隣家のジャスミンが、花を咲かせている。

 

 窓を開けると、独特の甘い香りが漂ってくる。

 

 耳を澄ますと、遠くで鳥の鳴き声がするが、あれは何という鳥だろう。

 

 静かな、5月の朝である。

 

 そんな朝の夢に、不思議な光景が出て来た。

 

 灌木の横にロバがいて、戦時中の国民服を着た少年がロバの手綱を握って立っている。

 

 その少年はお面をつけて、こちらをじっと見つめていた。

 

 少年の付けていたお面は、縄文時代の土製の仮面のようだった。

 

 ジャスミンの香りにつられて見てしまった、たまさかの異界だったのかもしれない。