わが心なぐさめかねつさらしなやをばすて山に照る月を見て

                                       古今和歌集

 

菅原孝標の女(1008-1059)が書いた「更級日記」の題名は、

作者の夫橘俊通が信濃守として赴任した所以と言われています。

 

更級日記 「をかしな猫」 の段

「あなかま 人に聞かすな。いともをかしげなる猫なり。飼はむ。」

と、登場する猫は、

なんと、前回記事にした藤原行成の娘の生まれ変わりであると。

 

作者の姉が夢を見ます。

「おのれは侍従大納言の御むすめのかくなりたるなり。さるべき縁のいささかありて、

この中の君のすずろにあはれと思ひ出でたまへば、ただしばしここにあるを、

このごろ下衆の中にありて、いみじきわびしきこと・・・。」

 

侍従大納言とは藤原行成のこと。

その娘は12歳で結婚したものの、15歳に亡くなるという悲運にありました。

作者姉妹たちが、その姫のことを偲んでいたので、姿を変えて二人の前に現れたのです。

 

 

 

 

 

その猫の描写

「すべて下衆の辺りに寄らず つと前にのみありて 物もきたなげなきなるは

はかざまに 顔をそむけて食はず」

 

下衆とは 召使のこと。

姫の生まれ変わりの猫は、召使に近寄らず、孝標の女姉妹のところにばかり来て、

粗末なものは顔をそむけて食べなかったと。

かわいくない猫と思いますが、姫であったことを主張したかったのでしょう。

 

 

・・・話は展開して

犬もネコもそれぞれに性格があるようですね。

かってわが家にいたネコ、

かわいい顔をした白の子ネコでしたが、やたら負けん気が強くすぐ向かってくる、

大人には敬遠されがちでした。

お盆、親戚の子たちが滞在するのが習わしでした。

私を含め、中1が3人、いたずらネコと遊ぶのに、

程よい知恵と身体能力を持ち合わせている年ごろです。

1年ぶりの再会のぎこちさを、ネコがかき消してくれました。

 

折しも 私たちの年齢13歳

菅原孝標の女「更級日記」始まりも13歳

あの白いたずらネコ、私たちの誰も

「誰かの生まれ変わり」とは思いませんでした。