入所したばかりの懲役は、まず『雑居』と呼ばれる集団部屋に入れられ、先輩懲役から刑務所のイロハを学びます。
外ならOKでも、この中では懲罰対象に該当するケースは多く…例えば「俺、牛乳嫌いだから飲む?」と言われて、代わりに飲んだら即懲罰へGOです。
SDGs的にはいいけど、『シャリ上げ』(他人の食べ物を奪うイジメ)に繋がる可能性があるのでダメです。
就寝時間中も、部屋の電球はうっすら明かりがついていますが、眩しいからって布団に潜って顔を隠していると起こされ注意されます。
自殺防止の観点から、職員は常に呼吸しているかをチェックする義務があるからです。
こういった細かい規則を厳守するのは勿論、それとは別に、ある意味…規則以上に重要になっているのが、歴代の懲役たちが長い年月をかけて作り上げてきた懲役独自の『雑居ルール』です。
まずは掃除からで、箒での掃きや雑巾での拭きの鬼の細かさは当然として、便所(和式)はしっかり奥まで手を突っ込み、クレンザーをつけた雑巾でゴシゴシ磨いた後に、使用済みの歯ブラシで手の届かない奥まで磨き上げます。
ちなみに大便をする前は…しばらくトイレを使いますけど、小便する人いませんか?の確認の為に「用便入ります」と一言言い…大便後は臭いが残らないように最後にシャンプーを垂らし、ブラシで泡立ててから出るのが約束事です。
さらに流し台(ステンレス素材)もピカピカに磨き、毎回手を洗った後は水滴1つ、残さないようにきれいに拭くのは勿論、「指で蛇口回すと汚ねーから、肘で回せ!」と言われた時は衝撃でした。
外で肘を当てて蛇口を回転させてる人なんていないし、むしろ今の時代、ほとんど自動か上下レバータイプですよね。
他にも食事前には石鹸で手を洗い、配食されるまで手術中の医者のように両手のひらを上にかざして、何も触らず10分以上待機させられ…配る際にも、食器の下部分を両手の指で持って丁寧に机に置かないと「口つける上部分、触ったら汚ねーだろ!」とマジギレされます。
また、夕方からテレビ視聴が開始されますが、他の人と喋っていると「テレビ見てんだろ!うるせーから喋んじゃねーよ!」と怒られるので、新人は静かに気配を消すのみです。
そして就寝時間中にトイレに行く場合は、忍者のように忍び足で超静かに部屋の隅にあるスケスケ電話ボックスのようなトイレの中に入り用を足しますが…人によってはその音で起きてしまうので、厳しい先輩と同じ部屋になると「お前当たり前に毎日、夜中に便所行ってんじゃねーぞ」と言われます。
なので、夜中にトイレに行かないように夕食以降、水を飲むのを我慢している人もたくさんいるのです。
他にも伝えたい雑居ルールは山のように存在しますが、とにかく刑務所のルームシェアとはこういうことです。
畳数枚の狭い空間に、4人や5人の凶悪犯たちがプライバシー0の環境で徹底的な上下関係のもとに生活しています。
殴り合いの喧嘩もあれば、強烈なイジメも日常茶飯事です。
ただ、こんな生活になったのも犯罪を犯した自業自得ですし、刑務所が外の世界のルームシェアみたいに楽な生活だったら…被害者は報われないとも思っています。
この環境をしっかり受け入れ、その上で色々なことを学び、成長できるように生きていきたいです。
今回も読んでいただき本当にありがとうございました。
感謝しています。
@懲役25年受刑者