天野祐吉さん | けいすけ's page~いと奥ゆかしき世界~

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日々感じたことや思ったことをつれづれなるままに綴っていきたいと思います。

朝日新聞で「CM天気図」という軽妙洒脱なコラムを連載していた天野祐吉さんが亡くなられました。

何気に毎週読むのを楽しみにしていました。コラム自体は新聞の見開きの左隅の小さな一角ですが、私は「CM天気図」が載っている日はいつも社説よりもそのコラムから読んでいました。

CMや広告を題材にし、やさしい語り口で短い文章ながらも、時には現代の社会の根底にまで言及する非常に射程の広い文章が面白かった。浅い議論を長々と綴られている記事を読むよりも為になった。私は大学受験生用の教材を作る仕事をしていますが、講師の先生方の中には小論文の授業テキストの素材として取り上げる人もいました。

毎週読むたびに、ああそんなところに目をつけるんだと興味深く読ませていただきました。それは天野さんの視線の鋭さよりも、彼の敏感な受信力・感受性への驚きが大きかったように思います。

きっといつもものを考えている人だったんだろうと思います。じっと蓄えられてきた思考の貯蔵部があって、外界からの何らかの働きかけによってその貯蔵部に穴があき、その穴から文章が流れ出す。「流れる」とは失礼ですね。文筆家にとっていつでも言葉は紡ぎ出すもの‐expression。毎週苦しい思いをどこかでしていたはず。それでもやはり流れるような軽妙な語り口。まさか80歳だったとは。

ご冥福をお祈り申し上げます。