マンガ「はだしのゲン」の閉架撤回を求める署名運動に2万人が参加し、閉架撤回されることになったそうです。また話題になったことでマンガの売上が伸びて増刷されたりしてるようです。
 閉架撤回を求めた人の多くは「はだしのゲン」は「戦争反対」を主張しているマンガだと解釈してしているのだと思います。その解釈は正しいのでしょうか。本当に「戦争反対」なら、何故「子供たちに見せるな」と言う意見が出るのでしょう。

 マンガ「はだしのゲン」は、作者の実際の戦争経験に基づく物語です。

 以下のような、被爆者の身体がドロドロに焼けただれ、剥がれた皮が垂れ下がる描写も、おそらく作者自身が見た地獄のような光景だと思います。確かに過激な描写ですが、これを見て子供が「戦争は絶対に嫌だ」という気持ちになるのなら、悪いことではありません。

 多少の脚色はあるにしても、これは「事実」だと思います。

被爆


 ところが、「はだしのゲン」には以下のような描写があります。これは「事実」なのでしょうか?

三光作戦

 日本兵が中国で残虐行為を行ったという描写です。

 作者は終戦時に小学生でしたから、徴兵されて中国に出征したわけではありません。なので、この残虐行為は、作者自身の経験や現地で見た一次情報ではありません。

 作者は中国から帰還した日本兵から残虐行為の話を直接聞いたのか、間接的に誰から又聞きしたのか、あるいは何かの本で読んだのか、ということになります。つまり作者はこの残虐行為の情報源からそれほど近くないということです。
 しかも、情報源の日本兵が仮に作者に直接話して聞かせたとしても、その日本兵は事実だけを話したとは限りません。実際より大袈裟に話したかもしれないし、全くの嘘を話したかもしれません。
 何かの本で読んだとしても同じことで、その本を書いた人が本当のことを書いたとは限りません。何らかの事情があって、あるいは何らかの意図があって、嘘を書いたかもしれません。

 例えば、有名な話ですが、日本刀で敵を千人斬り殺したと語った日本兵がいました。しかし、殺される方も逃げるでしょうから、重い日本刀を持って千人もの人間を追いかけ回すのは大変な労力で、それを何のためにやったのか理解できません。
 重い日本刀を千回振り降ろすだけで大変な重労働ですし、一人一回で殺せるとは限りません。そもそも日本刀で人を斬ったら血が着いて切れ味が悪くなるし、刃こぼれもするし、つまりこの話しは現実には有り得ない話しです。つまり、この武勇伝は妄想です。

 つまり、この「千人斬り」の話から分かることは「日本兵が千人殺した」ということではなく「当時の日本兵は、有り得ない妄想に支配されるほど異常な精神状態だった。」ということです。最前線の兵士は大変な恐怖と緊張の中にあっただろうし、戦争に負けたことは兵士だけでなく日本の国民全員に大きなショックを受けたと思います。
 そういう精神状態で、有り得ない武勇伝を吹聴する日本兵が、実際に居たのです。そして困ったことに、その妄想が、まるで歴史上の事実であるかのように語り継がれています。

 日本兵の残虐行為は、本当に歴史上の事実なのか、日本兵の妄想なのか、それとも中国が「日本が悪い国だ」ということをアピールするために捏造した話しなのか、専門家の意見も様々です。以下のリンクあたりを参照して下さい。

Wikipedia「三光作戦」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%87%BC%E6%BB%85%E4%BD%9C%E6%88%A6

 そんな不確かな情報が完全に歴史上の事実として描かれているマンガを子供に見せるのは、大人の責任として間違えていると思います。見せるにしても「嘘かもしれないよ。」と知らせなければならないと思います。

 さらに作者は、その不確かな情報を元に「全ての元凶は天皇陛下」という、天皇批判を展開しています。この部分に限らず、作者はこの作品で一貫して天皇批判しています。この作品の主題は「戦争反対」であると同時に「天皇批判」なのです。つまり「政治的主張」です。
 文末に「はだしのゲン」を掲載した雑誌がありますので、ご覧下さい。結局この作品は政治的主張がメインなのだろうと思われます。

 また以下の箇所、原爆に関する記述にも問題があります。

はだしのゲン 原爆の正当化

 この箇所の発言をどう解釈するかは人によって分かれるところだとは思いますが、原爆を容認する発言であることは間違いありません。
 広島と長崎への原爆投下は、結果的に戦争が終わるきっかけになったかもしれませんが、一般市民を対象にした非常に大規模で残虐な無差別爆撃ですから、どんな事情があっても正当化できません。
 戦争を終わらせるにも他のやり方が、いくらでもあったはずです。むしろ当時のアメリカには、日本が降伏してしまう前に急いで原爆を投下したような意図を感じます。

 そして、作者はここでも「原爆投下は天皇陛下に責任がある。」と主張し、天皇批判を展開しています。「アメリカは許すが天皇陛下は許さない。」という、何とも歪んだ考えです。まるで日本人ではない、どこかよその国の人の考えのようです。
 この歪んだ考え方を「反日思想」と言い、戦後に日教組が日本の学校教育の現場に持ち込んで広めた考え方です。作者は日教組教育に洗脳された犠牲者の一人だと思います。

 自ら悲惨な被爆体験を持つ作者が、原爆を容認する異常な精神状態になった背景には、歪んだ日教組教育の影響と、そもそも戦争体験で深く傷つけられた人の心があるのでしょう。
 戦争はここまで深く人の心を傷つける本当に悪いものだということは、痛いほど伝わってきます。でも、原爆を容認するような自虐的な考え方は、子供に見せるべきではないと思います。

以前の記事、「はだしのゲン」は必要なのか、もご覧下さい。
http://ameblo.jp/2kman/entry-11598094389.html

Wikipedia「はだしのゲン」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AF%E3%81%A0%E3%81%97%E3%81%AE%E3%82%B2%E3%83%B3
連載誌
1973年第25号 - 1974年第39号 - 『週刊少年ジャンプ』
1975年9月号 - 1976年8月号 - 『市民』(左派系オピニオン雑誌)
1977年7月 - 1980年 - 『文化評論』(日本共産党機関誌)
1982年4月 - 1985年 - 『教育評論』(日教組機関紙)