週末は平日よりゆっくり起きている。なので、ウォーキングに行く時間も遅い。
歩く時間帯が違うと、そこで出逢う人も違ってくる。
週末だけ出逢う女性と、その日もすれ違う。
いつものように「こんにちは」
そう挨拶を交わした後
珍しく、その人が話し始めた。
女性「いつもお休みの日だけ歩いてらっしゃるの?」
私「いいえ。平日も歩いています。
平日は、今日よりも早い時間なんですよ。」
と、他愛もない会話。
私としては歩くペースが乱されて余りいい気はしていない。
女性「いつも思ってたのよ〜。お綺麗な方だなって。」
(私の心の声)
あら!
そう?
うふっ
ありがとう💖
私「そうですか?ありがとうございます。」
女性
「お若いんでしょ?
うふふふふふ〜
55歳くらいかな?
うらやましいわ〜」
(私·心の声)
うわ
なんで年齢を気にすのか?
他人なんて幾つでもいいではないか!
私「とっくに還暦すぎてますよ。
63歳です。」
女性「そうなのー!信じられないわ!とてもいい若く見えるんだもの〜!」
(私、心の声)
めんどくさー。
まだまだ話しを続けたそうなその女性を笑顔でかわし、歩き始める。
「お綺麗ね」
それだけは受け取りましょう。
ありがとう!
いい気分で歩いていた。
突然、思い出した事がある。

自力で歩くどころか立つことさえできなくなった。
誰かに助けてもらってようやく立てる。
歩くのは杖を使いながら数歩、歩けけば素晴らしいという状態だ。
トイレにさえ自分1人では行けなかった。便座に自分で座れなかったし、立つ事もできなかった。
その年は寒い冬だった。
主治医から1泊だけ外泊許可が下りた。
自力で動けるような状態じゃないのに。
我が家にはスロープも手摺りも無い。
私は、家に帰るのを躊躇したが
夫が帰ろう!と何度も私を説得した。
しぶしぶ帰る事にした。
入院している階は8階。
自宅に外泊する日、夫が仕事を終えてから私を迎えに来た。
その頃、私は移動する時は車椅子だった。
夫に介助されながら車椅子に乗る。
暗く長い廊下を、夫は私が乗った車椅子をエレベーターまで押し歩く。
エレベーターに乗る場所に着き1階のボタンを押す。
その時、私達が来た反対側から夫婦連れがこちらに向かって来た。
「おう!◯◯(私達の名字)じゃないか!どうしたんだ?」
(この人は、夫の定年前の職場の上司だと後から夫が教えてくれた)
それから私を一瞥し
「あ!お母さんか?」
そう言ったのだ。
え?
え?
え?
私?
私の事?
すると、夫が淡々と「妻です。」
そう答えた。
そこから8階から1階まで夫婦二人組の、静かな長ーい長ーい旅が始まった。

その時の私は
長引く治療で身長156cm体重40kg。
頭はこれまた薬で、無惨にも落武者。
車椅子に座る膝には夫が持って来た渋茶色の膝かけ。
ヨレヨレのパジャマの上には移動に寒かろうとこれも夫が持参したジャンバーを着ていた。
このジャンバーは夫の物でブカブカでドブネズミ色だった。

そうだよね。
こんな出で立ちなら
そう思われてもしかたないよ
そう思っていいんだよ。
いいんだよ
いいんだよ
いいんだよ
いいんだよ
いいんだよ