一昨日 外来中に東京の高尾山の高尾警察から電話がきた。

 

警察から電話があるときは、

患者のだれかが異状死しているための問い合わせ。

または、患者のだれかが何かしでかして、留置されて、

「かかりつけの薬の内容をおしえて欲しい」

のどちらか。

 

今回は異状死。

高尾山中でクビを吊ったとのこと。

 

患者さんはSK氏 70歳男性。

寿町の私が訪問診療でよく行く簡易宿泊所在住。

役所のCWからも「いくえが分からない」

と連絡が来ていた矢先の電話。

 

病名

左眼全失明+右眼黄斑変性症

C型肝炎治療後の肝硬変

高血圧

にて定期的にキチンと通院中。

 

であった旨を刑事に説明。

 

「何か変化はありましたか?」

の質問に、

 

返答。

昨年暮れに胸X線をとり、

一部気になる所見があったので、

(左の肺門部のリンパ節の腫大?比較すると目立つ)

近くの病院へ紹介状を書き、

CTを撮ってもらいました。

その結果を聞きに来なければならなかったのですが、

そのまま今に至っています。

 

答えながら、

「コレが自死の原因かも・・・・」

という懸念がふくれあがった。

 

70歳。

目はいずれ全盲になる。

生きていても・・・

 

という基盤にくわえて、

私のCT検査の奨め=「癌」

と早とちりしてしまったかも・・・

 

そう思えてならない。

 

寿町の簡易宿泊所に高齢でひとりぼっちで生活していくことは、

われわれの想像以上に苦痛を伴うものであろう。

直にみていて、「生保でノウノウと楽して生きてる」

という印象はない。

壮絶につらい環境である人達がほとんどである。

 

SKさんはまじめな性格。

通院間隔も態度もキチンとしていた。

 

私の推測が当たっているならば、

反省しなくてはならない。

 

忙しい外来中に、

「胸部異常陰影の精査にCTが必要だから紹介状書くから病院へ行ってね。」

を伝えて理解納得合意してもらうには、

その説明の温度が難しい。

今回の場合は濃厚な癌の疑いではない。

「気になる程度」

であることを伝えた記憶が有る。

 

それでも、結果を聞きに来ることなく、

自死の道を選んだ。

しかも長年世話になった簡易宿泊所でやるわけでもない、

電車に飛び込むわけでもない。

最も誰にも迷惑をかけることのない、山での自死。

SKさんらしい選択。

 

CTの検査の結果報告、

「悪性の疑いはありません」

 

が余計に心に突き刺さる。

 

説明の仕方。

SKさんにはもっともっとマイルドにすべきだったか?

反省している。

が、 自死の本当の理由はわからない。

 

→追記

気になるので、午後の訪問診療時に簡易宿泊所の帳場さん(女性)に事情を聞いてみた。

「なんかね。1月末に窓口に顔のぞかせて、『もうだめだオレは*これ*だ』って告白してったんですヨ。」

*これ*というのはジェスチャーで首を切る仕草だった。

告白の内容は覚醒剤。

逮捕歴も幻覚歴もあったと初めて帳場さんに、最近になってまた始まったらしく、それをわざわざ告げに来たらしい。

 

「”癌かもしれない” →覚醒剤再開」

につながって さらに落ち込んで自暴自棄になったのかなあ。

などど さらに懸念が深まってしまった。

 

寿ならではの気配りが必要だなあ・・・。