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「養老乃瀧」で“締めの牛丼”が売れている

赤松葉
2017/12/26 21:00

「養老乃瀧」で“締めの牛丼”が売れている

2017.12.26 19:00

 老舗居酒屋チェーン「養老乃瀧」が、かつて販売していた「養老牛丼」を10月5日にレギュラーメニューとして復活させた。締めのメニューとして、ダントツの人気商品となっている。

 養老乃瀧ではこの好調さを受けて、養老牛丼を組み込んだ宴会メニューを開発したり、ホットランドが運営するたこ焼きチェーン「築地銀だこ ハイボール酒場」とコラボし、一部の店で養老牛丼をランチのメニューとして提供するなど、拡販戦略を打ち出している。

 今回復活した養老牛丼は、飲んだ後の締めにぴったりの小腹を満たすサイズとして登場。価格は330円(税別)だ。

 発売当時、約250席ある東京の池袋南口店では1日に50~60食を販売。100種類以上のメニュー数がある中で、異例の出数であり、牛丼を食べてお茶を飲んで帰る人も見受けられたという。

 今でも注文の多い日は40~50食ほど出るそうで、養老乃瀧で飲めば牛丼で締めるのが、もはや定石となっている。

■2000年代半ば頃に姿を消した養老牛丼

 養老牛丼は1977年に発売した商品。2000年代半ば頃に姿を消したが、当時親しまれていたレシピのまま、再登場を果たした。全国の養老乃瀧チェーン340店舗ほどで販売している。

 特徴は、和風ダシを利かせたあっさりとした上品な牛丼で、毎日でも食べられるように飽きの来ない点。牛肉は米国産を使っている。

 当初の牛丼販売の目的は、居酒屋は夜の商売であり、昼の家賃がもったいないからという発想。サッと顧客に提供できる専門性の強い商材として、牛丼に白羽の矢が立った。つまり、かつての養老乃瀧は一時期、夜は居酒屋、昼は牛丼店と二毛作の店だったのだ。

 そればかりでなく、東京・新宿に24時間営業の牛丼専門店を持つなど、全国展開を進めていた「吉野家」に対抗していた。

 当時の吉野家の牛丼並盛の価格は300円、それに対して養老牛丼は200円だった。日の出の勢いで店舗を拡大していた吉野家を慌てさせた。

 養老乃瀧が牛丼の提供をやめた理由は定かではないが、「居酒屋に集中した方が良いのではないかと、自然消滅のような感じで提供店が減少し、なくなっていった」と企画部長島一誉部長は振り返る。

 昼と夜の両方を営業するのが店員にとって負担になっていたことも理由の1つだ。また、デフレが進行していく中で、牛丼の価格値下げ競争に巻き込まれるのは、得策ではないとの判断もあっただろう。

■想像以上に多かった養老牛丼復活

 養老牛丼復活のきっかけとなったのは、創業60周年を記念したイベント。2016年11月15~17日の3日間、池袋南口店の1階エントランスにてテイクアウト販売したところ、平日にもかかわらず販売前から大行列となった。初日は5分で100食が完売。勢いは止まらず、2日目は朝から並んでいる人でも購入できない事態になった。

 伝説となっている養老牛丼を、もう一度食べたいと願う古くからのファンや、うわさには聞いていたが一度は食べてみたいと思っている人が、想像以上に多かったのだ。反響の大きさに驚いた同社では、どのようにすれば養老牛丼が最も良い形でメニュー化できるか、討議を重ねた。その結果、1年をかけて締め用の牛丼として帰ってきたわけだ。

 さらなる展開として、牛丼で締める宴会コース(4600円、2時間飲み放題付き)を提案。今のところ数店での提供に止まるが、ヒットコンテンツとなった養老牛丼を使ってさらなるヒットを生み出すべく知恵を絞っている。

 最近はコラボ企画(期間限定)として、11月27日より「築地銀だこ ハイボール酒場」の銀座1丁目店(中央区)、水道橋店(千代田区)など都内7店で、ランチタイムに養老牛丼のフルサイズ(680円)を提供している。ミニソース焼そばとのセット(890円)、ミニ牛丼とフルサイズのソース焼そばとのセット(790円)もある。

 築地銀だこを展開するホットランドの広報は「お昼はご飯ものをしっかり食べたい人が多いので、好評です」と話す。実際に店舗を訪問すると、3人に1人くらいは養老牛丼を注文しているように見受けられた。

 養老乃瀧は「今後、養老牛丼と他社商品のコラボを進めたい」(前出、長島氏)としており、築地銀だこに限らず、さまざまな店で養老牛丼を味わえる機会を増やす計画だ。

■「牛丼太郎」「牛友」のファンはいまでも……

 今は完全に寡占化され「吉野家」「すき家」「松屋」の3大チェーンと、「なか卯」に集約された牛丼業界であるが、かつては養老牛丼の他にも、「牛丼太郎」「牛友」「神戸らんぷ亭」などといったチェーンが存在しており、今もその味を懐かしむ人は多い。

 牛丼太郎は2012年8月に営業を停止。運営会社の深澤は倒産したが、店の味を愛する元社員たちが立ち上げた新会社にて、現在も茗荷谷駅前(文京区)で「丼太郎」として盛業中だ。コの字カウンターだけの小さな店だが、すぐ近くの松屋となか卯を差し置いて、牛丼では地域一番の繁盛店となっているように見受けられる。

 また、牛友チェーンは00年頃、都内中心に最大20店ほどを展開していた模様だが、今では大井町駅前(品川区)にその味を引き継ぐ「牛八」という、立ち食いの店が残るのみである。この店は、豚生姜焼き丼とカレーの合盛の「スタミナカレー」が一番人気だが、「牛友」を懐かしむ人は牛丼とカレーの合盛「牛丼カレー」を注文するという。

 神戸らんぷ亭はダイエーグループの一員として関東で最大約50店を展開し、牛丼業界5位の勢力であったが、15年にマックグループ(現在のガーデングループ)に買収され、横浜家系ラーメン「壱角家」へと順次転換され、消滅してしまった。また、三光マーケティングフーズの「東京チカラめし」は、11年より展開されてブームとなったが、長続きせず、今は首都圏と大阪に11店が残っている。

 これらのチェーンが復興して再び発展する姿は想像だにできないが、養老牛丼の復活からも、潜在的なファンが眠っている可能性は十分だ。16年11月に「無添くら寿司」が「牛丼を超えた『牛丼』」を発売して話題になり、ビッグ3以外にも一食の価値ある牛丼があるのではないかという期待感が、世間に高まっている。

 養老牛丼のヒットは、かつての味を懐かしむ声ばかりでなく、食べ慣れたチェーンの牛丼とは違う味も試してみたいという、新たな需要を掘り起こしたと言えそうだ。

http://www.sankei.com/economy/news/171226/ecn1712260028-n1.html