今朝。

毎朝の定例カンファレンスの直前に、ヘルパーさんから電話が入った。

「呼吸してません」

76歳の患者さんTさん。

9月に病院から紹介「腹水を抜いて看取ってください。」

その病院へは救急車にて「はらが張る」と。

 

アルコール性肝硬変で腹水が溜まったため。

ついでの検査で初期の肝癌が発見された。

 

入院中利尿剤の注射や内服では追いつかず、

適宜 腹水を穿刺廃液。

 

病院ではそれ以上に治療法がないので、

「末期肝硬変」として

簡易宿泊所に戻された。

と同時に、紹介状付きで当院へ。

 

いきなりの在宅みとり往診ではじまった。

 

毎週、腹水を抜きに行った。

大量に抜くと急変するので少しずつ。

 

痛がりの患者さんで、穿刺前に腹壁を消毒するだけで「ヒイヒイ」と声を上げた。

先が思いやられるな・・・・。

 

早めの麻薬を考えた。

一度貼り薬の麻薬をはじめたら、

「痒い」

にて自分から剥がした。

 

本格的な麻薬は1ヶ月前から。

開始と同時に少しだけあった食欲は低下。

食欲低下と同時に腹水はみるみる間に減少。

臨月状態だったのが、2週間でぺったんこ。

穿刺の必要性は無くなり、

「ヒイヒイ」も言わなくなった。

 

そして、全くたべられなくなり、数日で息を引き取った。

 

死に顔は笑顔。苦痛無し。

枕もと頭上のカレンダーと同じ顔。

 

病苦からの出会いだったので、親密な話はできなかった。

「イヌが好き」

は話しが弾んだ。

ドヤ内では飼えないので、絵を描いてもらって壁に貼っていた。

 

これが、在宅での「尊厳死」

である。

 

なるべく苦痛を回避して、状態末期を短めにしてあげる。

それが、安楽死が認められていないこの国で、私達ができる

最大限の末期緩和医療である。

 

この患者さんで、今年は当院からの死亡患者さんは、

39名。うち26名が在宅看取り。

ことし初めて病院送りの患者数を越えた。

 

昨日が創立記念日のポーラのクリニック。

寿町で開業してから20年目を迎えている。

当院の創立からの理念

「信頼・責任・あたたかみ」

まだしばらく頑張ろう。