今朝 亡くなったSさんは来週に85歳になる直前だった。

 

午前中の外来の合間に

死亡確認へ出向いた。

 

穏やかな安らぎ顔。

 

この人とのつきあいは約5年。

近くの病院からの訪問診療目的の紹介で、

外来を経由することなく、いきなり訪問診療。

排尿・排便は自分でベッド橫のポータブル・トイレに移乗。

 

カンコーヒ-が好きで自分で簡易宿泊所の階下の自販機までも買いに行けた。

ポーラのクリニックの訪問診療対象としては、本来なら、自力で移動できないのが条件であるので

適応外の活動性を持った人。

 

病名は

慢性閉塞性肺疾患

慢性腎不全

5年間、よくもちこたえたな・・・

が実感。

 

死因は慢性腎不全。

この疾患でなくなる場合、往々にして苦しい。

出血傾向や肺水腫などが直接の死因になるから。

 

Sさんは、高カリウム血症による心停止が先に来た。

これは苦痛なく心臓がふっと止まる。

安楽死に使われる方法。

 

2/25まで自力でトイレに移乗できていた。

酸素飽和度は77%と、われわれなら苦しくって酸素吸入の適応しかないが、

もともとCOPDで慢性呼吸不全。

低酸素に慣れているため、本人は苦しくない。

 

この1ヶ月、食事量が激減して、カリウム排泄が低下し、

三日間で亡くなった。

 

尿カテも酸素も何もなく、

自然体で死を迎えられた。

 

腎不全の経過にしては、苦痛無く理想的逝き方。

 

訪問すると、

認知症のため毎回「往診ですよ」と説明。

そうすると、

「今日はどこもいくとこないよな」

「酒もたばこもやめたから、悪いとこなんかない」

が毎回の発言。

 

昔はパン職人だった。

いろいろあって寿で単身独居。

生活保護で余生。

ケアマネ ヘルパー 帳場 薬剤師 ドクター ナース

のチームにて支援。

 

旅立ちは独りだが、支援は多数。

 

「孤独死ではない」

 

今月もSさんで6人目。

多死社会。

間違いない。