をあげ、国の輸出も増やして、国に大きく利益をあげる事に成功し、医療の方でも利益が上がるようになっていた。

病院を増やしたことで、一つの病院に患者が集中することなくきちんとわけられ赤字を減らす事に成功した。

経済担当大臣に高橋龍馬ありというのを、見せつけた。

恵里は、北栄総合病院における改革を行っていた。

そして、北栄総合病院もAIを導入したことによって不審死の原因を突き止めることにも成功して、
そんな時である、高橋龍馬の息子高橋匠が内科医としてやってきた。

匠を見て、「久しぶりね。匠先生。」

匠は、恵里を見て

「お前さんが、内科部長とは驚いたな。

お前さんは、外科医になると思ってたからな。

まあ、だがあんたくらい優秀な内科医が上司なら悪くない。

俺の事は、片腕としていくらでも使ってくれ。」

恵里は、すぐに命じた。

難解な内科の患者は、三人いた。

一人は、膵臓癌・一人はエイズ・一人は肺結核

そう、高橋は、エイズの治療法を内科的に確立させ、膵臓癌の専門医でもあった。

もちろん、これは高橋だけの手柄ではない。

ドイツにいる世界最高峰の内科医である、グリューとの協力によって治療法を完成させた。

高橋は、エイズ患者を見事に救うことに成功した。

膵臓癌治療も三ヶ月かけて、内科的治療を行い、外科でオペされ救われた。

膵臓癌は、難易度の高い癌である。

癌細胞は、恐るべきスピードで大きくなり、転移される。

だから、初期の膵臓癌を見つけるのは難易度が高いといっていい、だが高橋は、見事に救いだしたのだ。

まさに、奇跡を起こしたように見えた。

高橋は、元々優秀な男だが、エイズや膵臓癌の治療法を完成させるほどの実力があるかと言われるとそれほどあるとは思えない。

つまり、そのグリューという化け物が完成させたとしか考えられなかった。

高橋は、恵里に

「上村部長、驚いたろ?エイズと膵臓癌を治した俺に、だがこれはローエングラム先生とジャムカ先生の研究データとガイナス教授のデータをあわせた上で、グリューという化け物が完成させたんだ。」

恵里は、苦笑いして、

「そのグリューという人、アレクサンダー教授を越えてるかもね。」

高橋も、苦笑いして

「上村恵里ほどの女に、そう言われればあいつがどれだけ喜ぶか、生きていたらって思うよ。」

恵里は、又しても驚愕した。

それほどの優秀な医者が、この世の中から消えた。

恵里は、ガクッと肩を落とした。

高橋は、そんな恵里の姿を見て

「グリューは、死んでしまったが、あいつの研究データはここにある。」

恵里は、黙ってそれを見ていた。

高橋は、続けた。

「あんたにこのデータをやってもいいが、一つだけ条件がある。」

恵里は、真っ直ぐ高橋を見て

「条件?」

高橋は、ニヤリと笑って

「その条件は・・・。」